
【 2003年4月号 】
〜 「米国のIT企業の対中国観」 〜
JEITAニューヨーク駐在 荒 田 良 平
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はじめに
今月は、米国のIT企業の対中国観について取り上げる。
「眠れる大国」中国の近年のめざましい急成長については、今さらここで改めて言うまでもないであろう。改革開放経済が進展し、WTO加盟も実現した現在、13億人の人口を有する中国は、巨大な潜在市場として、また無尽蔵の安価な労働力の供給源として、世界中の企業や投資家の関心を集めており、また、ITをはじめとするハイテク分野においては、中国は優秀な技術者・研究者の確保という観点からも重要性を増している。一方、シリコンバレーや台湾などから経営知識を有する人材が流入し、こうした中国の強みを活用したビジネスを展開することによって、国際競争力を持った中国企業が出現してきており、中国を「機会」であると同時に「脅威」であるとする見方も強まってきている。
こうした状況を踏まえ、このたび、ニール・マイルズ社に依頼して、主要IT企業に対中国観についてのアンケート・インタビュー調査を実施してもらった。今回は、その結果についてご紹介することとしたい。
今回の「米国のテクノロジー企業にとっての中国〜潜在的機会か脅威か」と題する調査は、米国の主要IT企業等に下記の11の質問を送付し、協力を得られる企業等に今年1月から3月にかけて適宜電話等でインタビューを実施して、その概要をとりまとめる形で実施した。
質問項目と協力企業等は以下の通りである。また、調査にあたっての参考文献を本稿の末尾に記載しておくので、御参照ありたい。
【 質問項目 】
| 1.米国のテクノロジー企業にとっての中国の役割 |
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質問 (1):貴社にとって中国とは? |
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| 2.大中華圏の影響 |
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質問 (2):台湾の企業と専門技術が中国本土に移転し、「大中華圏」と呼ばれる市場を形成している。これが貴社の属する産業にどのような影響を及ぼしているか。 |
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| 3.中国本土における香港と台湾の成功 |
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質問 (3):香港や台湾の企業が中国本土でも成功できると考えるか。 |
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| 4.中国での事業経営 |
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質問 (4):貴社は、中国での事業経営において、他のアジア諸国での場合に比べて、多くの困難に直面していると思うか。また中国で直面している困難の中で、貴社の属する産業に独自のものは何か。 |
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| 5.米国政府の禁止措置の果たす役割 |
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質問 (5):米国政府が、最新式の設備またはプロセス技術の対中輸出を禁止しているにもかかわらず、中国では米国のベンチャーキャピタルや外資直接投資が増えている。また、中国のベンチャーキャピタル(VC)事業も発展しており、VC団体に所属するVC企業が増えている。米国政府の禁止措置は、単に米国企業の利益の可能性をなくしているだけだろうか。貴社が中国を投資機会と見なしているならば、米国政府の禁止措置についてどう思うか。 |
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| 6.中国における広範な知的所有権侵害活動 |
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質問 (6):知的所有権侵害は、中国に関連してよく挙げられる問題であり、米国政府の輸出禁止措置の基本的な理由となっている。中国では、米国その他の諸国に比べて知的所有権侵害がより広範な問題であると思うか。 |
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| 7.米国企業における中国人人材 |
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質問 (7):貴社では、製品設計の分野で、どの程度活発に中国人の人材を開拓しているか。プロセス設計、研究、開発の各分野ではどうか。 |
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| 8.中国で教育を受けた技術者・科学者の増加 |
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質問 (8):毎年、中国で教育を受けた技術者・科学者が増加している中で、中国企業が単なる製造業から設計の分野へと移行していることに、どのような脅威を感じているか。 |
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| 9.中国vs.シリコンバレー:公正な戦いか? |
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質問 (9):新しい中国企業が、設計の分野で、シリコンバレーの確立された企業と直接競争できると思うか。 |
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| 10.中国企業による米国人幹部の採用 |
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質問 (10):中国の企業が、工場や設計部門の効率的な運営のために、米国企業から経営の専門知識を持つ幹部を採用するかもしれない、という脅威には、どの程度信憑性があると思うか。 |
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| 11.中国は米国企業にとって新たな機会か、それとも脅威か。 |
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質問 (11): 中国は米国企業にとって新たな機会かそれとも脅威だと思うか。
質問 (11-A): 脅威だと思う場合、現実的に考えて、米国企業への影響はいつ頃出ると思うか。これはどの程度の脅威だと思うか。特定の産業または副産業にとって、特に脅威だと思うか。
質問 (11-B): 機会だと思う場合、その規模はどの程度だと思うか。どのような企業もこの機会を活用できるか。特定の産業または副産業にとって、特に大きな機会となると思うか。 |
◆ 協力企業等 ◆
- America Online - Time Warner
- Asia Pacific Ventures
- Cisco Systems, Inc.
- Company Withheld
- Dell Corporation
- IBM
- Intel Corporation
- Intuit Inc.
- Oracle Corporation
- Siebel Systems
- Tensilica
- Virtual Space Networks
- Warp Nine Engineering
- Yahoo, Inc.
- 匿名企業(大手IT企業)
- ニューヨーク大学Stern School of Businessの大学院生にもインタビューを実施
1.米国のテクノロジー企業にとっての中国の役割
質問 (1): 貴社にとって中国とは?
複雑な関係の構築
中国が、事業経営、製品販売、人材発掘、および新たな機会への投資といった活動の場として発展していることは、米国のテクノロジー企業と中国との関係を複雑なものにしている。これらの活動の多くは相互依存的な性質を持つため、その中のひとつだけに基づいた関係を築いている企業は少ない。企業の大半は、中国の資源を利用し、世界最大の成長市場で製品を販売するために、いくつかの異なる側面から中国に関わっている。
これまで、中国を投資機会と見なす米国企業は、中国をどう利用するかという点で狭い見方をすることが多かった。往々にして、こうした企業は、ローテク製造業の、確立された大企業で、製造コスト削減のために豊富な低コスト労働力を利用し、最終的には製品をより豊かな先進国に輸出することを目的としていた。
しかしながら、今日の事業社会では、中国で教育を受けた技術者・科学者が増えると共に、海外から帰国する中国人も増加しているため、米国企業にとっては、これまでとは異なる中国人労働力を利用する機会が生まれている 。さらに、中国経済の強化に伴って可処分所得が増え、その結果米国製品の販売市場が拡大している。
中国市場のこうした変化に応じて、米国企業が中国との間に複雑な関係を築く必要性が生じている。米国企業は単一の関係を築くだけでなく、さまざまなものを提供する国としての中国と関係を結ぶようになっている。中国の労働力および国民全般が技術的に進歩しているため、中国に関わる企業も技術関連企業である例が増えている 。そうした企業にとっては、中国の国民による開発と中国の国民に対する販売とを同時に行えることは、コスト削減と、ターゲットを絞った特殊化した製品開発というユニークな可能性につながる 。今後も各種産業の企業が製造拠点としての中国に投資をする一方で、テクノロジー企業は、より多様な恩恵を享受し、その結果、より複雑な、しかしより大きな成功につながる可能性のある関係を築いていく。
米国の対中投資の歴史
米国がハイテク産業における中国の台頭を促進するために資金を提供するのはこれまでにない新しい動きのように思えるが、米国企業は過去にもこの世界最大の市場に多額の資金を投資しながら、ほとんど成果を上げられなかった。1979年から1985年まで、世界的なエネルギー危機に刺激されて、米国企業を中心とする各国の石油会社が、中国で未開発の埋蔵石油を大量に発見するため、15億ドルを中国市場に投入した。これらの企業は、多大な努力にもかかわらず埋蔵石油をほとんど発見することができず、海南島で天然ガスを発見したアルコ・インターナショナル社が唯一の例外となった。オクシデンタル石油社だけでも、7億5,000万ドルを投資した石炭探査プロジェクトを1985年に放棄し、持ち分25%を中国側パートナーに売却した。
その後、1980年代・90年代には、さまざまな産業分野で数社が著作権侵害のために、対中投資で巨額の損失を被った。プロクター&ギャンブル社は、1988年から1990年代末までに中国での合弁事業に推定3億ドルを投資したが、著作権侵害の問題が原因で1億5,000万ドルの損失を計上するとされている。さらに劇的な例としては、マクダネル・ダグラス社が中国との合弁事業に失敗し1992年に撤退した際には、同社の高度な工作機械類が中国のミサイル工場で発見された。
このほかにも対中投資の失敗例は、中国国外での成功を中国で再現することの難しさを表している。1990年代に最も効率的・効果的なメーカーのひとつとされたゼネラル・モーターズ社は、中国での合弁事業で車をわずか300台しか製造せず、さらにそのごく一部しか販売できずに終わり、1993年に合弁事業を放棄した。同じく優良自動車メーカーであるプジョー社は、12年間にわたり、製造知識を活用して中国市場進出に努めたが、予想したピーク生産台数の半数しか製造できず、1997年に撤退した。
最後に、外資投資と中国との有利な関係の構築においては、中国政府が極めて重要な役割を果たす。これを物語る例として、クアルコム社は、主として中国政府の介入が原因で、中国の無線通信会社チャイナ・ユニコム社との関係がスムーズに進行していない。クアルコムは2000年に、チャイナ・ユニコムの無線ネットワークを構築する有利な契約を結び、中国市場への参入を発表した。ところが数カ月後、中国政府は主に反西側派の幹部に押されて、この契約を「妨害」した。以来、この取引は復活と遅延を繰り返している。この例は、中国政府が民間部門との関係に不確実性をもたらすことを物語っている。
中国で有利な事業関係を築こうとする外国企業がすでに直面しているさまざまな障害に鑑み、ハイテク産業がいかにこうした妨げとなる要因を認識した上で、中国が外資投資に提供できるものを活用するかを知ることは興味深い。しかし、中国での事業あるいは中国との事業における先達の試みとは異なり、ハイテク産業は、純粋な外資投資と同時に、内的な動機によっても推進されている。対中外資直接投資は1986年の20億ドルから2002年には530億ドルまで上昇したが、こうした外国からの投資だけでは中国の急速な発展を支えることはできない。中国の国内総生産は1990年以来5倍に増え、1.2兆ドルに達した。その結果、国内の開発資源が増大し、中国企業による自社発展への投資が促進されている。
このような国内総生産の急増にもかかわらず、業界専門家のオービル・シェルによると、中国の金融市場は「政府が支援する賭博カジノに毛の生えたようなもの」だという。中国の銀行は日常的に国有企業に補助金を提供し、推定総額5,000億ドルとされる融資の半分までが不良債権と見なされている 。中国のWTO加盟に伴い、国有企業が外資投資や外資系銀行と競合しなければならなくなったため、現行の経済や雇用が危機にさらされる。また、他の諸国や各国経済にとっては先進技術がコスト削減を通じて安定をもたらしているのに対して、中国では著作権侵害が引き続き大きな問題であるために、技術がもたらし得る恩恵が制限されている 。業界専門家や関係者の一部には、ハイテク市場としての中国、またハイテク供給者としての中国に疑問を呈する声もあるが、ハイテク産業における外資投資の増加や中国企業の成功例がもたらす熱意の高まりを否定することはできない。
前述のように、過去における製造業一般の例と異なり、ハイテク産業には、中国国内で開発への支援が得られるという独自の優位性がある。市場調査会社のインフォメーション・ネットワーク社の報告によると、半導体、パソコン、およびソフトウェアの各分野は、2002年に20%の成長を遂げた 。この成長は、主として外資直接投資によるが、国内の支援を受けていることも確かであり、こうした成長は当然競争の増加をもたらし、収益の減少につながる。しかし、米国のハイテク企業は、先達の失敗例を参考に、中国での事業経営のしかたを学ぶべきである。今後、時と共に成功度が増し、その結果収益性も上昇するはずである 。
市場としての中国:現在と未来
中国の人口は現在13億人で、毎年1,200万?1,500万人ずつ増加しており、米国企業にとっては魅力的であると同時に驚異的な市場となっている。世界で最も人口の多い10都市中9都市が中国にあり、これらは企業にとって消費者獲得の拠点となり得るが、現時点では、これらの都市の住民はほとんどが真に有用な消費者となる条件を備えていない。また、中国本土の海岸部から内陸部への資金の移動が増えており、消費者獲得の過程がさらに複雑化している。労働人口の増加も問題のひとつである。それは、国内の既存および新規の企業にとって地元の労働力が無尽蔵に存在することになり、労働コスト面の利点となって競争が激化するからである。
外国企業にとって中国が主要な市場となるためには、まだ多くの不確定要素と障害が存在するが、中国が他の諸国に比べて技術的に遅れをとっているという事実が、独自の機会を生み出してもいる。米国企業をはじめ世界各地の同様の企業は、急速に変化する技術に合わせて自社の技術ベースを絶え間なく更新しているのに対し、中国の企業や消費者は、初めから最新技術を採用することができる。これは、米国企業に2つの相反する効果をもたらす。中国企業は、古いパソコンなど旧型技術製品の膨大な在庫に対処する必要がないため、コストを抑えることができる 。一方、米国企業にとっては、米国の消費者と異なり新しい技術への切替コストが必要なく、また可処分所得の増えている中国の消費者は、最新技術販売の格好のターゲットとなる 。
中国が一足飛びに最新技術を採用した好例として、中国の電話網構築が挙げられる。他の諸国および市場が従来の電話線を敷設しているときに、中国は世界に遅れをとっている状況を利用して、この段階を素通りし、世界で最も進んだ無線電話網を構築した。今や中国の大都市は、無線でビジネスを行う設備を備えており、一方米国をはじめ中国より「先進国」であるとされる諸国は、徐々にその方向へ進んでいる段階にある。通常の動きとして一般市民が前進し技術の採用が進むに伴い、マスマーケット(大量市場)発展の可能性が生じる 。
この例が示すように、中国には、現時点では未成熟かもしれないが技術を求める消費者ベースがあると共に、革新と技術能力が存在しており、これは国際企業が製品・サービスの販売と事業経営の場として中国市場に参入する十分な理由となる 。2003年2月の「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の報道によると、外国企業数社が対中投資に真剣に取り組んでおり、その投資から収益を上げているという。これらの企業は、中国の製造業専門技術の歴史的価値を認識することによって、実際に中国への投資を成功させるという、これまで多くの企業がなし得なかったことを実現した。
これらの企業の成功は、中国で収益を上げることが可能であることを示しているが、こうした関係が築かれているのはほとんど製造業に限られている。テクノロジー企業がこうした成功を収めるには、企業が政府との関係を築いて支援を確保するという責任をも果たさなければならない 。またテクノロジー企業は、従来の企業が利用してきた製造業労働力だけでなく、中国の労働力の設計・開発能力を活用すべきである。以下に、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の企業調査結果を記す。

これらの例は、テクノロジー企業にとっても、中国との関係で利益を上げる可能性を期待させるものであるが、依然として、米国企業がどのように中国との関係を築くかという不安は残る 。米国のある中小ベンチャーキャピタル企業は、破たんしているがまだ存続する小企業で、米国にほとんど資本も資源も残っていないテクノロジー企業を利用することを計画している。この企業クリスタル・ベンチャーズ社のマネージング・ディレクター、ジョセフ・ツェングによると、同社は2億5,000万ドルのベンチャー資金で、こうした破たん企業を「リエンジニア」し、中国市場に再び参入させる計画である 。ツェングは、「中国は多くの企業に将来の大きな可能性を提供する。それがなければ、こうした企業は閉鎖するしか道がない」と言う 。しかしクリスタル・ベンチャーズは、現在中国で得ている体験をもとに、これらの企業を、破たんした米国企業から成功する中国企業へと変身させるために、新たな組織を作り、製品群を改良して、収入源の開拓・改善に努めなければならない。中国での事業運営に成功するには、中国式の方法と慣習を完全に理解することが最重要である 。
テクノロジー企業は、過去に中国市場に参入した企業が体験したことのない独自の難関に直面する。市場が発展し、また一般市民が新技術に費やす可処分所得が増えるに伴い、中国式のやり方を理解するテクノロジー企業はそうでない企業より有利な立場に立つことができる。政府の役割、そして製造業主体の労働力から多くの有能な技術者・科学者を含む労働力への移行と、その結果としての強力な設計能力を認識し、専用の資源を確保してそうした変化に対処する計画を立てなければならない。
2.大中華圏の影響
質問 (2):台湾の企業と専門技術が中国本土に移転し、「大中華圏」と呼ばれる市場を形成している。これが貴社の属する産業にどのような影響を及ぼしているか。
中国本土、香港、および台湾の集合である「大中華圏(グレーター・チャイナ)」は、産業専門家によると「強力な統合グループ」であり、中国での製品販売と事業経営を目指す米国企業にとっては、これも二重の影響を及ぼす要因となっている。10年前には、大規模なハイテク・メーカーが中国本土に進出することは考えられなかったが、現在は、さまざまな規模の企業が中国のWTO加盟を活用すべく中国内陸部に事業を移転している。
中国の張江では、25キロメートルの間にエレクトロニクス企業が70社存在する地域がある。この中には、台湾のチップメーカーの元幹部が経営する大手チップメーカー、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーションもある 。また、この地域には、サン・マイクロシステムズ、LG電子、ソニーをはじめテクノロジー企業数社の研究所があり、中国本土における貴重なハイテク頭脳の存在を示している。ゼネラル・エレクトリックも、妥当なコストで科学者を雇用できる可能性を認識し、研究者400人を擁する研究所をこの地域に設立しようとしている 。この地域を担当する同社のCEOダイ・ハイボは、さらにテクノロジー企業が進出してくるにつれて、この地域は「新竹とシリコンバレーを合わせたような地域になる」と語る 。
大中華圏の構想は1980年代から論じられていたが、中国のWTO加盟によってその実現が加速された。大中華圏がもたらした、過去に例を見ない政府介入の減少と、規制を巡る中国・香港政府関係者の協力によって、中国国内に新たな変化がもたらされ、その結果外国企業と中国との交流が進むことは間違いない 。
マイクロプロセッサー・ソリューションを供給するテンシリカ社のCEOクリス・ローウェンは、大中華圏の影響として次の2点を予測する。まず、大中華圏の創設によって「特にシステム・オン・チップ設計などの重要な技能、そして国際的な消費者市場および通信機器市場に関する知識に代表される市場分析能力が、中国にもたらされる」。次に、「知的所有権保護に関して、現行の中国の基準と国際基準とが融合される」とローウェンは予測する 。前者の結果として、中国市場に参入しようとする米国企業が、より公正な条件で競争できるようになることが考えられる。また後者の結果としては、中国企業が国外で正当性を獲得し、中国企業と競争する米国企業にとって条件が複雑化することが考えられる。
中国が情報技術製品の生産では台湾を抜いて世界第3位となったことからもわかるように、ハイテク産業における中国の影響力の増大によって、中国は正当な勢力として認識されるようになっている。台湾が依然として中国メーカーの生産高の70%を占めていることは、大中華圏内にまだ境界が残っていることを示している 。時と共にこうした境界が変わり、海外に出た中国人が母国に戻り、中国本土に移る台湾人が増えるに伴い、中国本土で発生した資本が中国にとどまるようになり、中国の経済発展を促し、外国企業にとってより教育水準の高い豊かな市場が出現する 。
3.中国本土における香港と台湾の成功
質問 (3):香港や台湾の企業が中国本土でも成功できると考えるか。
香港も大中華圏の一部ではあるが、本報告書作成のためにインタビューを受けた回答者の大半は、中国国内のハイテク産業においては、台湾の方が大きな役割を果たす可能性が高い、と述べた 。また、中国のWTO加盟によって、台湾も中国に劣らないほどの恩恵を得る可能性があるという 。回答者全員が、台湾は単に工場や資本を中国本土に移転しているだけでなく、台湾企業は大国であり協力的な隣国である中国に専門技術を成功裡に移転している、と述べた。中国が他の諸国との新たな関係に入った結果、関税が下がり、貿易・投資政策が緩和され、台湾のハイテク企業にとっては、中国本土への事業移転によって直ちに実現される利点が増えた 。多くの米国ハイテク企業が、ハイテク設計や契約生産で台湾に依存しているため、台湾・中国間の新たな関係は多大な関心の対象となっている。
台湾のハイテク企業の中国移転は、新しい傾向ではない。台湾企業は、製造コスト削減と最新式工場の建設スペース確保の機会を求めて、1990年代に中国へ移転を始めた。 マッキンゼー・アンド・カンパニーのアナリストらによると、台湾企業による投資は「上げ潮」である。同社の予測では、2001年から2006年までに、台湾のエレクトロニクス企業の台湾国内における設備投資は、複利年率13%で減少する。逆に、これらの企業の中国国内における設備投資は、複利年率32%で増加するとされている 。
この根本的な変化と、中国のWTO加盟がもたらした関税引き下げとによって、大中華圏の流通経路およびサプライチェーンの効率性向上への投資が実現する可能性が高い 。こうした効率性向上によって達成されるコスト削減は、米国のハイテク企業に移行され、米国企業は、最もコスト効率の高いハイテク供給者として台湾に、そしていずれは中国に注目するようになる。
台湾は長年にわたり対中投資に注目してきたが、政府の厳しい規制が両者の関係を制限していた 。台湾と中国が共にWTO加盟国となった今、両者共にWTOの規則を順守しなければならず、対外投資に関するこうした政府の規制は撤廃されなければならない。その結果、台湾企業とその設計・工学の専門技術の中国本土移転が促進される。
このような台湾の能力の流入を中国企業は歓迎するはずである。アジア・パシフィック・ベンチャーズ社のブライアン・バーンズ副社長が述べるように、「台湾が10年前に成功を収めた分野が、今中国の得意分野となっている。」台湾企業が中国本土へ移転する場合、企業幹部も共に移る場合が多いため、中国を強力な製造・設計の勢力に育てる過程は、台湾での成功を反復することになる 。
4.中国での事業経営
質問 (4):貴社は、中国での事業経営において、他のアジア諸国での場合に比べて、多くの困難に直面していると思うか。また中国で直面している困難の中で、貴社の属する産業に独自のものは何か。
中国と他のアジア諸国との相違または中国独特の難題
他のアジア諸国と異なり、中国はまだ外国との関わり方を模索している段階にある。また、他のアジア諸国は、基本的には自国の得意分野を考慮した行動をとっているが、中国はまだ、自国の得意分野が何であるか、また複数の行動の選択肢があるのかどうかを判断しようとしている段階にある 。一例を挙げると、中国は低コストの製造業労働力を持つが、中国の優位性は製造業だけにとどまらない。中国本土にとどまる技術者・科学者、あるいは国外から帰国する技術者・科学者が増えているため、中国の競争力は設計・革新の分野にも及びつつある。
中国がまだ十分に自国の力を発揮できていない背景には、2つの要因がある。まず、政府指導層の交代によって競争市場への参入が遅れていること、2番目に中国実業界の指導者の間で、中国をどのように位置付けるべきかについてさまざまな野心が衝突していることである 。前者は、既存の資源を活用するための組織を構築するには時間がかかることを示している。しかしながら、中国が共産党に支配されてはいるが、歴史的には資本主義的な性質の国であることが、こうしたプロセスの加速に役立つと思われる 。
後者の要因は、実業界の有力な指導者らがコンセンサスに到達しなければならないこと、または中国は複数の得意分野で競争力を発揮する可能性があることを示している。この2つの選択肢の中では後者の方が可能性が高いと思われる。中国の最も価値ある資源が何であるかについて対立する意見を持つさまざまな指導者が同意に達するとは考えにくいからである 。
中国と他のアジア諸国の発展段階が異なることに加え、政府と民間部門との関わり方の相違も、米国テクノロジー企業の可能性に影響を及ぼす。他のアジア諸国が、税制や関税を通じて国内企業を保護しているのに対し、最近WTOに加盟したばかりの中国には、まだ明確かつ広範な制度がない 。中国政府は自国企業を保護しているが、その手段は主として政府補助金や法案である。WTO加盟によって、中国は国内企業に関してより厳しい規制の導入を要求される。これは、米国のテクノロジー企業にとっては、より明確な可能性につながるはずである。また、中国は他のほとんどの諸国に比べて技術開発が遅れているため、中国政府は外国企業を歓迎することによって自国が大きく前進できることを認識している 。
特定産業における中国の発展を巡る具体的な課題
低コストの労働力をほぼ無尽蔵に備え、人口は増加を続け、国民は新しい技術を受け入れると共に可処分所得を増やし、さらに工場や開発施設建設のためのスペースも豊富な中国という国は、各種産業に多くの可能性を提供している。従来台湾で強いチップ製造業が、中国本土にも進出しており、今後も進出を続けると思われる。中国の既存の無線ネットワークは、無線通信事業者や電気通信会社に機会を提供する。中国本土でチップメーカーが早期に成功を収め、台湾のビジネスマンが移転してくるに伴って、資本も流入し、これが一般市民にも影響し、ハイテク消費財メーカーにとっては製品販売の機会となる 。不動産コストの上昇と経済の停滞のため消費者・企業共に可処分所得が下がっている米国では存続できない中小テクノロジー企業も、発展する中国市場では低コストで設計・通信分野の労働力を確保することができる 。既存のソフトウェア会社は、海外に出ていた中国人が帰国する動きを利用して、発展するハイテク地域にデザイン・センターを設立することができる 。
しかしながら、こうした企業が、変動する中国市場で生存するには、「根気と忍耐力と賢明な長期的戦略」がなければならない 。中国が政府の管理する国家から市場主導の国家へと転換する中で、外国企業はそうした変化に付き物のたどたどしいペースに合わせて、常に調整をしていかなければならない 。中国および台湾出身の社長を通じて、まさにそれを成し遂げているのが、UTスターコム社である。
無線通信産業においては、中国市場が、従来の電話線ではなく、それに変わる無線インフラの開発に積極的だったため、UTスターコムが中小市場に参入し、革新を通じて顧客ベースを広げることができた。同社は米国に本社を置く企業であるが、総収益の85%を中国からの収益が占めており、総収益は1997年の7,600万ドルから、2002年には9億2,500万ドルに達すると見込まれている 。また、UTスターコムの社員は大半が中国で雇用されており、同社にとってはコスト面での利点となっている。
中国および台湾出身の企業幹部がいるために、同社が中国市場での成功が市場での交渉能力にかかっていることを認識できたことは間違いない。現地の電気通信事業者との緊密なつながりを通じて、同社は事実上、現地企業として機能することができたため、他の外国企業に比べて有利な立場に立った。ノーテル・ネットワークス・チャイナ社の社長兼CEO、ロバート・マオによると、「(他の)外国企業にとっては、現地の通信事業者にどれだけベンダー融資を提供できるかが、競争上の主要因となった。」 UTスターコムは、現地企業とのつながりを利用して、この付加的なリスクなしで競争することができたため、エリクソン、モトローラ、ノーテル・ネットワークスなどの先発企業に対しても優位に立てた。
USスターコムは、地域無線ネットワーク構築の許可を政府に申請し、当時中国で唯一の電話会社だったチャイナ・テレコムと提携することによって、「リトル・スマート」を設立した。これは、従来の銅線技術と無線技術を融合した地域無線ネットワークで、現在では、価格に敏感なユーザー1,000万人の顧客ベースを有している。しかしながら、同社幹部は、より大きく、より豊かな都心部市場への進出を制限する政府の規制が、同社の成長を限定していることを認識している 。
USスターコムの例は、テクノロジー企業が中国市場でどう行動すべきかを示す重要な例である。外国企業は、組織の各層に中国人および台湾人の管理職者を導入することによって、実現しにくいが必要なコネクションを得て、事業の成功につなげることができる 。また、中国企業の多くは中国政府から多額の援助を受けているため、テクノロジー企業は、政府の容認を得るためには、自社の戦略を既存の中国企業と融合させる斬新な方法を考えなければならない 。
このように、ワイヤレスおよび電気通信市場では、米国企業が、困難な中国市場で事業の確立を実現させた興味深い例があるが、 他の米国テクノロジー企業も、中国の事業および消費者人口の経済的な強化に支えられて成功できる可能性がある。台湾企業が中国本土へ移転するに伴って流入する資本が、企業や消費者に情報技術を販売する企業にとっては新たな機会を提供する。そうした企業のある上級技術コンサルタントは、「中国では概して西側の製品に対する需要は大きい。また大勢の国民が資源流入の恩恵を受けるようになるに伴い、可処分所得が上昇し、(技術供給)業界にとっては多大な機会となる」と述べている。
中国の人的資源も、他のテクノロジー企業および産業に機会を提供する。前述のように、ベンチャーキャピタル企業のクリスタル・ベンチャーズは、破たんした米国のテクノロジー企業が中国の現地企業へ転換するための資金提供を計画している。こうした企業は、中国の豊富な設計者・科学者の労働力を活用することによって、コストを削減し、革新的かつ技術的に進んだ製品・サービスを生産することができる。各企業は、強化される中国経済の中で自らを確立すべく、大規模なデザイン・センターや研究所を建設している。
最後に、米国のチップメーカーは、中国本土に移転する台湾企業からの強力な競争に直面しているため、この商品産業でコスト効率を高めることを余儀なくされている。インテルのCEOクレイグ・バレットは、特に世界経済が低迷する中で競争が激化していることを認め、次のように語っている。「世界中どこでも、商品産業で利益を上げることは難しい。」 しかしながら、中国本土へ移転する台湾企業がコストを削減することができ、台湾が引き続き純輸出国であるならば、米国企業もコスト削減の手段を探さなければならない。中国人が海外から本国へ戻る傾向が今後も続き、中国の大学を卒業する技術者・科学者も同様に増え続けるとすれば、米国のチップメーカーは、中国を事業に活用する方法を見つけなければならない 。バレットは、中国には「物理的インフラと教育インフラがあるほか、(チップ製造)技術を誘致するための政府の支援がある」と語る 。バレットによると、インテルが中国に組立工場と試験施設は持つが製造施設を置いていない理由は、米国政府の輸出禁止措置である。次項では、こうした禁止措置の影響について述べる。
5.米国政府の禁止措置の果たす役割
質問 (5):米国政府が、最新式の設備またはプロセス技術の対中輸出を禁止しているにもかかわらず、中国では米国のベンチャーキャピタルや外資直接投資が増えている。また、中国のベンチャーキャピタル(VC)事業も発展しており、VC団体に所属するVC企業が増えている。米国政府の禁止措置は、単に米国企業の利益の可能性をなくしているだけだろうか。貴社が中国を投資機会と見なしているならば、米国政府の禁止措置についてどう思うか。
中国軍が米国の開発した技術を弾頭試験装置やパラサイト衛星などの先端兵器製造に利用する可能性を最小化するために、米国政府は、いくつかの対中輸出禁止措置をとっている 。米中の合弁事業が失敗した後に、米国の技術が中国軍の手に渡る例が多く見られ、最も顕著な例としては、マクダネル・ダグラスが合弁事業から撤退した後、同社の機械がミサイル工場で発見されている 。最近では、ボーイング社とヒューズ・エレクトリック・コーポレーションが、両社が「中国政府に技術援助を提供し・・・衛星に関する詳細な技術データを移転することによって、輸出管理法に違反した」との米国務省による申立を受け、2003年3月、3,200万ドルで和解することに同意した 。
米国政府の禁止措置は、最先端の回路技術その他独自の技術を使った米国製機械を中国企業が購入することを禁止することによって、中国での知的所有権侵害行為を防ぐことも目的としている。こうした禁止措置にもかかわらず、中国ではベンチャーキャピタル事業や外資直接投資が増加を続けている。禁止措置は、単にこうした事業や投資の中国本土における形態を変化させているだけであり、中国企業にとっては、有力な米国の競争力が不在の中国で利用可能な資源を活用する新たな機会となっている。
中国のベンチャーキャピタル事業
中国と外国のベンチャーキャピタル企業はいずれも、中国市場の成長の可能性を活用しようとしている。中国が国際ビジネス社会においてどのような位置を占めることを目指すかが不確実であるため、さまざまな種類の企業にとって可能性が開かれている 。2002年7月、ベンチャーキャピタル企業50社(管理資本総額400億ドル)が、中国ベンチャーキャピタル事業協会を設立した 。国内および国際企業から成る同協会は、中国本土における成長に正当性を加えるものである。会員企業の約3分の1は国内企業、3分の2は国際企業で、国際企業の数が国内企業を上回るが、国内企業は国内でのコネ活用の力を持つため、両者の関係はより同等なものとなっている 。
中国は、米国のベンチャーキャピタル企業にとって大きな可能性を持つ市場であるが、成功への道には「2つの重大な障害」 がある。第1に、外国企業は、「外国人投資家は中国人と合弁事業を設立しなければならず、また資本の25%以上を出さなければならない」とする中国独自の法律に従うため、通常のベンチャーキャピタル事業の慣行を変えなければならない 。この規則の目的は、国内企業とベンチャーキャピタル関係を結ぶ企業が真剣に事業に取り組むようにすることであると思われる。第2に、中国の規制構造のため、ベンチャーキャピタル事業が、新規株式公募あるいは株式公募という従来他の市場で使われてきた手段で投資の利益を得ることが「ほぼ不可能である」 。中国政府は、市場におけるテクノロジー企業の存在価値を認識し始めているが、変動の激しいハイテク企業を証券取引所に正式に迎え入れるには至っていない。したがって、中国でベンチャーキャピタル事業から撤退する方法としては、事業を国際企業に売却する方法が最も妥当である。これは従来の方法とは異なるため、多くの米国のベンチャーキャピタル企業には、そのための能力も人脈もない 。
中国における外資直接投資
中国のWTO加盟と、同国の経済成長に刺激されて、対中外資直接投資は目覚ましいペースで増加している。2002年の外資直接投資総額は、2001年に比べて12.5%増の527億ドルとなった。外資投資による企業数は、2002年に30.7%増加した 。
こうした外資直接投資の流入は、「世界が中国市場を重視していることを表し」 、また企業が中国の比較的安価な労働力や資源を利用することを可能にする。このような労働力や資源の利用は、「中国市場の巨大な可能性を開く」 はずであり、中国のインフラおよび政策環境が改善を続けるに伴い、対中外資直接投資は増加を続けるはずである 。
前述のように、中国政府は、外資投資と中国との関係において極めて重要な役割を果たしている。テクノロジー産業は、過去に中国で事業関係を確立しようとした外国企業が直面した障害を検討し、そこから学ばなければならない。中国の官民の指導層が国内にテクノロジー企業を設立しようとする内部からの意志を利用することによって、テクノロジー産業は、外資直接投資の力を借りて中国国内に健全な基盤を築くことができる 。
前述の通り、ハイテク産業は、過去の例とは異なり、中国での事業運営および中国との事業運営に対する開発支援を中国国内で受けている。米国ハイテク企業は、一般製造企業の体験を将来への指針とし、中国での事業運営の方法を学ぶべきである。そうすることによって、今後、時と共に成功が達成できる 。
禁止措置が米国企業の収益予想に及ぼす影響
輸出禁止措置の悪影響を受けているのは、業界に新たに参入するため、最新式の設備を購入して製造を開始するという選択肢を持つ中国企業であると思われる 。一例を挙げると、上海のチップメーカー、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーションは、禁止措置のために、「最高のサーキットラインを持つチップを製造する」米国製機械を購入することができない。したがって同社は、別のチップ製造法を探さなければならない。同社の事業開発担当シニア・ディレクターのJoseph Xieによると、これは「より困難であるが、実行可能である」という 。
こうした米国政府の禁止措置は、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーションのような企業の発展を減速させることによって、コストを増大させている。中国のWTO加盟の結果、中国が半導体チップ輸出において、より強力な役割を果たすようになるに伴い、こうしたコストを電子製品産業が吸収しなければならず、最終的には消費者の負担となる 。禁止措置は、その悪影響を受ける企業の収益をなくし、小売価格を引き上げ、それを世界中の消費者が吸収することになる 。
米国政府の輸出禁止措置は、中国国内の企業に悪影響を及ぼすだけでなく、米国の企業が、比較的安価で豊富な中国の人的資本を活用する能力をも妨げる 。インテルのような企業にとっては、禁止措置による制限によって、効果的な競争の能力が低下する。同社のCEOクレイグ・バレットは、「われわれは最新式の工場しか建設しないが、制限のため、最新の設備やプロセス技術を中国に輸出することができない」と語る 。
先端工場を設計・建設する専門技術を有する台湾人経営の企業は、中国本土へ移転することによって、そうした最新式施設に伴うコストを削減する。一方、米国企業は、競争力を維持するために自らの収益性を下げることを余儀なくされる。テンシリカのCEOクリス・ローウェンは、「長期的には、先端『ディープ・サブミクロン』シリコン製造の輸出制限は(テンシリカの)可能性を制限することになり得る」と言う。
中国では、知的所有権侵害が引き続き大きな問題であるが、そうした侵害活動の最小化を目的とする輸出禁止が、その目的達成にほとんど貢献していない、というのがほぼ一致した見方である。さらに、ソフトウェア、設計、製造等の事業の正当性が増すに伴い、あからさまな知的所有権侵害は減っており、また分解模倣は中国だけに限られた行為ではない。輸出禁止措置は、知的所有権侵害の抑制という意図を達成しておらず、実際には中国の新事業の発展を遅らせると共に、中国国内の労働・技術を活用しようとする米国企業の収益の可能性をなくしている。
6.中国における広範な知的所有権侵害活動
質問 (6):知的所有権侵害は、中国に関連してよく挙げられる問題であり、米国政府の輸出禁止措置の基本的な理由となっている。中国では、米国その他の諸国に比べて知的所有権侵害がより広範な問題であると思うか。
一部の米国企業幹部は、中国の知的所有権侵害の問題は、他の開発途上国に比べて特に広範ではない、と述べているが、一方、これは深刻な問題であり、政府の対応は理解できる、との意見もあった。しかしながら、禁止措置の本来の目的を理解する、とした回答者も、禁止措置による知的所有権侵害の抑制効果には疑問を呈した。
アジア・パシフィック・ベンチャーズ社のブライアン・バーンズ副社長によると、彼の調査では、中国における知的所有権侵害発生率は90%以上で、「ある程度の規模を持つ国の中では最高」である 。中国は、まだ正当な事業経営の場として発展途中であり、政府の影響が薄れつつあるため、今後時と共にこの発生率は改善されるはずである 。技術コンサルタントのジョン・ライトは、第2次世界大戦後の日本と韓国でも、知的所有権侵害が同様の規模の問題となっていたが、「国際通信や技術を駆使する経済においては(知的所有権侵害の)問題が目につきやすくなる」、と仮定する 。
また、他の国々でも発展途上においては同様に知的所有権侵害の問題が存在したという見方もできるが、今日の事業社会の性質上、技術知識のある人々がソフトウェアの盗作をする機会が増えていると共に、規制機関や企業がそうした盗作を発見する機会も増えている 。さらに、中国企業が知的所有権侵害行為によって利益を得ているという事実が、新しい技術(特にソフトウェア)への中国のアクセスを制限する追加的な根拠となる。
一部の業界専門家は、中国における知的所有権侵害発生率の高さの理由として、知的所有権に対する理解の欠如と、中国政府が技術産業を支援してきた背景を挙げている 。サン・マイクロシステムズ等の企業が研究所を移転していることが示すように、中国国内でソフトウェア産業の受容度が高まるに従い、過去に知的所有権侵害を実行する技術を持っていた者が、ソフトウェア自体の価値を認識するようになる。これらの専門家の予測では、認識の変化に伴い、また中国政府自体の内部で知的所有権侵害が抑制されるに伴い、中国の知的所有権侵害発生率は低下する 。
こうした予測に鑑み、米国政府および業界専門家の、知的所有権侵害に対する恐怖心は、誇張されたものと言えるかもしれない。知的所有権侵害が米国企業に及ぼす影響を抑制するために米国政府が取った輸出禁止措置は、そうした米国企業を大きな危険にさらす。知的所有権侵害に対する恐怖心は、これらの米国企業が中国に施設を設立し、中国の資源を活用する能力を制限することによって、米国テクノロジー企業の競争力を低下させる 。
7.米国企業における中国人人材
質問 (7):貴社では、製品設計の分野で、どの程度活発に中国人の人材を開拓しているか。プロセス設計、研究、開発の各分野ではどうか。
米国企業における中国人技術系社員採用の実態
中国は、米国のテクノロジー企業に、さまざまな人的資本を提供する。 ほぼ無尽蔵と思われる中国本土の製造業労働力の存在が、米国企業にとっては工場設立の機会となっていることに加えて、米国内の施設で中国人の技術系の人材を積極的に雇用する企業も多い。ほとんどの企業は技術部門で中国人を採用しているが、海外へ出る中国人の中には、技術系の能力を入社の手段とした後、米国の企業内で管理職としてのキャリアを積む者も多い 。これは、米国のテクノロジー企業が将来中国に設計施設を確立しようとする場合に、社内で育成した中国人管理職を彼らの母国に配置する可能性につながる 。
現在、米国のテクノロジー企業は、プロセス設計より製品設計や研究開発の分野で中国人技術者を採用しているようであるが、これは主として市場における技術者の専門分野の比率に基づく現象であると思われる 。例えば研究開発スタッフの何%は中国人とすべき、という「目標」を設定している企業も数社あるが、このことは、多くの企業が中国を貴重な人的資本の供給源と見なしていることを示している。現在、米国の労働力の中では、研究開発分野の技術者が非常に多く、製品設計がこれに続いているが、多くの企業の意見では、中国の教育制度は設計分野の課程を強化・開発しているため設計技術者を多く育成しており、米国テクノロジー企業内の構成も今後変わっていく可能性が高い 。
8.中国で教育を受けた技術者・科学者の増加
質問 (8):毎年、中国で教育を受けた技術者・科学者が増加している中で、中国企業が単なる製造業から設計の分野へと移行していることに、どのような脅威を感じているか。
製造から設計への移行
本報告書でも数カ所で言及されている通り、中国には、膨大な、ほぼ無尽蔵の、かつ拡大する人的資本の基盤が存在し、中国企業と米国企業の両方に機会を提供している。中国のエリート校だけでも、技術・科学分野の年間卒業者数は、米国全体の同分野の卒業者数を上回る 。こうした技術知識を持つビジネスマン中間層は、業界専門家によると「実際的、野心的、勤勉で、教育程度が高く、毛沢東革命の影響を受けていない新しいグループ」であり、現在、中国企業の上級指導層の一部となりつつある 。
このグループは、海外から中国に戻り、自分の会社を設立したり、既存企業の高級幹部としてキャリアを完了しようとしている中国人の一団を補完する存在である 。2002年3月に開催されたシリコンバレー中国人技術者協会の会議のトピックは、中国のワイヤレス産業においていかに「米国の専門知識と台湾のハイテク体験を融合する」か、というものだった 。
こうした動きは、中国で生まれ中国で教育を受けた専門職者の増加と相まって、米国テクノロジー企業にとっては、機会となると同時に脅威ともなる。前述の米国政府による輸出禁止措置が解除または改正されて、米国企業が中国本土に設計・製造工場を設立できるようになれば、これらの企業はこうした優秀な人的資本を利用する機会を与えられる 。
一方、たとえ禁止措置が解除されたとしても、米国で専門職経験を積んで母国に戻る中国人の多くは、自ら事業を設立することを目指す 。中国で企業に入社する帰国者の場合も、台湾人および中国人経営の企業が増えているため、どの企業に入るか選択の幅が広がる。そして、帰国者のうちかなり多くが、選択の余地があれば台湾および中国系企業で働くことを選ぶのではないかと思われる 。
同様に、米国政府の禁止措置が続いた場合には、米国テクノロジー企業が中国に工場を設立しようとすると、旧式の工場しか建てられず、効果的に競争できないため、米国企業が中国での製造施設立地を見合わせる可能性が高い 。しかしながら、台湾および中国系の企業は、貴重な人的資本を利用することができ、その結果コストを削減できる。そして、価格を下げてコスト削減を顧客に還元することによって米国との競争力を高めるか、あるいは米国企業の製品と同等の価格を維持することによって、価格に柔軟性を持たせつつマージンを増やすことができる 。いずれにしても、米国テクノロジー企業にとっては不利な状況となる。
中国が、米国ハイテク企業にとって極めて価値のある人的資本を提供することは事実であるが、米国政府の禁止措置は、そうした価値を活用する際の障壁となる。海外から戻った中国人が自分の会社を設立したり、国内企業の経営陣に参加する傾向に加えて、中国で教育を受け、専門職として中国にとどまる技術者・科学者が増えているため、専門知識を持つ中国人の米国離れは、今後効果的な競争の妨げとなる。
9.中国vs.シリコンバレー:公正な戦いか?
質問 (9):新しい中国企業が、設計の分野で、シリコンバレーの確立された企業と直接競争できると思うか。
科学技術の専門知識を持つ人材が中国の労働市場および企業に浸透するに従い、中国とシリコンバレー同士の挑戦が白熱化する 。シリコンバレーにとって、中国はチップ設計の分野で優勢となる可能性を持つ最大の脅威であることは、広く認識されているが、問題は、その脅威がどの程度正当なものであるか、またいつ頃実現するのか、という点である。
新興の中国企業と、確立されたシリコンバレー企業との対決をおそらく最も端的に物語る例が、シスコ・システムズ社とノーテル・ネットワークス社に対する、ネットワーク設備メーカー、Huawei(華為)Technologies Companyの追い上げである 。華為は、1万人もの研究開発スタッフをそろえ、「主にシスコ、ノーテル製品の高信頼性、低コストの模倣品を販売することによって」この両社に「迅速に追いつく」ことを目指している 。ヨーロッパでは、華為製品はシスコ製品より4割以上も安く 、世界経済の停滞によって価格に敏感になっている買い手にとっては、シリコンバレー企業の製品からの切替を促す要因となっている。
華為は、元人民解放軍将校が設立した企業で、中国政府に幅広い人脈を持ち、シスコにとっては単なる価格競争を超えた強力な競合である。2002年末にシスコは、中国の大手電気通信事業2社にルーターを供給する契約を結んだ。シスコは、変わりやすく不確実な中国市場でその位置を保つために、コスト以外にも優位性を持つ華為との間に、ある程度良好な関係を維持しなければならない 。
この両社の関係は正統的なものではなく、現時点ではおそらく華為の方に有利な関係であるが、シスコは持続可能な経営と戦略開発の経験を通じて、いずれは同等の立場に立つ可能性がある 。現在、華為は、低コスト、低価格のネットワークウェア・メーカーとして知名度を上げつつある。しかしながら同社は、研究開発予算を2002年の3億4,200万ドルから、組織的に拡大していくことを目指している 。こうした追加コストは、何らかの形で消費者に転嫁されなければならない。また、同社は現在、価格を売り物としているが、今後同社が革新と技術のリーダーを目指す際に、このイメージを変えることができない可能性もある。
コストの華為、経験のシスコという、両社の対立する得意分野は、中国とシリコンバレーの間に生じた競争をいみじくも体現するものである。中国の企業は、「知的所有権をほとんど持たず、産業のパラダイムを変えるような革新もない」が、国内に存在する価値ある技術者・科学者群をほぼ独占的に利用することができる 。米国企業は、最新の技術と革新を顧客に提供することができるが、その価格は高い 。産業内で方向性を決定する指導者達が自らをどのように位置付けるかが、今後の関係の発展に重要な役割を果たす。中国企業が、入手可能な人的資本を活用して、実際に革新を生むことができ、一方シリコンバレーの企業が中国に移転して同様のことを実行することができないならば、中国企業が米国企業を抑えて浮上すると思われる 。
10.中国企業による米国人幹部の採用
質問 (10):中国の企業が、工場や設計部門の効率的な運営のために、米国企業から経営の専門知識を持つ幹部を採用するかもしれない、という脅威には、どの程度信憑性があると思うか。
米国のテクノロジー企業への影響
アンケート調査の回答者全員が、中国企業による米国人管理職採用は脅威ではないが、ひとつの傾向ではある、と回答した 。米国企業内で管理職の階段を上っていく中国人社員が増えていることに加えて、海外から中国本土に帰国する中国人が会社を興したり、発展する台湾人経営の中国企業に入社する傾向があることが、米国企業にとっては確実かつ強力な脅威となる 。
前述の2002年シリコンバレー中国人技術者協会会議が示すように、このような米国での専門職体験と台湾の技術体験の組み合わせは、中国人の技術分野の人材が認識しつつあるトレンドであり、企業内の他の中国人社員にとっては、経営体験を各自のキャリアに取り込む動機となっている。経営陣の一員として成長し認められた社員は、中国に戻り、中国の指導層との人脈を利用して事業の成長を促進するための独自の知識を活用することができる 。ほとんどの組織は、中国での事業では社内に中国人管理職を置くことによって、中国本土での事業成功の可能性が高まることを認識しており、厳しい事業環境の中で収益性を達成するには、そうした人材の採用が最重要事項となる 。
中国人管理職の人材が中国に戻ることは、「中国の・・・製造施設が(米国の施設)と同様のレイアウトや運営方法を採用する、ということではない。そうした施設の構造や運営は、資源のコストおよび入手可能性によって決定される。」 このような意見は、海外に出た中国人が中国本土への帰国を希望していることを米国企業が認識すべきであること、そして米国企業が中国で現地に合わせた事業を設立する際に、そうした中国人が現地市場について情報を提供できることを示している。
11.中国は米国企業にとって新たな機会か、それとも脅威か
質問 (11):中国は米国企業にとって新たな機会かそれとも脅威だと思うか。
脅威
質問 (11-A):脅威だと思う場合、現実的に考えて、米国企業への影響はいつ頃出ると思うか。これはどの程度の脅威だと思うか。特定の産業または副産業にとって、特に脅威だと思うか。
中国におけるベンチャーキャピタル事業や外資直接投資の増加が示すように、中国企業は、米国ハイテク企業にとって、直ちに強力な脅威となる 。華為のように、模倣しやすい低価格の製品・サービスを提供して米国企業をターゲットとする企業の数が増えるに従い、米国ハイテク企業への影響が、引き続き米国企業の収益性を損なう 。
また、中国からの新たな競合と共にこうした製品の価格が下がり、中国に研究・生産ベースを置く企業に比べてコストの高い米国企業は悪影響を受ける一方で、中国企業は、中国で教育を受けた技術者・科学者を活用して革新力を高めるはずである 。
今後、米国のハイテク産業の大半は、中国からの競争の圧力を感じることになる 。しかしながら、中国の産業の中でも、ソフトウェアなど一部の産業は、中国政府の支援を受けて、米国企業にとってはより差し迫った脅威となる 。
さらに、前述のように、技術的にあまり複雑な機械や知識を必要とせず、模倣しやすい製品・サービスを提供する産業は、より複雑な、専有知識を集約した産業に比べると、早期に影響を受けることになる。また、中国が最近の指導層の下で先進的な政策策定をするようになると、新たな知的所有権保護法が、あらゆる産業に対する脅威の緩和に貢献する 。
機会
質問 (11-B):機会だと思う場合、その規模はどの程度だと思うか。どのような企業もこの機会を活用できるか。特定の産業または副産業にとって、特に大きな機会となると思うか。
中国が米国ハイテク産業にとって直ちに脅威となるのと同様、中国の資源や市場も直ちに機会を提供する。アンケート回答者は全員、巨大な購買力を持つ中国市場の規模の大きさと、停滞する世界経済の中での成長の可能性を認識している。
しかしながら、中国経済がまだ発展途中であることから、米国のハイテク企業が中国市場の恩恵を受けられる時期については慎重な意見もあった 。これらの産業関係者は、中国市場を顧客ベースとして中国に進出する事業の成功は、中国経済が「世界経済における同国の存在に合った成長のペースを維持する」能力にかかっている、と考えている 。
また、中国の顧客ベースが提供する機会に加えて、特に中国で教育を受けた技術者・科学者の増加といった資源面での機会は、企業が米国の先進技術を提供できなければ価値がない。現在は、米国政府の輸出禁止措置によって、それができないため、中国でこうした科学者や技術者を雇うことによって得られるコスト削減の可能性は限られている 。
中国が米国ハイテク企業にもたらす脅威の場合と同様、ハイテク産業の大半は、中国がもたらす機会の影響を受ける。どの産業も、中国市場を製品販売のための豊かな市場と見なしているが、産業によって、資源の活用のしかたは異なってくる。一部の産業にとっては、中国の最大の価値は、広大なスペースと、比較的安価で豊富な製造業労働力である。別の産業は、増加する中国人技術者・科学者群の中にいる設計部門の人材に最大の価値を見出す。また、中国人管理職が地域社会や政府内に持つ人脈に価値を見出す産業もある 。
中国独自の特徴としては、外国企業にさまざまな機会を提供できる点が挙げられる。ほとんどの国は、例えばメキシコならば低コストの製造業労働力というように、他と比較してひとつ抜きんでた利点を提供するが、中国の場合はまもなく各種の利点を提供できるようになる。この独自の特徴は、米国のほとんどのハイテク産業にとって、より大きく、より幅広い機会につながる 。
おわりに
ナポレオンは、「中国が目を覚ませば世界を揺り動かすだろう」と予言したと言われる。中国経済は、全身が完全に目を覚ますにはまだ多少時間がかかるかもしれないが、長い眠りから覚めたことは間違いなさそうだ。
日本から中国を見ていると、どうしても製造業の競争力を生むその無尽蔵で安価な労働力にばかり目を奪われがちになるが、米国のITを始めとするハイテク産業界から中国を見ると、少し違った見え方をしていることに気がつく。その背景として、次の二つの点を認識しておく必要がありそうだ。一つは、米国ハイテク産業界にとって協力相手であると同時に強力な競争相手になっている台湾のハイテク産業との関係の将来展望に中国が大きな影響を及ぼす(中国の「機会」を活用するにあたり台湾が米国よりも圧倒的に有利な立場にある)ということであり、もう一つは、米国のハイテク産業自身が米国内でも既に中国系の人材を多数抱えていて(人材戦略上意図的に一定規模の中国系人材を雇用している企業があることは知りませんでした)技術面・経営面で彼らに大きく依存しており、こうした中国系人材の流出が中国の「脅威」を助長しているということである。
これら「台湾問題」や「中国系人材流出問題」からも窺えるように、米国のハイテク産業にとって中国との関係は単純な構図で語ることの出来るようなものではないようだ。米国政府の先端設備・技術の対中国輸出禁止措置は、「国対国」としての中国の脅威に対抗するため米国政府が採り得る措置としては理解できるのであるが、ハイテク産業界にはその効果を疑問視する声がある。結局、米国のハイテク産業は、中国が将来的に「脅威」になることが避けられないことを認識しつつも、その脅威を上回る「機会」が中国にあると見て、中国戦略を模索しているということであろうか。
さて、日本は...。
(了)
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本稿に対する御質問、御意見、御要望がございましたら、Ryohei_Arata@jetro.go.jpまでお願いします。
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