トップページ >

平成23年度ソフトウェアに関する調査報告書Ⅲ(IS−12−情シ−7)要旨
スマートコミュニティに関する調査研究報告

 近年、IT(情報技術)を高度に活用した新たな社会システム、いわゆる“スマートコミュニティ”の取り組みが本格化している。スマートコミュニティに関連する市場は、国内のみならずグローバルな市場においても成長が期待できる分野として、我が国IT 産業にとっても新たなビジネスチャンスとして期待されている。スマートコミュニティ分野の市場を創造し、成長させるためには、システムやサービスの提供者の視点からの取り組みに加え、スマートコミュニティのユーザー/受益者側の利活用ニーズや持続性・継続性を加味したビジネスモデルの構築等、スマートコミュニティを継続的に運営するためのエコシステムの実現が必要不可欠となっている。
 一般社団法人電子情報技術産業協会 スマートコミュニティ対応専門委員会では、プロジェクトの持続性の観点から、スマートコミュニティのビジネスモデルを描くことを目的として、国内スマートコミュニティ・プロジェクト、スマートコミュニティ関連政策動向を調査した。また、スマートコミュニティの利用者(候補となる利用者)に対するWEB アンケートを実施し、今般の東日本大震災により変化したと想定される、スマートコミュニティのユーザー/受益者の意識等を調査した。
(1)国内スマートコミュニティ・プロジェクト調査
 現在、国内で進められているスマートコミュニティ・プロジェクトでは、電力・ガス・交通等の社会基盤を対象とする取り組みが中心である。教育、医療、安全・安心、産業等に関して実施されている取り組みは、比較的小規模である。今後は、個々の生活やライフスタイル、地域等の産業と密着したスマートコミュニティの展開も必要と考えられる。
電力・ガス・交通等の社会基盤だけでなく、産業や生活基盤に関する取り組みに注目し、8 つのスマートコミュニティ・プロジェクト事例について詳細調査を行った。調査結果を「ステークホルダー」、「対象と手段」、「コスト」の3 つの視点から、スマートコミュニティ・プロジェクトを継続的に運営するためのビジネスモデル構築への示唆として整理した。
(2)国内スマートコミュニティ・プロジェクト調査
 従前より、社会基盤、産業、生活分野への取り組みが、小規模・限定的ながらも推進されていた。
2009 年以降は政策的に、エネルギーを中心に社会基盤を対象とするスマートコミュニティ・プロジェクト推進が強化された。また、東日本大震災以降は震災復興に向け、被災地域でのスマートコミュニティ・プロジェクトおよび自然エネルギー活用に焦点を当てた取り組みが加速しつつある。
(3)スマートコミュニティの利用者に対するWEB アンケート調査
 社会基盤、産業、生活分野に関する情報を中心に、震災時の情報利活用という切り口で、情報利活用の実態や課題、震災前後での情報利活用に関する意識の変化、今後のスマートコミュニティに求められる情報提供のあり方等を調査した。電力の最適化だけでなく、安全・安心面での機能の充実、情報の信頼性に関する課題、セキュリティ/個人情報の漏洩やスマートコミュニティの使いやすさに関する課題等が顕在化した。今後、スマートコミュニティの普及を加速するために、スマートコミュニティの認知度向上に向けた取り組み、利用者が望むスマートコミュニティの機能や情報提供の実現、スマートコミュニティ導入に関する不安や課題の払拭等が必要である。
 本年度の調査結果を踏まえ、スマートコミュニティ・プロジェクトの振興および継続化を実現するために取り組むべき方針として、「スマートコミュニティのビジネスモデルの深耕」、「産業・生活分野への拡大」、「災害等に強い安全・安心な機能の提供」、「地域コミュニティの再生」の4 つの事項をまとめた。
 上記に掲げた取り組みを推進していく上では、利用者である住民や企業がスマートコミュニティの機能を活用することが重要となる。今後、スマートコミュニティを継続的に運営するためのビジネスモデルの検討に加えて、利用者の活用を促進するためのIT の役割や利用者とコミュニティのつながりを実現するIT 技術等のさらなる深耕が必要である。

ページの先頭へ戻る