
【 2003年5月号 】
〜 「米国における電子政府関連政策の動向」(その1) 〜
JEITAニューヨーク駐在 荒 田 良 平
|
はじめに
今月と来月で、久しぶりに米国における電子政府関連政策の動向について取り上げる。
電子政府関連政策については、約1年半前の2001年8月にも取り上げたが、当時はまだブッシュ政権誕生後間もなかったため、“新政権路線”が十分には機能していなかった。しかしその後、ブッシュ政権の「行政改革大綱」とでも呼ぶべき「大統領マネジメント・アジェンダ」における主要対策の一つに電子政府が位置づけられ、また2002年12月には電子政府推進体制や電子政府基金の法律的根拠を確かなものにする「2002年電子政府法」が成立しており、連邦政府における電子政府の責任者であるMark Forman氏のもとで、ブッシュ政権としての特徴を明確にした様々な電子政府イニシアティブが着々と推進されてきている。
電子政府と一口に言っても、既に連邦・州・地方政府の各機関で広く様々な取組みが行われているのであるが、本稿ではこの1年半の電子政府の進捗状況に関して、今月は連邦政府の電子政府戦略の全体像について取り上げ、来月はエンタープライズ・アーキテクチャ、電子認証、Linuxなどのトピックスについてご紹介することとしたい。
1.米国連邦政府の電子政府推進の全体動向
(1) ブッシュ政権における電子政府の基本的考え方 〜「大統領マネジメント・アジェンダ」
2001年に発足したブッシュ政権は、2001年8月の本駐在員報告でも触れたように、前政権下における電子政府に関する広範な取組みを踏まえながら、Mark Forman氏の実質的連邦CIO(Chief Information Officer)への任命、省庁横断型の電子政府イニシアティブを支援する「電子政府基金」の創設といった新しい取組みを打ち出した。
ブッシュ政権は2001年2月末の大統領予算教書で、「行政改革」の部で「国民中心の(Citizen-Centered)政府の実現」のための方策として電子政府基金の創設を打ち出していた。こうしたブッシュ政権における電子政府に対する取組みの基本的考え方は、その後2001年8月25日に公表された「大統領マネジメント・アジェンダ(The President’s Management Agenda)」において一層明確化されることとなった。
ブッシュ政権における「行政改革大綱」とでも呼ぶべきこの「大統領マネジメント・アジェンダ」は、行政改革のための政府全体に関わる5つの対策として、「人的資本の戦略的マネジメント」、「民間サービスとの競争」、「財務執行の改善」、「予算と成果の統合」と並んで「電子政府の拡充」を掲げている。(図表1)
図表1 行政改革のための政府全体に関わる5つの対策
- 人的資本の戦略的マネジメント(Strategic Management of Human Capital)
- 民間サービスとの競争(Competitive Sourcing)
- 財務執行の改善(Improved Financial Performance)
- 電子政府の拡充(Expanded Electronic Government)
- 予算と成果の統合(Budget and Performance Integration)
|
(出展: 「大統領マネジメント・アジェンダ」)
すなわち、ブッシュ政権における電子政府とは、行政改革によって「国民中心の(Citizen-centered)」、「結果重視の(Results-oriented)」、「市場原理に基づいた(Market-based)」政府を実現するための主要な方策の一つという位置付けなのである。
大統領マネジメント・アジェンダにおける電子政府に関する記述は、ブッシュ政権の電子政府に対する発想の仕方をよく物語っているので、以下にその概要を紹介しておくこととする。
◆ 問題点 ◆
連邦政府は世界最大のIT消費者。ITは民間部門の生産性向上に40%寄与したのに、2002年にITに450億ドルも費やす米国政府の労働者の生産性に目立った向上が見られない。少なくとも4つの問題点がある。
- 政府機関はITシステムを通常、国民のニーズではなく自らのニーズに役立つかどうかで評価。
- 政府機関は1990年代に、ITを新しくより効率的なソリューションの創出のためではなく既存のプロセスの自動化のために使用。
- ITは時代遅れの縦割りの官僚組織を壊す機会を提供するが、不幸にも政府機関はしばしばこれを脅威ととらえ、とうの昔にその目的を失っている指揮系統を維持するために無駄で重複した投資を行っている。
- 多くの政府機関はITシステムの相互運用性の確保に配慮しない。
◆ イニシアティブ ◆
ブッシュ政権は、政府機関の境界をまたぐ成果を生むプロジェクトを支援することにより電子政府戦略を推進。政府機関にIT投資のより効果的な企画を求めるため、予算プロセスを活用して電子政府プロジェクトを管理。
各政府機関の代表者によるタスクフォースはOMB(大統領府行政管理予算局)及び大統領マネジメント協議会と協力して、各省庁にまたがる電子政府プロジェクト(対個人、対企業、政府機関間、内部プロセス)を選定するとともに、電子政府を阻害する組織的な障害を特定。OMBは相互運用性を最大化し重複と無駄を最小化するため連邦政府のIT投資を精査。
◆ 期待される効果 ◆
ITマネジメントを改善し、業務プロセスを簡素化し、政府機関をまたがる情報のフローを統合することによって、
- 電話、対面、ウェブに係わらず国民に質の高いサービスを提供。
- 政府とビジネスを行う際の費用と困難性を低減。
- 政府の運営コストを削減。
- 迅速な政府サービスを国民に提供。
- 障害者による政府機関のウェブサイトや電子政府アプリケーションの一層の利用を可能にする。
- 政府をより透明性が高く説明責任が果たせるものにする。
以上のように、大統領マネジメント・アジェンダでは、それまでの例えば「すべての国民を政府の製品、サービス及び情報と結びつける」(CIO協議会「Strategic Plan FY2001-2002」2000年10月)といったフロントオフィス(国民への行政サービスの提供)重視の電子政府戦略から、よりバックオフィス(政府内の業務プロセス)改革に踏み込んだものへと発想が変化していることが窺える。「小さな政府」を志向する共和党政権らしい発想と言うことができよう。
(2) ブッシュ政権の電子政府戦略と推進体制
さて、米国の電子政府はこうしてブッシュ政権下で行政改革上の課題としての性格を強めたわけであるが、その具体的戦略は、2001年6月14日にOMB(大統領府行政管理予算局)の実質的連邦CIOポストに任命されたMark Forman氏の指揮の下、上記「大統領マネジメント・アジェンダ」に記述されているように各政府機関の代表者によるタスクフォースを活用して策定されることとなった。(タスクフォースの人選に当たり、OMB長官は各政府機関の長に向けたメモランダムの中で、各機関の長に直接報告する立場にある上級職員の指名を求めている。)
このタスクフォース(「クイックシルバー(水銀のように急激に変化するの意)・タスクフォース」と呼ばれた)の活動結果に関するMark Forman氏からOMB長官への2002年2月27日付け報告として取りまとめられたのが、ブッシュ政権における「電子政府戦略(E-Government Strategy)」である。
この2002年2月27日付け「電子政府戦略」では、大統領マネジメント・アジェンダを踏まえ、24の省庁横断型の電子政府イニシアティブを選定した経緯や考え方が整理されるとともに、24イニシアティブの大まかな実施計画や推進体制が示されている。
ここでは、まず24イニシアティブの選定過程について触れておきたい。クイックシルバー・タスクフォースは、71回に及ぶ150人以上の上級政府職員のインタビューを行うとともに、電子メールを活用して連邦政府職員から200近いプロジェクトのアイデアを集めた。こうして集められた350以上のアイデアをもとに、「国民にとっての価値」、「政府機関の効率改善の可能性」、「18〜24か月での導入の可能性」という指標に基づいて、30の電子政府イニシアティブ候補が形成された。さらに、これら30候補についてビジネス・ケースを作成して利益、コスト及びリスクの見積りを行い、最終的に対個人(G2C: Government to Citizens)、対企業(G2B: Government to Business)、政府機関間(G2G: Government to Government)、内部プロセス(IEE: Internal Efficiency and Effectiveness)の4区分などで合計23の電子政府イニシアティブが選定されたのである。(その後1つ追加されて24イニシアティブになった。)
こうして選定された電子政府イニシアティブは、ブッシュ政権における行政改革の推進のために設置された「大統領マネジメント協議会(The President’s Management Council)」(各政府機関のCOO(Chief Operating Officer;次官級を任命)などで構成)の承認を得るという形式をとっており、ここからもブッシュ政権における電子政府が行政改革のための手法として位置づけられていることがわかる。
この選定過程で興味深いのは、クイックシルバー・タスクフォースが電子政府イニシアティブの検討・選定をするにあたり、連邦政府のエンタープライズ・アーキテクチャ(組織が人、業務プロセス、データ、技術によってどのように機能しているかを示すもの)の手法を活用していることである。クイックシルバー・タスクフォースが描いた連邦政府全体の統合ビジネス・アーキテクチャ(政策・業務体系)を図表2に示す。
図表2では、政府の業務体系(Lines of Business)が、災害準備や経済発展などの政策策定(Policy Making)、補助金/融資や研究開発などの計画管理(Program Admin)、消費者安全や環境管理などの法令遵守(Compliance)、人事や会計などの内部運営/インフラ(Internal Operations / Infrastructure)に分類されるとともに、これら業務における基本的プロセス/バリューチェーン(Underlying Processes / Value Chains)と国民との接点(Access Channels)が示されている。
クイックシルバー・タスクフォースは、このビジネス・アーキテクチャの構築を通じて、政府の業務に多大な重複と無駄がある(30の業務体系のそれぞれにつき平均19の政府機関がこれを行っており、また各政府機関は平均17の業務体系を行っている)ことを明らかにし、連邦政府エンタープライズ・アーキテクチャの現状は「アーキテクチャの体を成していない」と断じている。(政府の縦割りは万国共通ということであろうか。)
図表2 連邦政府全体の統合ビジネス・アーキテクチャ

(出展: 2002年2月27日付け「電子政府戦略」)
クイックシルバー・タスクフォースはまた、電子政府イニシアティブの実行にあたっての主要な障害とそれを克服するための取組みを整理し(図表3)、これを大統領マネジメント協議会に諮って支持を取り付けている。
図表3 電子政府の障害を克服するための取組み
| 障害 |
取組み |
| 政府機関の文化 |
・上層部の指導力と関与を維持
・政府機関間にまたがる管理構造を構築
・省庁横断型の作業を優先
・政府機関間にまたがる利用者/関係者グループを関与させる
|
| 連邦アーキテクチャの欠如 |
・OMBが政府全体のビジネス及びデータ・アーキテクチャの合理化を主導
・OMBが省庁横断型プロジェクトによるアーキテクチャ構築に資金提供
・FirstGov.govがG2C及びG2Bの最初のオンライン窓口に
|
| 信用 |
・e-Authenticationイニシアティブを通して安全なやり取りと本人確認を実現
・各業務計画に安全とプライバシー保護を組み込み
・訓練と奨励
|
| 資源 |
・成果が上がり国民への影響が大きい計画への資源の移動
・実行を監視するための方策を設定し活用
・職員・委託業者に新しい専門的知識を身に付けさせるためのオンライン訓練
|
| 関係者の抵抗 |
・議会の各委員会を関与させるための総合的戦略の策定
・大統領マネジメント協議会メンバーによる集中的討議
・省庁横断での成功による成果評価
・関係者への戦略の周知
|
(出展: 2002年2月27日付け「電子政府戦略」)
それから、各イニシアティブの概要は後で触れるとして、ここでもう一つ電子政府イニシアティブの推進体制について触れておきたい。
ブッシュ政権は、電子政府イニシアティブの実行のための最大の障害の一つが「変化に対する各組織の抵抗」であるとして、これを克服すべく、大統領マネジメント協議会を活用して各政府機関幹部の確約を取り付けつつ、図表4のような管理構造を構築している。
図表4 電子政府イニシアティブの管理構造

(出展: 2002年2月27日付け「電子政府戦略」)
図表4は、電子政府イニシアティブの管理にあたり、OMBが予算承認権限に基づく管理を行っていること、そして、G2C、G2B、G2G、IEEの各区分を統括する「ポートフォリオ管理者(Portfolio Manager)」を置いていることなどを示している。「電子政府戦略」によると、この4人のポートフォリオ管理者はOMBが雇っており、また各個別イニシアティブを統括する「管理パートナー(managing partner)」を大統領マネジメント協議会メンバーから募って(各イニシアティブの事務局は管理パートナーが設置)、他の政府機関がパートナーとして関係するイニシアティブに参画するという体制がとられている。
また、図表4は、クリントン政権下で連邦政府のITマネジメントを行うために設置されたCIO(Chief Information Officer)協議会の微妙な位置づけをも示していると言えそうだ。「電子政府戦略」によると、CIO協議会は4区分に属さない横断的イニシアティブであるe-Authentication(電子認証)イニシアティブとエンタープライズ・アーキテクチャに関与するほか、CIO協議会メンバーが4区分に対応する「ポートフォリオ運営委員会(Portfolio Steering Committee)」を形成し、各ポートフォリオ管理者及び各政府機関のプログラム管理者を支援することとなっている。
このように、ブッシュ政権下での電子政府はCIO協議会ではなくOMBが主導権を握っており、OMBは大統領マネジメント協議会を活用してその実行を担保している。電子政府の成功の鍵は「マネジメント」にあるとの認識のもとで、トップダウン型の管理手法がとられていると言うことができるであろう。
なお、上述のポートフォリオ運営委員会のうち政府機関間(G2G)に対応するものには、連邦政府関係者だけではなく、州政府や地方政府の代表者も参画するとされており、連邦政府と州・地方政府との連携を図ろうとする姿勢が窺える。
また、連邦CIOであるMark Forman氏の職務において「マネジメント」問題の比重が高まる中で、純粋に最先端の「技術」をフォローして電子政府に反映させるという必要性を満たすため、2002年1月、OMBの連邦CTO(Chief Technology Officer)ポストにNorman Lorentz氏が任命された。Norman Lorentz氏は郵便事業庁や民間企業のCTOなどを務めた経歴を持つ人物で、連邦CTOとしてMark Forman氏を補佐し、24の電子政府イニシアティブを技術面からサポートすることとなった。
(3) 各政府機関の電子政府への取組み状況の評価
ブッシュ政権は、「電子政府の拡充」を含む「大統領マネジメント・アジェンダ」の主要5対策の「現状(Current Status)」と「計画の進捗(Progress in Implementation)」について四半期ごとに緑/黄/赤の3段階で評価し、ウェブサイト(www.results.gov)上でスコアカードとして公表している。
電子政府については、主要なITシステム投資の戦略的価値(OMBの設定した要件(Circular A-11)に合致したビジネス・ケースの提出)、ITプログラムの成果(費用・スケジュール・成果目標に対する達成度)、電子政府イニシアティブや「政府ペーパーワーク削減法」の実施状況といった評価基準に基づいて評価が行われている。その評価結果が図表5であるが、全体的に電子政府イニシアティブはやや遅れ気味ながらも進捗しているものの、目指すべき電子政府の姿からはまだ程遠いということが読み取れる。
図表5 電子政府の現状及び計画の進捗に関する評価

(出展: results.govから作成)
2.電子政府イニシアティブの概要
さて、上記のような経緯を経て24の電子政府イニシアティブ(図表6参照)が選定されたわけであるが、その具体的な内容や進捗状況などは、つい先日2003年4月17日にOMBによって公表された新しい「電子政府戦略(E-Government Strategy)」や、OMBの電子政府関連ウェブサイト(http://www.whitehouse.gov/omb/egov/)に掲載されている。
ここでは、各イニシアティブの概要とURL、そして2003年4月「電子政府戦略」に記載されている主要実績について掲げておくにとどめさせていただく。ただし、各イニシアティブとも「単なるウェブの活用」にとどまらず組織間の壁を越えて業務プロセスを合理化する内容を含んでおり、またRecruitment One-Stopやe-Travelのようにアウトソース化するものもあって非常に興味深いので、各イニシアティブの詳細について上記ウェブサイトなどを直接御覧いただくことをお勧めする。
図表6 電子政府イニシアティブの名称と管理パートナー
(注)IEEのBとCは当初は1つのイニシアティブであったが現在は別個に管理されている。
(出展: 2003年4月「電子政府戦略」等から作成)
(1) 対国民(G2C)
@ GovBenefits.gov(www.govbenefits.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、国民が自分がどのような行政給付(失業保険、年金など)を受ける資格を持つのかを知り、それにアクセスできるようにする。
- 実績: 400以上、年額にして2兆ドル以上にのぼる政府プログラムのワンストップ・アクセスを実現。毎月50万人以上のアクセスがあり、USA Today紙で「人気サイト」の一つにあげられた。
A Recreation One-Stop(www.recreation.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、連邦・州・地方政府の公園、博物館、史跡などのレクリエーション施設に関する営業時間、料金、サービスなどの情報を提供するとともに、予約、入場券の申し込みなどができるようにする。
- 実績: Recreation.govは、国立公園や公共レクリエーション地域へのワンストップでのオンライン・アクセスを提供。2,500以上の公共レクリエーション施設にリンク。
B IRS Free Filing(www.irs.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、民間事業者が行う無料のオンライン税務申告サービスへのアクセスを提供する。
- 実績: 7,800万人以上が無料でオンライン税務申告することが可能。2003年の税務申告期には350万人の利用が見込まれる。
C Online Access for Loans
- 概要: ポータルサイトを通じて国民が政府系の融資プログラムにアクセスできるようにし、併せて融資プログラムのバックオフィス機能の効率改善と負担軽減を果たす。
D USA Services
- 概要: 民間の先進事例を導入し、行政サービスに関する問い合わせへの時宜を得た一貫性のある対応ができる、政府全体をカバーする国民対応サービスを開発し導入する。
-
(2) 対企業(G2B)
@ e-Rulemaking(www.regulations.gov)
- 概要: 国民が政府の全ての規則を検索できるようにするとともに、提案中の規則に容易にコメントできるようにし、併せて政府機関の内部プロセスを合理化・効率化する。
- 実績: 規則制定プロセスを支援する単一のシステムを構築することにより9,400万ドルが節約できる見込み。2003年1月23日の立ち上げ以来、サイトのヒット数は約260万。
A Expanding Electronic Tax Products for Businesses
- 概要: 事業者が必要な税務申告用の各種様式の数の削減、時宜を得た正確な税金情報の提供、電子的税務申告の拡大、及び連邦・州の税法の簡易化を行う。
B Federal Asset Sales(www.firstgov.gov)
- 概要: 連邦政府の資産(物品・サービス)の検索・売買をワンストップで行えるポータルサイトFedAssetSales.govを構築する。
C International Trade Process Streamlining(www.export.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて中小企業が輸出を行う際に必要な情報や書類を提供するとともに、海外の貿易相手の紹介・調査、輸出金融・保険、市場調査などが提供できるようにする。
D One-Stop Business Compliance(www.businesslaw.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、中小企業に係わる連邦・州・地方政府の法規制情報の提供に加え、実用的な法規制への対応方法を教示する。オンラインでライセンスや認可の取得も可能となる。
- 実績: BusinessLaw.govを利用して体系だったわかりやすい情報が検索できることによって、産業界は少なくとも年間5,600万ドルが節約できる見込み。
E Consolidated Health Informatics
- 概要: 政府機関と民間医療保険ベンダーとの間で医療記録情報を共有、再利用するため、簡易化・統一化されたシステムを構築する。
(3) 政府機関間(G2G)
@ Geospatial One-Stop
- 概要: ポータルサイトを通じて、連邦政府が所有する地理情報へのアクセスを提供する。連邦・州・地方政府で情報を共有する。
A Disaster Management(www.disasterhelp.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、災害への準備、対応、復旧に関する情報を国民に提供する。また、連邦・州・地方政府の危機管理者に災害関連情報とともに企画・対応ツールを提供する。
-
B SAFECOM
- 概要: 全米の公安問題に携わる政府職員が、非常時に所管に関わりなく通信を行い業務を遂行できるような標準を確立する。
-
C e-Vital
- 概要: 連邦・州政府間で、出生・死亡記録を収集、処理、分析、検証、共有するための共通の電子的プロセスを確立する。
D e-Grants(www.grants.gov)
- 概要: 連邦政府助成金の申請・付与に関するポータルサイトを作成することにより、連邦政府全体における助成金管理を合理化する。
(4) 内部プロセス(IEE)
@ e-Training(www.golearn.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて全政府職員に研修や戦略的人材開発ソリューションを提供し、指導員費用や旅費を削減しつつ人材管理を改善。
- 実績: GoLearn.govは、2,000以上のe研修コース、電子書籍及びキャリア開発リソースに関する情報を求め6,000万以上のヒットがある、世界で最も来訪者の多いe研修サイトである。GoLearn.govには4万5,000人以上の利用者が登録されており、利用者は従来受けられなかった研修を1コースあたり小銭程度の格安で受けることができる。従来の研修方法では、これに比べるとごくわずかな人数の研修しかできず、費用は時として1クラスあたり2,500〜5,000ドルもかかる。
A Recruitment One-Stop(www.usajobs.opm.gov)
- 概要: 現行の連邦政府採用情報システムUSAJOBSをアウトソース化し、オンラインで採用情報の検索、採用募集、電子履歴書の提出、履歴書データベースの検索、応募者による適格性や審査状況の確認などができる最新のオンライン採用サービスを構築。
B Enterprise HR Integration
- 概要: 政府職員の人事記録に関する標準化を行い中央レポジトリ(保管場所)を構築して、人事記録のペーパーレス化や政府機関・部署間での電子的移転を可能とし、また政府全体での労働力分析・予測・報告を改善合理化する。
C e-Clearance
- 概要: 秘密情報を扱う政府職員のセキュリティ審査手続きのオンライン化、政府機関間をまたぐセキュリティ審査記録へのアクセス、セキュリティ審査記録の電子画像化を通じて、現行のセキュリティ審査手続きを改善合理化する。
- 実績: セキュリティ審査の未処理案件を減らすことのできる統合データベースを導入済み。現在、全審査の99%が電子化済み。
D e-Payroll
- 概要: 連邦政府機関の22の給与支払いシステムを統合し、給与規則や支払い手続きを標準化・簡素化することによって、給与支払いに要するコストを削減する。また、成果と予算との関連付けや施策プログラムの財務管理の改善にも資する。
- 実績: 給与支払い処理センターを22から2つ(国防省/調達庁と農務省/内務省)に統合中であり、今後10年間で12億ドルが節約できる。
E e-Travel
- 概要: 各連邦政府機関の出張手続きシステムを統合し、費用を最小化しつつ利用者の満足度を高めるため、民間での出張管理事例を取り入れた政府全体のウェブベースでのサービスを、民間事業者に委託して提供する。出張の企画、承認、予約、支払い、払い戻し、予算確認、報告書の作成・決裁などができるようになる。
F Integrated Acquisition Environment(www.bpn.gov他)
- 概要: 供給業者の能力や過去の実績等の情報の維持など、調達における共通的機能を共有することによって、現行の調達環境における非効率性を取り除き、各政府機関における製品やサービスの調達の費用対効果を高める。
- 実績: 受注契約者の過去の実績情報を提供する実績情報検索システム(www.PPIRS.gov)、機密を要する調達資料の安全な転送・配布ができる連邦技術データシステム(www.FedTeDS.gov)などの主要なウェブサイトやツールを最近立ち上げた。
G e-Records Management
(http://www.archives.gov/records_management/initiatives/erm_overview.html)
- 概要: 各政府機関における電子記録管理の改善のための指針を設定する。省庁横断的な意思決定や通信文書のやりとりのためのモデルの提供、各政府機関における電子記録管理システムの導入の支援、記録管理アプリケーションに求められる基本機能の検討、国立公文書館に電子記録を移転し永久保存するためのツールの提供が含まれる。
(5) 横断型(Crosscutting)
@ -Authentication(www.cio.gov/eauthentication/)
- 概要: 連邦政府のウェブサイトの認証作業を「FirstGov.gov」にゲートウェイを設けて一元的に管理することで、民間事業者、国民及び政府の負担を軽減する。
3.連邦政府の電子政府関連予算
(1) 電子政府イニシアティブ関連予算
電子政府イニシアティブは、各イニシアティブに参加する政府機関のIT支出予算からの拠出のほか、2001年2月末の大統領予算教書で提唱され設立された「電子政府基金」の予算によって運営されている。
この電子政府基金の予算規模は、当初2002〜2004年度の3年間で1億ドルとされていた。その後、後述するように2002年12月17日に成立した「2002年電子政府法」によって、電子政府基金予算として2003〜2007年度に計3億4,500万ドルが認可(authorization)されている。(図表7)
図表7 電子政府基金の予算認可(authorization)額

(出展: 「2002年電子政府法」より作成)
図表7を見ると、電子政府基金の予算は順調に増加するという姿が描かれている。しかし、各年度の実際の予算額は毎年の予算承認(appropriation)を経て決定されることになっており、この実際の予算承認(appropriation)は現在のところ必ずしも順調ではないので、注意が必要である。
2001年2月末の大統領予算教書で電子政府基金の設立が提案された際、その予算規模は初年度(2002年度)1,000万ドル、2002〜2004年度の3年間で1億ドルとされた。しかし、その後増額された2002年度の要求額2,000万ドルに対し、承認額は500万ドルにとどまった。
そして、2003年度については上述のように電子政府法で4,500万ドルが認可(authorization)されたにもかかわらず、2003年2月20日にやっと成立した予算承認(appropriation)法では、2003年度の承認額は前年度と同額の500万ドルにとどまっている。
なお、上述のように電子政府イニシアティブは電子政府基金の予算だけで推進されているわけではなく、そのほとんどは各政府機関からのIT支出予算の拠出によって賄われている。その詳細は、OMBのウェブサイトからダウンロードできる各政府機関のIT支出予算の一覧表から抽出できるが、「ブッシュ政権の2004年度予算要求には、25プロジェクトへの各政府機関の拠出として、前年比5,430万ドル減の1億7,390万ドルが含まれている」(2003年2月24日付けGovernment Computer News「Agencies hesitate to fund e-gov」)ということであり、2003年度において各政府機関は電子政府イニシアティブに2億2,820万ドルを拠出していることになる。
(2) 連邦政府全体のIT支出予算
ちなみに、電子政府関連の連邦政府全体での予算額はどうなっているのであろうか。
2004年度予算要求に関するOMBのウェブサイトからダウンロードできる各政府機関のIT支出予算の一覧表によると、2003年度は対前年度比16.6%増の580億6,900万ドル、2004年度は同2.2%増の593億4,500万ドルとなっている。(図表8)
図表8 連邦政府のIT支出予算

(出展: OMBウェブサイトから作成)
4.「2002年電子政府法」
電子政府を一層推進するためには、行政命令により設置された組織や単年度毎の予算措置に依存するのではなくしっかりとした法律的根拠付けが必要であるとして、1年半前の駐在員報告でも触れたように電子政府推進法案が提案されていた。そして、テロ事件などもあって少し時間がかかったものの、2002年12月17日、ブッシュ大統領の署名により「E-Government Act of 2002(2002年電子政府法)」が成立し、主要部分は2003年4月17日に施行された。
この「2002年電子政府法」は、OMB(大統領府行政管理予算局)による電子政府への取組みである電子政府局、CIO協議会及び電子政府基金に法的根拠を与えるとともに、電子署名の互換性確保やインターネット・ポータルの維持、インターネットによる情報提供の改善、プライバシー・ポリシーの指針策定など連邦政府の各機関による電子政府への取組みを規定している。以下に、その概要について整理してみたい。
(1) OMBによる電子政府への取組み
「2002年電子政府法」は、OMBに電子政府局を設置し、同局に大統領が任命する局長を置くことを規定している。電子政府局は2003年4月17日付けで設置され、Mark Forman氏が局長に任命された。これによって、これまでOMBのAssociate Director for IT & E-Governmentという肩書きで実質的連邦CIOとしての職務にあたってきたMark Forman氏とそのスタッフの組織と業務に、晴れてしっかりとした法律的根拠が与えられることとなった。
電子政府法はまた、クリントン政権時代の1996年に行政命令によって設置されていた各政府機関のCIO等で構成されるCIO協議会(www.cio.gov)にも法律的根拠を与えている。CIO協議会の議長は従来どおりOMBの行政管理担当次長が務め、電子政府局長がその代理としてCIO協議会を実際に運営する。
CIO協議会は従来どおり、連邦政府における情報資源の管理に関する政策・要件の勧告、アイデアや先進事例などの共有等を行うこととされている。
さらに電子政府法は、電子政府イニシアティブを支援するため2002年度予算以降すでに予算化されていた「電子政府基金」を法定するとともに、既述のとおり2003〜2007年度の予算計3億4,500万ドルを認可(authorization)している。(図表7)
これらの他、電子政府法はOMBによる取組みとして、電子政府構築において受注契約者からの革新的なソリューションの提案を奨励するための政府全体のプログラムを確立すること、及び電子政府報告書を毎年作成し議会(上院・行政問題委員会及び下院・行政改革委員会)に提出することを定めている。
(2) 連邦政府各機関による電子政府への取組み
電子政府法は、連邦政府各機関による電子政府への様々な取組みを規定している。主なものを以下に記す。
@ 電子署名の互換性確保
- 各政府機関は、電子署名の使用・承認方法がOMBが定める電子署名に関する政策・手続きに準拠することを保証。
- 連邦ブリッジ認証局の設立・運営のためのGSA(一般調達局)の予算(2003年度800万ドル、以後必要な額)を認可。
A 連邦政府のインターネット・ポータル維持
- 連邦政府のポータルサイト(FirstGov.gov)を維持。
- その保守・改良のためのGSAの予算(2003年度1,500万ドル、以後必要な額)を認可。
B 政府情報へのアクセス改善
- インターネットによる政府情報の国民への提供を改善するため、「政府情報に関する省庁間委員会」を開催し、政府情報の組織化・分類に関する基準等に関する勧告を策定。
- 政府機関のウェブサイトが直接リンクを貼るべき事項等に関する指針の策定。
- OMBはOSTP(科学技術政策局)等と協力して、連邦政府が資金提供する研究開発に関する情報をすべて統合したレポジトリ(保管場所)及びウェブサイトの開発・維持を保証。そのための予算(2003〜2005年度各200万ドル、2006〜2007年度必要な額)を認可。
C プライバシー保護
- 政府機関は、身元特定可能な情報を扱うITの開発・調達またはITを用いた情報収集を行う前に、プライバシー影響評価を実施。OMBはそのための指針を策定。
- OMBは、政府機関のウェブサイトのプライバシー・ポリシーに関する指針を策定。
D IT要員の育成
- 人事管理局は、OMB、CIO協議会及びGSAと協議の上で、連邦政府のIT要員のニーズ分析、それを満たすために欠如しているIT研修の特定、IT研修の評価等を実施。
- 各政府機関は、人事管理局、CIO協議会及びGSAと協議の上で、IT研修プログラムを策定・運営。
- 人事管理局は、連邦政府のIT要員を連邦政府以外に出向させることを可能とするプログラムを策定。
E 「節約額分配(Share-in-savings)」イニシアティブ
- 政府機関の業務改善のためのソリューション契約において、業務改善によって生み出された金銭的節約額(収益増等を含む)をその政府機関と受注契約者がインセンティブとして分け合うことができる「節約額分配(Share-in-savings)契約」を可能とする。(2005年度末までの時限措置)
F 「連邦補給計画(Federal Supply Schedule)」を通じた州・地方政府によるIT調達
- 州・地方政府は、GSAの「連邦補給計画(Federal Supply Schedule)」を通じてIT調達を行うことができる。
G コミュニティ・テクノロジー・センター
- OMBは、国民にコンピュータ及びインターネットへのアクセスを提供しているコミュニティ・テクノロジー・センターの評価を実施。
H 先端的ITによる危機管理の向上
- OMBは連邦危機管理庁(国土安全保障省)と協議の上で、災害への準備、対策及び被害管理においてITを効果的に利用するための調査を実施。
I インターネット・アクセスにおける格差
- GSAは、全米研究協議会傘下の全米科学アカデミーに依頼して、オンライン政府サービスへのインターネット・アクセスにおける格差に関する調査を実施。
J 地理情報システム(GIS)の共通プロトコル
- 地理情報に関する協力及び標準の使用を促進し不必要なデータ収集をなくすため、OMBは、NIST(国立標準技術研究所)他の政府機関や民間、州・地方自治体などと協力して、地理情報の開発、取得、維持、配布及び応用に関する共通プロトコルの開発を促進。
なお、電子政府法はこれらの他にも、「Federal Information Security Management Act of 2002(2002年連邦情報セキュリティ管理法)」と呼ばれる連邦政府の情報セキュリティ強化のための規定を含んでいる。これは、各政府機関に対するNIST(国立標準技術研究所)が策定する情報セキュリティ標準への準拠の義務付け、「2000年政府情報セキュリティ改革法」により実施される各政府機関のリスク管理評価の恒常化などを規定する法律で、電子政府法とは別に検討されていたが最終段階で電子政府法に組み込まれたものである。(この「2002年情報セキュリティ管理法」部分の規定については2002年12月17日に即日施行されている。)
電子政府の推進のために情報セキュリティの確保は不可欠なものであるが、それだけでも非常に大きなテーマであるので、ここではその詳細は省略させていただく。
(来月に続く)
(参考文献)
「The President’s Management Agenda」(8/25/2001)
(http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2002/mgmt.pdf)
「E-Government Strategy」(2/27/2002)
(http://www.whitehouse.gov/omb/inforeg/egovstrategy.pdf)
「E-Government Strategy」(4/17/2003)
(http://www.whitehouse.gov/omb/egov/2003egov_strat.pdf)
「E-Government Act of 2002」(12/17/2002)
(http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d107:HR02458:|TOM:/bss/d107query.html|)
「Agencies hesitate to fund e-gov」(Government Computer News、2/24/2003)
(http://www.gcn.com/22_4/news/21223-1.html)
(参照URL)
http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2002/mgmt.pdf(図表1関連)
http://www.whitehouse.gov/omb/inforeg/egovstrategy.pdf(図表2、3、4関連)
http://www.results.gov/agenda/scorecard.html(図表5関連)
http://www.whitehouse.gov/omb/egov/2003egov_strat.pdf(図表6関連)
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d107:HR02458:|TOM:/bss/d107query.html|
(図表7関連)
http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2004/sheets/itspending.xls(図表8関連)
本稿に対する御質問、御意見、御要望がございましたら、Ryohei_Arata@jetro.go.jpまでお願いします。
(C)Copyright JEITA,2003
|