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平成22年度 ソフトウェアに関する調査報告書Ⅱ(IS−11−情シ−2)概要
組込み系ソフトウェア開発の課題分析と提言
〜開発スピードアップを阻害する要求定義と設計での要因の分析〜

1. 活動の概要
ソフトウェア事業基盤専門委員会では、2008 年度から「開発スピードアップ」という新たな視点から組込み系ソフトウェア開発の課題解決に取り組み、2008 年度から毎年ワークショップ開催とアンケート調査を行っている。2010 年度は 10 月初めに CEATEC JAPAN 2010 において開発スピードアップに関する当専門委員会の取り組みについて講演を行い、10 月下旬には「組込み系開発スピードアップ・ワークショップ 2010」を開催し、開発スピードアップに関する事例報告と意見交換の場を設けるとともに、開発スピードアップの阻害要因、促進要因に関して参加申込み者への事前アンケートも実施した。
そして、12 月に組込み系ソフトウェア開発スピードアップの阻害要因の深堀・具体化を行うために、当協会および財団法人にいがた産業創造機構(NICO)の参加企業等を対象にアンケート調査を実施し、61 名から回答を得た。この回答をもとに、開発スピードアップの阻害要因の実態分析を行い、報告書としてまとめた。


2. プロジェクトマネジメントにおける開発のスピードアップ阻害要因と分析
2008 年度報告書で組込み系の開発スピードアップを阻害しているサポートプロセスの中の主要因として分析したプロジェクトマネジメントについて深堀した。2008 年度調査でプロジェクトマネジメントの阻害要因に対する具体的な 8 つの事例を取り上げ、その現状と対策を調査した。その結果、2008 年度と同様に現状で起こっている事例であることが分かり、各事例の阻害要因を解決する施策を調査し、その施策の現状や有効性を確認した。この結果を受け、施策を有効にするための提言を行った。


3. 開発のスピードアップ阻害要因の分析と解決方法
 3.1 要求定義における開発のスピードアップ阻害要因分析と解決方法
2008 年度の調査でエンジニアリングプロセスにおける開発スピードアップの阻害要因の事例をベースに戦略、企画、要求定義で回答が多かった阻害要因の事例を調査した。これから分かる要求定義時の開発スピードアップの阻害要因は、要求が固まらないまま開発が進むことによるスケジュールの遅延や手戻りであった。手戻りが発生する理由として、最も重要と考えられるのは、戦略、企画、要求分析といった上流工程で適切な決定が行われていない状況にあると言える。続く 2009 年度の調査では、どのようなプロセスの実態になっているのかを要求定義プロセスを詳細に分解し、その実施状況を調査した。結果として概ねのプロセスは実行されているが、効果的に各々のアクティビティが実施されていないということが明らかになった。
これを踏まえて 2010 年度では、2009 年度の調査結果から分かった要求定義プロセスのアクティビティの課題に対する施策 10 個を紹介する。紹介した施策は要求定義プロセス全般に対して断片的であるが抑えるべき重要なアクティビティと確信する。手戻りを起こさせないで開発のスピードアップを図るには、地道に定式的なやりかたで要求定義プロセスを廻すことが一番の近道であり、また新たなプロセス構築のためには当然のことであるが投資が必要である。
 3.2 アーキテクチャ設計における開発スピードアップ阻害要因の分析と解決方法
2009 年度のアンケート結果では、2/3 以上の回答者が抽象度の高い構造を定義して、また再利用を考慮したアーキテクチャ設計が構築できていると回答していて、アーキテクチャ設計に対する意識の高まりが示された。開発工程の中でのアーキテクチャ設計の位置付けは明確になりつつある状況が分かってきた。しかし 2009 年度のアンケート回答では取り組みのレベルがばらついている点や末端まで浸透していない点、アーキテクチャの維持ができていない点などからアーキテ【2008 年度報告書《委員会最終版:2009/04/13 12:53 版》】クチャ設計の質が伴っていない結果でもあった。
これを受けて、アーキテクチャ設計に関して、2009 年度に続いて、これらを解決するための施策を提言した。さらにアーキテクチャ設計だけではないが、組み合わせ開発と擦り合わせ開発の融合を進める指針として、アドホックな擦り合わせ開発からプロアクティブな擦り合わせ開発へ向かうべきであるということを示した。またこれらを進めるために、アーキテクトがこれから必要とされることを示した。これらの施策や指針が読者に効果を与えることを望むものである。

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