電子部品 Top >素材/電子材料Topics目次> 第29回
ねずみの食害対策・・・「防鼠電線」
1.ねずみによる食害
「窮鼠猫を噛む」という諺は、追い込まれたねずみの土壇場での逆襲劇であるが、ねずみは追い込まれなくても物をかじる習性がある。「ねずみ」は齧歯目(げっしもく)に属する動物で、よく発達した二対の門歯を有するのが特徴である。人間や動物の歯は、外側が硬いエナメル質に覆われているが、ねずみの門歯は前面だけがエナメル質に覆われているだけで、のみのように鋭く尖った形状でできている。この門歯は伸び続けるため、口が塞がらないためと常に歯をとがらせておく本能で、近くのものを齧る習性がある。
日本に生息するねずみは約30種類で、家に住みつくのは、ドブネズミとクマネズミとハツカネズミである。森林系出身のクマネズミは縦に登るのが得意で、高層ビルも住処にして繁殖しているそうである。
ねずみは天井裏に営巣するためにその通路にある電線が齧られることがある。公開されている情報によると、停電事故のおよそ20%が小動物の接触が原因で、ねずみがそのうちの60%を引き起こしている。
電力線や信号線などの断線トラブルは、通信インフラの遮断やショートによる火災事故を引き起こすことがあり、人間の生活に多大な影響を及ぼすことになる。
2.防鼠のメカニズム
十二支が子ではじまる逸話をはじめ、ねずみは賢くてすばしっこい動物という役柄のイメージがある。ねずみは哺乳類(齧歯目)で高等動物に属する。確かに、毒入りの餌を置いても、見慣れぬものを安易には口にせず、殺鼠対策は簡単ではないようである。
ねずみは、前述の通りものを齧る習性があり、まずは様子見で「ためし齧り」をする。
防鼠電線はこの習性を応用したものである。
咬害防止剤としては、CHI(シクロヘキシミド)を代表に味覚で忌避させるものが長年に亘り使用されてきた。CHIに置き換わるものとして、日本化薬株式会社が唐辛子の辛味成分であるカプサイシン類を用いた忌避剤が開発されている。
平河ヒューテック株式会社では、日本化薬との共同開発により、防鼠電線用被覆材料の開発を行い、製品化している。
高濃度のカプサイシン類の成分をマイクロカプセル(写真1参照)に封入することで、有効成分の長期残存性が大きく向上している。マイクロカプセルを添加させ均一分散するように混練りした材料は、噛むなどの外力でマイクロカプセルが分解し、中の辛味成分が広がって忌避効果を発揮するメカニズムである。
【R-731(日本化薬製)】
製剤形態:アミノ樹脂系マイクロカプセル製剤
有効成分:唐辛子の辛味成分であるカプサイシン類の一成分を32%含有。
写真1:R−731マイクロカプセル
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3.防鼠電線の効果
ねずみは雑食性であるが、餌としてよりも齧る習性として電線を食害することがある。
平河ヒューテックでは、イカリ消毒社の協力のもとで、食害試験を実施している。
試験概要は、餌を与えた条件で、ケージにいれたねずみと集団生活状況を再現した小部屋で、同構造の汎用タイプの材料の電線と防鼠材料の電線をセットし、食害状況を比較するものである。
汎用タイプの材料の電線は、ねずみの食害により、最外層のシースが噛み砕かれてしまい、銅線のシールド層も部分的に齧られるまでダメージをうける。
防鼠材料の電線は、後述するためし齧り傷をわずかに認めるものの、汎用電線のようなダメージは見られず、辛味成分による忌避効果が確認される。(写真2、3参照)
写真2:緑は汎用材料電線、黄は防鼠材料電線
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写真3:緑の汎用材料が齧られてしまう。
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ケージと同様に小部屋における集団条件においても、同様な結果となり、辛味成分の忌避材による防鼠効果が認められる。(写真4、5、6参照)
写真4:緑は汎用電線、黄色は防鼠電線
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写真5:緑の汎用電線は齧られるが、黄の防鼠電線は食害されない
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写真6:時間の経過により、食害は銅線の導体にまで及ぶ
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前述の通り、ねずみは様子見の「ためし齧り」をする。(写真7、8参照)
ためし齧りにより、マイクロカプセルに封入された忌避剤が拡散し、その辛味成分の効果で食害は進行しない。
辛さに懲りたねずみは、再び噛むことがないようである。ねずみが高等動物であることが、忌避効果を継続させることにもなっている。
写真7:汎用電線の食害試験結果
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写真8:防鼠電線の食害「ためし齧り」痕跡
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4.防鼠電線とチューブの製品化
汎用電線のシース材料を防鼠材料に変更することで防鼠電線にすることが出来るが、最近のPVCフリーの要望に応えるため、RoHS対応のポリオレフィン系材料も揃えている。平河ヒューテックでは、POS用線材をはじめとする信号ケーブル、放送用ケーブルや農業用機械の配線材を主体に実績がある。
さらに、既設の電線への防鼠対策や部分的な防鼠対策ニーズに応えるべく、防鼠材料をらせん状にカットしたチューブのスパイラルチューブもラインナップしている。
食害試験についても防鼠ケーブル同様の検証により、その効果が確認されている。(写真9参照)
写真9:防鼠スパイラルチューブの食害試験
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防鼠ケーブル(RP Cable) PDF
防鼠スパイラルチューブ PDF
平河ヒューテック株式会社
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