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 【 2001年9月号 】



  〜 米 国 に お け る 電 子 政 府 の 進 展 〜

JEITAニューヨーク駐在 荒 田  良 平


はじめに

 今回は、米国における電子政府の進展について取り上げる。
 電子政府については、前任の長谷川氏が2000年6月の駐在員報告で取り上げており、その後まだ1年少々しか経過していない。しかし、ブッシュ政権でIT政策が少しトーンダウンしたように見える中にあって、2002年度予算案で2,000万ドルの省庁横断的な"E-Government基金"の創設が提案されたり、民主党Lieberman上院議員他から"E-Government Act of 2001"が提案されたりと、電子政府関連の様々な動きが起きている。また、2001年7月にワシントンDCで開催された電子政府関連のイベント"e-gov 2001"も盛況で、米国がIT不況の影に覆われる中で電子政府は産業界からビジネスチャンスとして期待されている。こうしたことも踏まえ、私自身の勉強という意味も兼ねて、今回電子政府の進展を取り上げることとした次第である。

1.最近のトピックス 〜"e-gov 2001"

 本題に入る前に、7月9〜12日にワシントンDCで行なわれたイベント「e-gov 2001」を7月11日に見に行く機会を得たので、以下に気付いた点をあげておく。

全体的に見ると、展示が350件以上集まり、来場者も比較的多く、一般受けするテーマではない割りには盛況という感じであった。(参加者は世界23か国から1,4000人で、前年比40%増とのこと。) なお、これとは対照的に、6月下旬にニューヨークで行なわれた恒例の大イベントである"PC EXPO"は、一般の来場者が多かった割りには例年の活気がなく(私は前回は見ていないので人から聞いた話だが)、コンピュータ業界の業績悪化を反映していた。

展示は、コンピュータのハード/ソフト、ITサービスのみならず、コンサルティング、通信、PDA(パーム)、雑誌などバラエティに富んでおり、また連邦政府機関や州/地方政府も目立った。様々な関係者が虎視眈々と新しいマーケットを狙っているという雰囲気があった。

展示内容自体は、通常のITソリューションビジネスの延長線上にあるものだが、6月下旬にリハビリ法508条に基づく政府調達規則(政府関係機関が調達するIT関連機器に障害者対応を義務付けるもの)が施行されたばかりということもあり、「508条対応」をうたった展示がいくつか見られた。

Government Solutions Centerという展示区画が設けられ、優良な取組みと認められた20以上の連邦/州/地方政府(ドイツの地方政府も含まれていた)や関係機関がデモを行なっていた。このCenterのスポンサーはアクセンチュア社であり、同社の電子政府にかける意気込みが感じられた。

このGovernment Solution Centerで、連邦政府とGeorge Washington大学など4大学の共同プロジェクトである"CIO大学"の卒業式が行なわれ、多くの来場者に見守られながら政府幹部職員や企業幹部の卒業生が卒業証書を受け取っていた。ビジネス界のみならず政府内部にも戦略的にCIO(Chief Information Officer)を育成し、その地位を向上させていこうとする取組みが印象的だった。

この日の朝の基調講演では、連邦政府General Accounting Officeの長官がスピーチをした。「電子政府推進のための最重要課題は"人(政府職員)"、次が"(業務)プロセス"、その次が"技術"」、「GAOは電子政府によって各省庁のパフォーマンスを高めるために協力を惜しまない(人員削減はあえて強調しない)」などの発言が印象的だった。


 なにぶんにも1日覗いてみただけなので、断片的で独断的な感想になってしまって恐縮であるが、御参考まで。


図1 Government Solutions CenterにおけるCIO大学卒業式の模様
1



2.米国連邦政府の電子政府推進の動向

(1) 全体戦略

 さて、米国の電子政府の動向であるが、一口に電子政府といってもその内容は多岐にわたっており、また連邦政府のみならず州政府や地方政府までもカバーするのは容易ではない。ここではまず、連邦政府の全体戦略について見てみよう。
 前任の長谷川氏の2000年6月の駐在員報告にも詳述されているように、1997年2月に発表された「Access America Report」を策定したGovernment Information Technology Services (GITS)ワーキング・グループは、その後2000年4月にCIO協議会(Chief Information Officers Council)に吸収されており、現時点で電子政府の全体戦略を担当しているのはこのCIO協議会ということになる。
 CIO協議会は、最新の戦略として2000年の10月に「Strategic Plan FY2001-2002」を策定しているが、この戦略では、6つの目標(Goal)を掲げ、それぞれの目標を達成するためのステップとしていくつかの目的(Objective)を設定し、それぞれの目的を実現するための具体的イニシアティブ(期限を明示)とその結果を評価するための指標を設定している。
 これを読むと、米国連邦政府の電子政府に対するアプローチの仕方が理解できるので、少し長くなるがポイントだけ仮訳したものを以下に掲載しておく。


目標1: すべての国民を政府の製品、サービス及び情報と結びつける。
  目的1.1: 政府のサービスにアクセスするための単一窓口のポータル・モデルを開発する。<"導入"フェーズ>
    イニシアティブ: 政府ポータルFirstGov.govの創設(2000年10月1日まで)、5省庁の機能ポータル導入戦略の策定(2001年3月31日まで)、など
    評価指標: 2001年9月1日までに創設された機能ポータルの数(目標12)、など
  目的1.2: 政府サイトの利用者(国民)にとっての価値を高める。<"内容の質"フェーズ>
    イニシアティブ: 国民が政府と交流するための5つの中規模オープン・ディスカッション・グループの創設(2001年9月30日まで)、など
    評価指標: 2002年10月1日までの連邦政府のルール・メーキングのうちオンラインで行なわれた割合(目標50%)、など
  目的1.3: 連邦/州/地方/外国政府同士のやりとりをシームレス化する。<"統合"フェーズ>
    イニシアティブ: 州政府との間での電子的情報・サービスの統合に向けた戦略の策定(2001年3月1日まで)、地方政府との間(2001年9月1日まで)、他の5か国との間(2003年1月1日まで)、など
    評価指標: 政府レベル間及び国際間の電子的情報・サービスの統合戦略の策定(第一段階:2001年3月1日まで、第二段階:2001年9月1日まで、第三段階:2003年1月1日まで)、など
  目的1.4: 国民と政府機関とのやりとりが容易かつ適切に本人確認されるようにする。<"プライバシー保護"フェーズ>
    イニシアティブ: デジタル署名の使用促進(2001年1月1日までに10万、2002年1月1日までに100万)、政府利用のため少なくとも5社のPKI証明書を相互認証(2001年10月1日まで)、など
    評価指標: 2002年1月1日までに使用されるデジタル署名の数(目標100万)、2002年6月1日までに可能となった省庁間にまたがるデジタル署名利用の数(目標5)、など
  目的1.5: 共同作業用ツールを利用して実行グループのコミュニティを設立する。<"知識マネジメント"フェーズ>
    イニシアティブ: 関連コミュニティを支援するための共同作業用ソフトウェア・インフラの開発(2001年9月30日まで)、など
    評価指標: 2001年11月1日までに関連コミュニティを3つ立ち上げ、など
 
目標2: 相互運用性があり革新的な政府全体のITイニシアティブを推進する。
  目的2.1: 健全な政策/ガイダンス・フレームワークに基づく政府全体の相互運用性のあるPKI(公開鍵基盤)を開発する。
    イニシアティブ: 少なくとも4つの異なる認証局製品が利用できるブリッジ認証局を設置(2001年3月30日まで)、など
    評価指標: 2002年3月30日までに1外国政府及び1州政府との間で相互運用性試験が成功、など
  目的2.2: オープンで標準化されたITアーキテクチャを利用する。
    イニシアティブ: 連邦政府のアーキテクチャ・セグメントのためのモデル開発(2001年9月30日までに2つ、2002年9月30日までに更に3〜5つ)、XMLの効果的かつ整合的な利用のための戦略と行動計画策定のための(xml.govにおける)オンライン情報リソースの開発(2001年9月30日まで)、など
    評価指標: 2002年9月30日までに開発された省庁間にまたがるプロセスの数(目標最低2、一つは投資計画とITアーキテクチャのリンク、もう一つは連邦政府のアーキテクチャ開発への新技術の導入)、など
  目的2.3: ITアクセシビリティ試験の標準を設定するための官民パートナーシップを確立する。
    イニシアティブ: ITアーキテクチャへのアクセシビリティ改善に対する新技術の貢献度を定期的に評価するプロセスの開発(2001年3月31日まで)、アクセシビリティに関する短期的行動と長期的調査ニーズの優先度を付けるプロセスの開発(2001年3月31日まで)
    評価指標: 2001年3月31日までにこれら2つのプロセスを開発
  目的2.4: 連邦ITアプリケーションに関する先進事例の共有を促進する。
    イニシアティブ: 共通のビジネス・プロセスのためのグループの設立(2001年3月1日まで)、など
    評価指標: 2002年3月31日までに確立された複数省庁にまたがる共通システムの利用機会数(目標3〜5)、など
  目的2.5: 知識マネジメント・コミュニティのモデルを開発する。
    イニシアティブ: 知識マネジメントのポータルサイト(www.km.gov)を通じたバーチャル・コミュニティの設立(2001年6月30日まで)、など
    評価指標: 2001年7月31日までに知識マネジメントの先進事例ガイドの発行、など
 
目標3: 利用者が信頼してアクセスできる安全で信頼性のある情報インフラを構築する。
  目的3.1: セキュリティの先進事例を蓄積する。
    イニシアティブ: イニシアティブ:セキュリティ"ハウツー"のオンライン自習プログラムの提供(2001年3月31日まで)、など
    評価指標: 2001年9月30日までのセキュリティ先進事例の数(目標200以上)、など
  目的3.2: 連邦政府機関の初期セキュリティ評価能力を開発する。
    イニシアティブ: ITセキュリティ評価フレームワーク(ITSAF)のバージョン1.0の発行(2000年10月30日まで)、など
    評価指標: 2001年6月30日までにITSAFのための評価基準を公表、など
  目的3.3: セキュリティ関連事件情報と早期警告情報の政府全体での収集、分析及び迅速な伝達プロセスを導入する。
    イニシアティブ: 連邦政府全体での事件処理・早期警告システム導入のための役割・責任の明確化(2000年10月31日まで)、など
    評価指標: 2001年7月31日までにセキュリティ関連事件の早期警告を訓練
  目的3.4: 連邦政府機関が利用するためのセキュリティ・リスク管理プログラムを開発する。
    イニシアティブ: リスク管理のための方法を開発公表(2001年12月1日まで)
    評価指標: 2001年12月1日までにリスク管理方法を策定
  目的3.5: クリティカル・インフラ保護(CIP)のガイドラインと勧告を策定する。
    イニシアティブ: CIAO、GSA、OMBその他政府機関と協力してPDD-63(大統領指令63)の実施のための資金確保メカニズムに関する提案を作成(2002年3月1日まで)、など
    評価指標: 2002年3月31日までに連邦CIP認識計画を実施、など
  目的3.6: 政府の電子的情報システムにおける個人のプライバシーを保護する。
    イニシアティブ: 連邦政府の本人確認システムにおけるプライバシー保護方法の開発(2001年6月1日まで)、など
    評価指標: 2001年8月1日までにシステム開発プロセスにプライバシーの影響評価を組み込む方法に関するガイドライン策定、など
  目的3.7: 共通の電子的サービスのためのセキュリティ確保とプライバシー保護の事例を公表する。
    イニシアティブ: ウェブ・ベースの情報サイトや資金取引・調達のためのセキュリティ確保とプライバシー保護の事例の特定(2000年12月30日まで)、など
    評価指標: 2000年12月30日までに特定されるウェブ・ベースの情報サイトや資金取引・調達のためのセキュリティ確保とプライバシー保護の事例の数
  目的3.8: 連邦政府のシステムにおける個人・企業情報保護を改善するための政策やガイドラインを勧告する。
    イニシアティブ: OMBおよびNISTと協力してプライバシー及びセキュリティに関し連邦政府機関が活用する政策案を3つ作成(2002年9月30日まで)
    評価指標: 2002年9月30日までに作成されるプライバシー保護やセキュリティ確保に関する政策案の数(目標3つ)
 
目標4: 目標を達成するためにITの技能を高め人材を確保する。
  目的4.1: トップクラスのIT職員を惹き付け雇用できるよう連邦政府の能力を高める。
    イニシアティブ: 地域のハイスクールにおいて連邦政府におけるITのキャリアに対する関心を高めるためのプログラムを民間セクターと協力して実施(2001年9月30日まで)、など
    評価指標: 2002年9月30日までに実施されるNAPAと"連邦IT職員の課題"報告書の勧告の数、など
  目的4.2: 既存の連邦政府職員のための効果的なIT教育訓練の機会を拡大する。
    イニシアティブ: 職員の中核的能力の訓練ニーズに見合うロードマップを策定(2001年12月31日まで)
    評価指標: 2001年1月31日までにCIO交流プログラムを創設、2001年4月30日までにCIO協議会の若手職員教育プログラムを創設、など
 
目標5: より良い政府を実現するため官民が協力する。
  目的5.1: 連邦/州/地方/外国政府の代表者間の協力を促進する。
    イニシアティブ: 2001年9月30日までに議会レベルでの共通基盤フォーラムを実施、など
    評価指標: 2002年9月30日までに実施される連邦/州/地方政府機関の共通基盤フォーラムの数
  目的5.2: 連邦部門と他部門の指導層間でより強力で生産的な協力関係を構築する。
    イニシアティブ: 産業界と政界との間でのアイデアや情報の交換を引き続き促進、など
    評価指標: 2002年9月30日までに学界や産業界の指導層との間で実施される共通基盤フォーラムの数
  目的5.3: CIO協議会の取組や実績に対する関係者の理解を高める。
    イニシアティブ: 主要カンファレンスにおける協議会のプレゼンスの向上(2002年9月30日まで)、など
    評価指標: 2002年9月30日までに主要出版物で取り上げられるCIO協議会ニュースの数、など
 
目標6: 政府のプログラムやサービスの提供を改善するため投資管理政策を策定・実施するとともにそのツールを提供する。
  目的6.1: 企画、予算化、調達、計画管理のコミュニティとプロセスの統合を促進する。
    イニシアティブ: 情報共有フォーラムが戦略企画を実施(2001年2月28日まで)、など
    評価指標: 2000年11月30日までに設置される情報共有フォーラムの数(目標2、一つはCFO協議会(Chief Financial Officer Council)と、もう一つは調達協議会と)
  目的6.2: 投資管理手法を一貫して適用する。
    イニシアティブ: 政府機関の主要IT投資の効率を評価するための基準を策定(2001年6月30日まで)、など
    評価指標: 2001年9月30日までに投資ポートフォリオと効率評価のための基準を利用する政府機関の数、など
  目的6.3: 投資管理プロセスに連邦法上の規則を組み込む。
    イニシアティブ: 投資管理プロセスに連邦法上の規則を組み込むためのガイドラインと枠組みを策定(2001年8月31日まで)、など
    評価指標: 2001年8月31日までに投資管理プロセスに連邦法上の規則を組み込むためのガイドラインと枠組みを策定、など
  目的6.4: 投資決定と意味のある報告のために使われるデータの質、正確さ、一貫性及び流通を改善する。
    イニシアティブ: コストモデルとコスト報告のプロセス・様式の開発とI-TIPS(Information Technology Investment Portfolio System)との統合(2001年6月30日まで)
    評価指標: 2001年6月30日までにI-TIPSとコスト報告モジュールを統合
  目的6.5: ITの調達戦略を改善する。
    イニシアティブ: IT専門サービスの調達のための契約方法に関する報告を策定(2002年3月31日まで)、など
    評価指標: 2002年3月31日までにIT専門サービスの調達のための契約方法に関する報告を策定、など

 日本語にするとわかりにくくなるという面もあるので念のため補足しておくと、この全体戦略では、電子政府実現のための政府機関によるIT支出を、企業におけるIT投資と同様に「投資」という概念で捉えている。これは、1996年ITマネジメント改革法(いわゆるClinger-Cohen Act)で明確に打ち出された考え方である。
 イニシアティブや評価指標を見るとありふれたものも多く、日本の実態と大差ないという気もするが、電子政府を「投資」と捉えて全体戦略を体系的に構築するというアプローチ、その思想については大いに参考にすべきであろう。

(2) 電子政府の推進体制

 上述のように、連邦政府レベルでの電子政府の推進戦略はCIO協議会が策定している。では、このCIO協議会とはどのようなものなのであろうか。
 CIO協議会は、1993年政府業績評価法、1995年ペーパーワーク削減法及び1996年ITマネジメント改革法(Clinger-Cohen Act)に基づきITシステムのマネジメントを改善するために1996年7月17日付け行政命令13011によって設置された協議会であり、連邦政府機関の情報リソースの設計、更新、利用、共有及び性能の改善のため、連邦政府全体のITマネジメントのための政策・手続き・標準に関する勧告を行なうことなどを目的としている。
 このCIO協議会の前提として、各省庁にそれぞれの省庁のITマネジメントを行なうCIOが任命されており、これら各省庁CIOや他の関係する協議会(CFO(Chief Financial Officer)協議会や調達協議会)の代表者などでCIO協議会は構成されている。CIO協議会の議長は現在空席であり、財務省CIOのJames Flyzik氏が副議長として議事を進めているようである。
 ブッシュ政権成立当初から、大統領が早急に各省庁に対し強力なリーダーシップを発揮できる「連邦CIO」を任命すべきだとの声が強かった。ブッシュ大統領は2001年6月14日に、ユニシス社副社長のMark Forman氏をOMB(Office of Management and Budget)のAssociate Director for Information and Technology and E-Governmentに任命し、連邦政府のインターネット化推進、政府ポータルであるwww.firstgov.govの強化、"e-gov基金"の監督や包括的なIT政策の立案に充てることとしている。

 もう一つ推進体制に関しここで触れておきたいのは、CIO大学である。
 最初の「e-gov 2001」イベントのところでも少し触れたが、連邦政府はワシントンDCから地理的に近い下記の4大学の協力を得て、バーチャルなCIO大学を設置している。

George Mason University (School of Management, Master of Science in Technology Management)
Carnegie Mellon University (Chief Information Officer Institute)
George Washington University (School of Business and Public Management, Integrated Master of Science Program in Information Systems Technology)
University of Maryland University College (Graduate School of Management and Technology)

 4大学の受入コースを見てもわかるように、教育内容はいわゆる組織マネジメントからITの技術的内容まで多岐にわたっており、政府や民間企業の幹部クラスを対象に、各大学で土曜日などを使って授業が行われているという。CIO大学のカリキュラムの骨格は、1996年 Clinger-Cohen Actに基づきCIO協議会が1997年に設定しており、これに基づき1999年から上記4大学がコースを設定し生徒の受け入れを始めている。
 政府と民間企業の幹部クラスが机を並べてITマネジメントを学ぶというこの取り組みはユニークで、クラスを覗いて見たいような誘惑に駆られる。CIO大学の評価を行なうには時期尚早かもしれないが、電子政府を単なる"ホームページによる情報提供"に終わらせず、そこに"魂"を込めるためには、こうした努力が必要ではなかろうか。

(3) 電子政府関連の2002年度予算案

 少し古い話になるが、2001年4月9日に発表されたブッシュ新政権の2002年度予算案の中から、電子政府関連予算について概観してみよう。
 連邦政府機関によるIT技術・システム・サービスの利用のための予算は、予算書では「連邦IT投資」と称され、予算書分冊"Analytical Perspectives"の22. Program Performance Benefits from Major Information Technology Investments(p361-p426)に、各IT「投資」の金額及びミッション・目標が取りまとめられている。2002年度の連邦IT投資総額は、対前年比1%増の448億3,800万ドルである。


表1 連邦IT投資‐全連邦政府機関の合計(単位:百万ドル)
  プロジェクト件数 FY2000 FY2001 FY2002
重要なプロジェクト 853 $18,947 $20,998 $21,358
顕著なプロジェクト 2,142 $16,859 $17,861 $17,555
小規模および他のプロジェクト   $5,327 $5,447 $5,781
他の全ての機関による報告   $113 $113 $144
連邦政府総計IT投資   $41,246 $44,419 $44,838
(出展: Office of Management and Budget)


 このように連邦政府自身のIT関連支出を政府のミッション達成のための「投資」と捉える考え方に基づき、新政権の2002年度予算書では、各省庁毎の予算案を記述する第3章の冒頭に1. Improving Government Performance(p11-p18)という項目を置き、政府を国民を重視し結果主義・市場原理に基づくものにするための方策の一つとして、電子政府の推進を強調している。
 電子政府推進のための具体的な予算としては、「E-Government基金」の創設を提案している。2002年度に2,000万ドル、今後3年間で1億ドルの基金を創設し、省庁横断的な電子政府イニシアティブを支援するもので、OMB(行政管理予算局)が基金の管理・配分を行なう。政府のポータルサイトであるwww.firstgov.govの運営、政府が採用するデジタル署名を実現するための公開鍵インフラ(PKI)の開発などに活用される。
 また、民間において大きな成果をあげている電子調達を政府としての標準とし、取引コストの低減、在庫管理の効率化、ベンダー間競争による低価格化を実現するほか、契約業者が技術革新によってコストを低減させた場合にその一部を報酬として契約業者に還元してインセンティブとする"share-in-savings"方式の導入を提案している。

(4) 電子政府の一層の推進のための法案

 2001年5月1日、民主党のJoseph Lieberman上院議員(コネチカット州選出)と共和党のConrad Burns上院議員(モンタナ州選出)他は、電子政府の一層の推進を図るための法案"E-Government Act of 2001"を提出した。この法案は、

1: OMBに「連邦CIO」ポストを新設し、また事務局として「Office of Information Policy」を新設する。
2: 既存の「CIO協議会」(行政命令により設置)のミッションなどを法定する。
3: 省庁間にまたがる電子政府プロジェクトを推進するために「E-Government基金」を創設し、2002年度から2004年度までの3年間にわたり、毎年2億ドル(単年度ではブッシュ政権の2002年度予算案2,000万ドルの10倍、3年間では6倍)の予算を投入する。
4: 既存の政府ポータル「Firstgov.gov」を強化する。
5: 「オンライン国立図書館」に向けた取り組みを強化する。
6: 政府職員のための「連邦ITトレーニング・センター」を設立する。
7: 地域におけるデジタル・ディバイド対策として設立された「コミュニティ技術センター」の活動を強化する。
8: GIS(地理情報システム)のための標準化を一層推進する。
などを主な内容としている。また、上述の"share-in-savings"方式の導入もうたっている。


 この法案に対しては、既に産業界や市民グループをはじめ幅広い層から支援の声があがっており、電子政府推進に対する期待の高さが窺われる。


3.電子政府の具体的な進展状況

 以上、米国の連邦政府レベルでの電子政府に対する戦略、体制、予算などを見てみたが、それでは具体的な進展状況はどうなっているのであろうか。
 最近、電子政府の具体的な取り組みに関する様々なニュースを耳(目)にする。

内国歳入庁(IRS)が4月26日に発表したところによると、2001年4月20日までの2000年度の個人所得税申告期間における電子納税件数は、前年の3,540万件を13%上回る3,950万件に達した。

政府調達局(GSA)は政府関係機関への製品調達を請け負っている業者に対し、2001年7月1日までに該当製品をGSAの運営するオンライン取引サイト「GSA Advantage!」に掲載するよう義務付けた。これによりオンラインで政府機関と取引できる業者数は現在の4,000社から9,000社に、製品数は400万点に増える。

といったものである。
 しかし、「電子政府」にも様々なタイプのものがあるため、一口に「具体的な進展状況」を述べるのは難しい。2000年6月の駐在員報告では、電子政府のタイプを@情報の収集と提供、A文書のファイリングと処理、B補助金などの公募と配布、CEコマース、Dイントラ/インターガバメントのネットワーク、の5つに分類しているが、先般の「e-gov 2001」イベントへの出展だけ見ても、今や州政府、地方政府まで含めて各分類ともに進展を見せている。

 以下ここでは、連邦政府機関によるオンライン販売の具体的な進展状況について取り上げてみよう。
 オンライン販売については、2000年のオンライン販売市場で、従来トップの座を占めてきたアマゾン・ドットコムが28億ドルで初めて2位に転落し、代わってトップに立ったのが36億ドルを売り上げた連邦政府であった、という興味深い調査結果が、2001年5月28日に公表された。これは、Federal Computer Week誌Pew Internet American Life Projectが合同で行なった調査で、ここで言う連邦政府とは、ホワイトハウスとその直属機関、国務、財務、国防など14省とその付属機関、及び70余りの独立政府行政機関を指している。
 総額が36億ドルとは驚くべき額だが、実はそのほとんどは財務省によるもので、サイトにおける貯蓄債券販売などで33億ドルと全体の91%を占めている。しかし、その他にも、アムトラック(準国営鉄道)による乗車券販売が6,200万ドル、国立公園管理局によるキャンプ場の予約が540万ドル、郵政公社による切手販売が270万ドル、第二次世界大戦記念碑建設促進委員会によるギフト販売が230万ドル、CIAによる外国の新聞報道記事(英訳版)のオンライン販売(こんなものがあるんですね!)が100万ドルなど、様々な物品・サービスがオンラインで販売された。
 また、2001年1月からはGSA(政府調達庁)が事務用品や机などの余剰品のオンライン競売を開始し、最初の3か月で300万ドル以上を売却したという。実際、Federal Computer Week誌が掲載している政府サイトの一覧表によると、連邦政府機関全体では民間企業への委託販売のサイトも含め164のウェブサイトが運営されており、以上の他にも、スミソニアン協会やNASAなどの人気グッズの販売、各種の差押え物件や中古品の競売、白書やデータベースの販売などが行なわれている。


4.州/地方政府における先進事例

 以下に、先般の「e-gov 2001」イベントにおいて先進事例として出展・紹介されていたものの中から、メリーランド州における電子調達「eMaryland Marketplace」とポートランド警察局におけるワイヤレスを利用した公安活動「ポートランド警察データシステム」を紹介する。
 なお、これらの先進事例はワシントン・コアから提供してもらっている。


(1)メリーランド州における電子調達 〜 eMaryland Marketplace 〜

メリーランド州における電子調達の概要

「デジタル・メリーランド」を目指すメリーランド州は「E‐Gov 2001」で、電子政府に対する先駆的な組織として「E-Gov 2001 Pioneers」賞を受賞している。電子調達システム自体は、特別目新しいものではないが、メリーランド州における取組みは、単なるリンクサイトに終わるものではなく、本当の意味でのワンストップ調達サービスを提供している点で、他の追随を許さない。

eMaryland Marketplace

 メリーランド州では、1997年に、「知事の調達タスクフォース(Governor's Procurement Taskforce)」が設置され、州調達局(Department of General Services)と密接に協力しながら、オンライン上での調達に取組みはじめた。2000年3月になると、オンラインカタログを利用した調達、入札を通じた2種類の調達を行うことができるeMaryland Marketplaceを開設した。この結果、州政府機関に商品、サービスを提供する企業とのEコマースが開始されるようになった。現在、約260のバイヤー(州内全バイヤーの10%に相当)、約300(州内全ベンダーの20%)のサービスベンダーが、このポータルを利用した商取引を行っている。調達物品は、コンピュータ・ソフトウェア、医療品、食料品、事務機器、日常消耗品、さらには、学校施設の利用に関する研究までもが調達の対象となっている。
 初年度は、ウェブサイト上で、10万ドルの調達取引が行われたが、メリーランド州では、2004年までに、全調達取引の80%をオンライン上で行うことを目的としている。


図2 eMaryland Marketplaceのウェブサイト
2

仕組みと利用方法

 企業がこのウェブサイトを利用して州政府と取引を行うには、オンラインで登録を行う必要がある。登録者は利用するサービスの内容により異なる年会費を支払う仕組みとなっている。例えば、オンラインカタログ販売の他、オークションに参加できる「ベーシック会員」は150ドル、オンラインカタログ販売、オークション参加、電子メールによるオークション情報の自動的受信が可能な「プレミアム会員」は225ドルを支払う。尚、購入側である州政府機関は、無料でユーザー登録を行うことができる。
 企業は、取り扱う商品をオンラインカタログとしてウェブ上に掲載し、買い手である州政府機関がこのカタログをもとに、ウェブサイトで注文を行う。州政府機関は、注文を行うごとに3ドル50セントの手数料を州調達局に支払う。また、州政府機関が購入したい商品を掲示し、企業に入札させるオークションを開くこともできる。一旦州政府機関による購入が決定されると、その購入は自動プロセスにより、承認される。購入にかかる全工程時間は、従来の調達システムの30分に比べ、わずか6分ほどとなっている。

調達電子化の背景と効果

 政府による調達には、政府が希望する価格で物品を提供する企業の調査、書類作成、郵送など、時間とコストのかかる作業が多い。これらの過程を簡素化し、ジャストインタイム(JIT)のサプライチェーンを構築する目的で、Eマーケットプレイスが開設された。また、ウェブベースで利用できるEマーケットプレイスは、メリーランド州全体に分散する州政府機関全てが利用できる調達機能として極めて好評である。サイト立ち上げには、SAIC、KPMGコンサルティングなどの民間ベンダーが技術支援を提供している。
 とりわけ、中小企業は、Eマーケットプレイスをより積極的に利用している。州政府機関による購入希望商品のオンライン掲示により、中小企業は、最新の調達情報を入手することができ、従来のような煩雑な手続きなしにアクセスできることが、その大きな魅力となっている。
 同ウェブサイトでの取引を行うことで、メリーランド州では注文1件ごとに100ドルのコスト削減、年間1,200万ドルのコスト削減を見込んでいる。


図3 政府機関による調達物品のオンライン掲示
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情報セキュリティへの対応

 企業、政府機関とも、登録の際にユーザーIDとパスワードを取得する必要がある。取引に関する情報は、SSLの暗号化を通じてやりとりされている。
 同サービスは、これまで政府向けSIサービスで活躍してきたSAICなどが、政府向けECソリューション・サービスの本格的なサービス展開を念頭に、関与したプロジェクトにより実現している。セキュリティ対策には定評のあるこのSAICが関与していることはひとつのポイントといえるが、現状では、特に最新の対策やセキュリティ技術の導入は見られず、ごく基本的なレベルのセキュリティとなっている。

(2)ポートランド警察局におけるワイヤレスを利用した公安活動 〜 ポートランド警察データシステム 〜

ポートランド警察局の取組み概要

 オレゴン州ポートランドにあるポートランド警察局(Portland Police Bureau、以下PPB)は、地方政府における先取的な電子政府への取組みの例として、高い評価を得ている。「E‐Gov 2001」でも、地域コミュニティでの公安活動における先進的なIT技術の活用や民間ベンダーとの積極的なパートナーシップの提携のモデルとして、大幅に改善された情報システム、「ポートランド警察データシステム(Portland Police Data System)」の紹介を行っている。

ポートランド警察局における問題の所在

 PPBは、現在1,500人の職員を抱えている。1990年に策定された組織の基本理念には、@サービス志向、Aパートナーシップ、Bエンパワーメント、B問題解決、Cアカウンタビリティ(説明責任)が盛り込まれており、これらをもとに、ポートランド地域における犯罪や犯罪への恐怖を取り除き、住民と警察局とのパートナシップを築き、住民の生活を向上させることを目的として活動している。
 PPBでは、より効率のよい、効果的な情報の収集、蓄積、処理、アクセス、伝達、利用、保護を実現するため、現在の複雑で時間とお金のかかるシステムや手順をどのように改善していくかという問題に直面していた。
 PPBにおける情報システムは、処理もそれなりに早く、信頼度も高かった。また、20年以上にわたる情報が蓄積され、ポートランド地域に密着したものであったため世間の認知度も高く、組織内からの支持も高かった。一方で、PPBの情報システムは、1970年代に開発されたものであり、スクリーンに映し出される情報は、テキストのみであった。また、その古さゆえに、運用維持コストもかかり、人的負担も大きかった。あいにく、PPBは、情報システムを共有していたパートナーを失ったため、金銭的な負担も増えたり、政治的な支援が受けられなくなったりと、内部的な問題にも悩まされることとなった。

PPDSの概要

 ポートランド警察データシステム(Portland Police Data System)は、100もの犯罪・司法機関で働く5,000人以上の人々が利用する、地域的な法執行記録の管理システムであり、他の犯罪・司法システムへのゲートウェイとしても機能していた。PPDSは、信頼度の高いワイド・エリア・ネットワーク(WAN)やワイヤレス・ネットワークを通じて送信され、パーソナル・コンピューター(ネットワーク、ダイヤルアップ、バーチャル・ネットワークなど)、モバイル・データ・コンピューターなどを通じてアクセスできる。性能はそれなりに高く、良く機能してはいたが、旧式のアプリケーション(図4参照)であった。


図4 旧式のPPDS情報システム
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 PPDSに管理されていた情報には次のようなものがある。

- 住人情報(975,000件) - ケース管理
- ケース(1,950,000件) - 容疑者のトラッキング情報
- 拘留情報(850,000件) - ギャングのトラッキング情報
- 車両情報(565,000件) - 拳銃検索
- 911(緊急通報)コール数(3,225,000件) - 財産/証拠
- 住所・電話番号情報 - 抵当
- 情報・照会 - 戦略的調査
- 薬物訴訟トラッキング情報 - 犯罪マッピング・システムのデータ・ソース
- 裁判所スケジュールとトラッキング情報 - 他の犯罪・司法情報システムへのアクセス


新システムの導入に対するビジョン

 新情報システムの導入にあたり、PPBでは、以下のような基本的な問いかけに明確に答える必要があった。

 ・将来、どのような情報を保有し、どのような情報システムを持つべきか?
 ・将来に向かい、どのような情報を強みとして保持するべきか?
 ・どのようにして、巡回警察官に適切な情報を伝達することができるか?
 ・どのようにして職員の生産性を高めるべきか?
 ・どのようにして既存の情報システムを役立たせたらよいか?
 ・どのようにして将来の技術変化に対応していくのか?

 これらの問いかけに答えるかたちで、PPBは、次のような新システム導入のビジョンを打ちたてた。

【 技術面 】
 - 新システムへグラフィック情報を導入できるようにすること
 - 従来のテキスト情報に加え、顔写真(自動車免許証の写真)を追加すること
 - パトロールカーにデータとイメージを送信できるようにすること
 - 電子引用や人種のプロファイリング・データの収集をワイヤレス化すること
 - 容疑者の指紋識別をワイヤレス化すること

【 情報管理面 】
 - 重複した情報収集・投入を減らすために情報を共有すること
 - 報告書作成のために電子的な手段による情報収集を行うこと
 - 可能な限り既存の情報と設備を利用すること
 - コミュニティ巡回のための警察官を配置する時間を短縮すること

 これらのビジョンを実現化するにあたり、まず何よりも、使用者である警察官が受け入れられるようなものでなければならなかった。そのためには、導入に伴う混乱をなるべく最小限に抑え、段階をおったアプローチを実施する必要があった。また、標準となるようなハードウェア、ソフトウェア、コミュニケーション・ツールを使用したり、既存のシステムと新システムの混在を受け入れるということも考慮に入れる必要があった。
 ただ、このような新システムを導入することに障害がないわけではなかった。例えば、政府からの補助金に関しては、「警察官の時間を節約する」ものであることが要求されており、既存の800mhzプライベート・ラジオ・システムを使用しなければならなかったり、保安官が顔写真を保持しなければならなかったりと、技術的・法的な制約もあった。また、新情報システムの開発・導入には、ポートランド市のIT部門や、他の警察機関におけるパートナーなど、複数の政府機関・部署が係わらなければならず、スタッフの専門技術・知識に限界があるということなども、プロジェクトを進める上での実際的な問題であった。

新情報システムの導入

 このような状の中、PPBは、まず司法省のコミュニティ中心治安維持部(Community Oriented Policing Section)による機器購入への助成金、「DOJ/COPS More 98 Grant」を取得した。これにより、パトロール車両における顔写真の取得が可能になり、電子的手段による現地からの報告プロセスが簡易化された。実際に使用した機器としては、モトローラ社の「MW520」モバイル・コンピューター(図5参照)と、PPDSの既存の設備を有効利用するために、シーガル社の「WinJa」ソフトウェア開発ツールを搭載した。また、顔写真を取り入れるために、地域の政府機関の協力を得た。


図5 モトローラ「MW520」
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 現在、このようなモバイル・データ・コンピュータ(DMC)は、300台のパトロールカーに搭載され、スクリーンをタッチすることにより簡単に機能するソフトウェアがインストールされている。また、顔写真付きのマイクロソフト・ウィンドウズ/ブラウザー(PPDS仕様)が使用できる。また、PPDSのモバイル版のデザイン設計は既に開始されており、2001年12月に顔写真付きのものが開発される予定である。さらに、2002年7月には、電子手段による現地からの報告ができるようになる。


図6 新・旧PPDS画面
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新情報システムの導入から得た教訓

 新情報システムの導入にあたり、PPBでは、エグゼキュティブ・レベルの管理者が直接係わることと、プロジェクトを通じたエンドユーザー(警察官)の参加が、成功に不可欠であるという教訓を得た。また、技術スタッフが、新しい技術を使いこなすための再トレーニングには時間がかかり、警察官自体へのトレーニングも重要ということであった。そして、何より、電子政府を実現させるには、「技術ありき」の業務・組織変革ではなく、あくまで業務の効果・効率を高めるために新技術を導入するというスタンスが必要だという。


(3) その他の事例 〜 ニュージャージー州など 〜

 本稿では先進事例として州/地方政府の事例2件を紹介したが、州/地方政府の仕事は地域住民と直接の接点があるものが多いだけに、住民の関心も高く、電子政府に対する取り組みが進んでいる。私のアシスタントのMatthew Vetrini君によると、彼はニュージャージー州に住んでおり、住居のオーナーとトラブルを抱えているのだが、関連法令のキーワード検索業者登録記録の閲覧(有料)裁判所への申立て様式の入手消費者保護局への苦情申立てなどをインターネット経由で行なっているという。
 もちろん、ニュージャージー州は独自の電子政府戦略である「ニュージャージーIT戦略計画」を策定しているし、例えばニューヨーク市のレベルでも「ニューヨーク市IT戦略」を策定して電子政府を推進している。


5.電子政府推進のための教訓

 「E-Government Act of 2001」の審議過程で、EDS社副社長のBarry Ingram氏がITAA(米国情報技術協会)の代表として、2001年7月11日に上院のGovernment Affairs Committeeで証言を行なっている。この証言を読むと、もちろん法案の必要性を訴えその成立を支持しているのだが、産業界の電子政府に対する期待−すなわち電子政府を単なるインターネット関連の取り組みに終わらせず、真に政府の業務プロセスを改善し国民や産業界に対しより良いサービスを提供するものにすること−が窺える。証言の中で同氏は、電子政府のための教訓10か条を挙げているので、以下に紹介しておこう。


 1: 電子政府を成功させるためには、トップのリーダーシップと支持に基づく財政的裏付けと周囲からの注目が必要。
 2: 省庁間にまたがる標準化が不可欠。
 3: オンラインでサービスを提供するための技術とインフラの強化が必要。
 4: 拡張性に配慮すべし。
 5: プライバシーとセキュリティが問題になる前に対策を行なえ。
 6: 政府職員のための「連邦ITトレーニング・センター」を設立する。
 7: 電子政府による新しいサービスの利用を促進するため国民と産業界にインセンティブを与えろ。
 8: デジタル・ディバイド対策のため引き続きカウンター・サービスも必要だが、新技術や業務プロセス改善で補強できる。
 9: 新しいオンライン・サービスを強力に推進すべし。
10: 新しい財政的仕組みを採用し民間セクターとの新しい協力モデルを確立すべし。


おわりに

 今回の駐在員報告は少し長くなってしまったが、それでも例えば電子政府推進のための環境整備(PKI、セキュリティ、プライバシー等)など書けなかった話は多い。これらは、一般の電子商取引とも重複する課題なので、別の機会に譲ることにしたい。

 結局、電子政府とは何なのだろうか?米国の産業界の発想は、「民間企業の競争力強化で成功した"ITソリューション"のアプローチを公的部門にも適用する」の一語に尽きるであろう。この発想からすれば、「ITとマネジメントの双方に長けた強力な連邦CIOの創設」といった話は、ごくごく当たり前の話である。
 また、私は個人的には、公的部門の情報・サービスはITネットワークのキラー・コンテンツでありキラー・アプリケーションであると考えている。電子政府の進展は、一層のインターネット普及やブロードバンド化を牽引する効果があるだろう。
 日本でも「e-Japan戦略」などに基づいて、電子政府の実現に向けた取り組みが急速に進められている。その実現に期待したい。
(了)

 本稿に対する御質問、御意見、御要望がございましたら、arataryohei@jetro.go.jpまでお願いします。



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