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IS-11-情端-2 プリンターに関する調査報告書

■ エグゼクティブサマリ ■
1.プリンター市場動向調査
1.1 2010年の市場規模
2010年の市場動向としては,100年に一度といわれる経済状況激変の年であった2008−2009年の落ち込みから緩やかな回復基調となった。
テクノロジー別には,ドットマトリックスプリンターは250万台と2009年の落ち込みから多少は回復するも2008年のレベルには届いていない。
インクジェットプリンター分野は,インクジェットプリンター/インクジェットプリンター複合機合計で8,400万台となった。日米欧など先進各国では市場が成熟化したことによりほぼ横ばいに留まるも,新興国地域で比較的大きな伸びを見た。これは地域毎のGDPの伸び率と同様の傾向にあると思われる。インクジェットプリンター単機能機が減少し,インクジェットプリンター複合機が主流となる動きはこれまでどおり続いている。この比率は,地域によって差はあるものの,全世界では2010年には単機能機が2割,複合機が8割となった。
ページプリンター分野は金融危機の影響を受けて市場が縮小した西欧・北米等の市場が回復基調に転ずるとともに,金融危機にも関わらず市場が縮小しなかった中国市場の成長が加速したことにより,前年より大きく拡大した。ページプリンター/ページプリンター複合機合計の世界市場での実績は,3,500万台となり金融危機以前の市場規模を上回った。製品別に見るとページプリンターは2,200万台,ページプリンター複合機は1,300万台となった。
1.2 2013年までの見通し
プリンター専門委員会(市場分科会)では,見通しについては外部機関(i)の調査結果を参考に事務局案を作成し,その後会員各社へのアンケートを経て算出した。なお,2011年3月11日発生の震災の影響は考慮していない。
ドットマトリックスプリンターは,2013年には240万台となる見通しである。(2010−2013年平均成長率−1%)
テクノロジーシフトなどの影響を受け減少傾向にあることは否めないが,依然としてドットマトリックスプリンターでなければならないアプリケーションも残っているため,減少傾向は一定の率にあると思われる。2008−2009年の世界経済の激変を原因とする落ち込みを2010年に多少取り戻すものの,長期的には減少傾向となる。中国は需要が引き続き旺盛であるが,それ以外の地域は減少が続くものと思われる。
インクジェットプリンター/インクジェットプリンター複合機全体の世界市場は,2013年に1億台になる見通しである。やはり2008−2009年の金融危機で台数を大きく減らしたが,緩やかに回復基調となり2012年にそれまでのピークであった2007年レベルとなり,2013年の1億台へとつながる見通しである。(2010−2013年平均成長率6%)
インクジェットプリンター単機能機はすべての地域において2008−2009年で数量を減らした後も回復することなく減少傾向となり,2013年には全世界で1,100万台レベルとなる見通しである。(2010−2013年平均成長率−14%)
インクジェットプリンター複合機は2008−2009年の落ち込み後も回復は早く,2010年には6,600万台と2007年のピーク(6,400万台)を越える結果となった。その後も堅調に成長を続け,2013年には8,900万台となる見通しである。(2010−2013年平均成長率10%)地域別には,複合機はその他地域の伸びが顕著になり,2013年には2,300万台になると見られる。一方日本は他の地域に比べその伸び率は小さいものとなる。
2013年のページプリンター/ページプリンター複合機全体の世界市場見通しは,4,250万台(年平均成長率7%)という結果となった。ページプリンターの世界市場は,台数ベースで2,500万台(年平均成長率4%),一方,ページプリンター複合機の世界市場は,1,750万台(年平均成長率10%)の規模になると見通した。
地域別に見ると,先進国地域のうち西欧は毎年一定の成長を続けるものの,北米は横ばい,日本は縮小すると見通した。新興国地域については,堅調な成長が継続すると見通した。特に中国については,2010年から2013年にかけては年平均成長率17%で急激に市場が拡大し,2013年までに西欧を上回る市場規模となる見通しである。
製品カテゴリー別に見ると,ページプリンターは緩やかな成長を続け,2013年には金融危機以前の市場規模に戻ると見通した。カラー機については,2011年に金融危機以前の市場規模を超え,さらに成長を続ける見通しである。ページプリンター複合機については,2010年に既に金融危機以前の市場規模を上回っており,カラー機,モノクロ機ともに堅調な成長が継続すると見通した。
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(i)株式会社ジェーディーエス(代表:山口 彰久)

2.プリンター技術動向調査
2010年の電子写真方式のプリンターは,SFPは13社52機種,MFPは8社56機種で,合わせて108機種が発売された。2009年が122機種,2008年が176機種であることから見ると機種数が減少傾向にある。
特にMFPの減少傾向が大きい。ただしMFPについては,100機種を越していた2007年・2008年に比較すれば大きく減少しているものの,それ以前の水準に比較すれば,まだまだ多くの新製品が発売されていると言える。また,今回よりプリント・オン・デマンド(以降PODと記す)分野用の製品を分けて分析することを試みている。定義等については2.2電子写真方式の項に記すが,概ねデジタル商業印刷向けまたは基幹業務向けで,高耐久,高画質,高生産性,安定稼働等の特徴を有するプリンターである。電子写真の分野では,企業内印刷などの大量原稿・大量部数のニーズに合わせた製品がこれまでも発売されていたが,これらPOD機を従来のSFP/MFPと一緒に分析するのは難しいという状況があったため,今回より一部の分析を分けて取り扱うこととした。
インクジェット方式は,3社から12機種のSFP新製品,4社から29機種のMFP新製品,5社から29機種のLFP新製品が発売された。SFPの機種数は,長期的に減少傾向が続いているが,グラフを見ればわかるように一定の数に収束してきているように見える。SFPの中でも,ビジネス用途やA4以下の写真用途に特化したものがSFPの一翼を担っている状況があるようだ。
MFPは減少傾向があるものの2010年は2009年と同数の新製品が投入されている。一方,LFPの機種数については,2年周期の新製品発売サイクルがあり,2010年は少ない年との見方もあったが,2009年並みの29機種が発売された。2010年のトピックとしては,SFPではカートリッジレスタイプ製品の登場,MFPではWeb情報をPCを介さずに印刷できるWebプリント機能の搭載,LFPでは環境対応インクや様々な素材への印刷が可能なインクなどを採用した製品が発売されている。
感熱・熱転写方式は,3社から15機種の新製品が発売され,2007年の機種数には及ばなかったが,この3年間は増加傾向を示している。2010年も2009年と同様に業務用の機種が大幅増加した。
ドットインパクト方式については,シリアルプリンターが1社から2機種発売されたが,ラインプリンターの発売はなかった。電子写真プリンターへの移行や各種伝票の電子化の影響はあると思われるが,本方式プリンターの特徴である複数枚複写機能の必要性は残るとみられるため,このような状況は継続すると思われる。

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