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 【 2001年9月号 】



 欧 州 動 向
   モバイル・インターネット等を巡る欧州最新動向
〜 欧州のIT普及率最新データ 〜


T.モバイル・インターネット等を巡る欧州最新動向

 最近、欧州各国の電気通信事業者や通信関連メーカを訪問する機会を得たので、これをもとに最近のニュースと合わせ、モバイル・インターネットや第3世代携帯電話を巡る動向について報告する。
 携帯電話会社にとって、如何にモバイル・インターネット等のデータ通信ニーズを発掘していくかは今後の事業戦略のポイントである。従来の音声通話量自体は携帯電話が現在の第2世代から第3世代に進化してもさして変化するものではないと考えられるためである。特に携帯電話の普及率の伸びが頭打ちに近くなってきた国では、新規顧客の獲得による売上の増加が見込めない以上、1加入者当たりの利益を向上させる必要があり、そのためにはデータ通信量の増加がポイントになるわけである。また、このような国では新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持に力を注ぐ必要があり、その観点からも魅力的なモバイル・インターネット・サービスの提供は重要と考えられる。
 実際、イタリアは欧州主要大国では携帯電話の普及率が最も高い(73.7%,2000年12月末)が、テレコム・イタリアでは上記のような基本的認識を有していた。特に、欧州では第3世代携帯電話の事業権料が高騰したため、第3世代携帯電話において1加入者当たりの利益を現在よりも向上させなければならないのは各社にとって至上課題になっている。


1.第3世代携帯電話事業権料高騰の影響

 欧州では2000年に多くの国で第3世代携帯電話の事業者選定が行われた。第3世代携帯電話は、通信速度が現在の第2世代携帯電話よりも格段に高速になるため、モバイル・インターネット時代に不可欠なインフラと目されており、各電気通信事業者にとって事業権の獲得は生き残りをかけた競争となった。欧州では通貨統合による経済的国境の消滅を契機として各業種で企業買収・合併が進んでおり、電気通信業界でも他国への進出合戦が熾烈を極めてきているが、第3世代携帯電話の事業者選定は各国内の既存GSM事業者も横一線での競争であり、特に各国において事業権の数として既存事業者数に加え1〜2の新規参入者枠が設定されたことから、第3世代携帯電話の事業者選定は他国進出の絶好の機会となったわけである。選定に際しては国によって入札方式と書類審査方式とられたが、比較的早い時期に入札手続きを行った英国(落札総額3.5兆円)及びドイツ(同4.7兆円)で入札合戦の過熱により落札金額が異常高騰し、両国での落札事業者を中心に電気通信事業者の財務状況が悪化している。各事業者は、ベンダー・ファイナイス(受注の見返りとしての通信設備納入メーカからの融資)に頼り、設備投資額の節約のため他事業者との通信設備の共有を指向せざるを得ない状況になってきている。このような状況に対し、英中銀は6月末、電気通信事業者の債務レベルに懸念を示すと同時に、通信機器メーカが多額のベンダーファイナンスを行うことで過度のリスクを負っていると警告を発している。
 なお、各事業者が英独両国で多額の資金を消費してしまったことから、逆にその反動でその他の国では正常な入札が成立しないなど、事業権料は総じて各国政府の期待を下回る水準になってしまっている。


〔欧州主要電気通信事業者の各国における第3世代携帯電話事業権獲得状況〕
  西 スイ スウ ノル ポー
英ブリティッシュ・テレコム ××× ×××× ×××
英ヴォダフォン × × ××
仏フランス・テレコム × ×
仏ヴィヴェンディ ××× ××××× ××
独ドイツ・テレコム ××× ××× ××
伊テレコム・イタリア ××× ××××× ×××
西テレフォニカ ×× ××× ×××
香ハチソン・蘭KPN・日NTT ×× × ×××
(注1)上記○印には、50%未満の少数出資も含む。
(注2)ハチソン、KPN、NTTは、必ずしも3社共が全ての国に出資しているわけではない。
(注3)ベ=ベルギー、スイ=スイス、スウ=スウェーデン、ノル=ノルウェー、ポー=ポーランド
出所:JETROパリ事務所にて作成。


 上記に欧州の主要な電気通信事業者の各国における第3世代携帯電話事業権の獲得状況を示す。このうち、英独両国で事業権を取得している事業者は多額の事業権料を負担しなければならず、各事業者とも多額の債務を負っている。ただし、事業者によって財務状況は一様ではない。実際、北欧の某通信機器企業は、「電気通信業界全体の経営が厳しいにように言われることがあるが、それは間違いである。ヴォダフォン、フランス・テレコムなどのようにうまくいっているところもあり、様々である。」と指摘していた。小生の見方では“欧州の電気通信事業者は4分化”してきていると考えている。


@

企業体力のある英独落札者:ヴォダフォン、フランス・テレコム、ドイツ・テレコムがこれにあたる。もちろん、これら事業者も多額の負債を抱えてはいるが、財務状況は比較的安定しているとの見方がなされている。むしろ、ACグループの問題を抱える事業者に比較して、@グループの事業者はその存在をより確固たるものにしているように感じる。

A

企業体力のない英独落札者:ブリティッシュ・テレコムとKPNがこれにあたる。ブリティッシュ・テレコムは財務状況が悪化し、外国での子会社等を次々に売却し、大幅な人員削減も余儀なくされている。先頃、同社が日本テレコム株とJ−フォン株をヴォダフォンに売却したことは、共に英国籍である両社の明暗を象徴的に表している。蘭KPNも厳しい立場に置かれている。KPN以外の主要電気通信事業者は英仏独伊西の人口の多い大国を基盤としているのに対して、オランダは人口1,500万人に過ぎず元々KPNは底力は弱かったと言える。KPNも資産売却を行っており、ベルギーのベルガコムとの合併交渉も行っている(8月中旬現在)。KPNの経営不安は提携関係にあるNTTにとっても大きな問題と考えられる。

B

英独非落札の大手事業者:テレコム・イタリアがこれにあたる。テレコム・イタリアは英独では落札せず、南欧とラテン・アメリカを事業の中心に据えており、財務状況はそれほど悪化していない模様である。実際、最近小生がテレコム・イタリアを訪問した際も、同社は「イタリアでは、第3世代携帯電話オークションの落札価格が支払い可能な範囲に抑えられ、スペインでも低い事業権料(スペインでは入札ではなく書類審査方式)で済んだので、欧州の電気通信事業者の事業権料負担額の中では、“真ん中から下”のレベルに収まったと考えている。」と言っていた。結果的にしろ、小生はこのBグループが最も賢い戦略であるように思う。  余談であるが、南米に進出している2大欧州事業者はテレコム・イタリアとスペインのテレフォニカであるが、先日会ったドイツの某総合電機メーカの人の言によれば、「テレコム・イタリアは南米とはラテン系同士としての相互理解があるという利点を活かしつつ、スペインのような旧宗主国=旧植民地としてのしがらみがなく南米に進出できている。イタリアから南米への移民者が多いのも利点として作用している。」とのことである。欧州人以外にはなかなか発見できないものの見方として興味深かった。

C

大規模な国際進出ができない中小事業者:テリア(スウェーデン)、テレノール(ノルウェー)、ソネラ(フィンランド)等の小国事業者や、仏ブイグ・テレコム等の大手事業者の系列に組み込まれていない各国の中小事業者がこれにあたる。例えば、北欧事業者ついて言えば、自国においては支配的な事業者であっても、国の市場規模が小さいため大規模が国際進出ができないでいる。このため、合併による企業規模の拡大の交渉が何度も繰り返されてきている。


2.モバイル・インターネット

(1)WAP低迷の原因

 欧州でモバイル・インターネットといえばWAPであり、我が国のiモードに相当するものであるが、全く流行っていない。小生自身あまり魅力的と思わないし、小生の周りでも使っている人を見たことがない。WAPが普及しない原因としては以下が挙げられると思う。

@

iモードのようなパケット交換方式ではなく回線交換方式のため、“通信データ量による課金”方式ではなく、通常の通話と同じく“使用時間による課金”である。このため料金が高額になってしまう。

A

WAPでは一般のインターネットのウェブページが読めない。iモードでは記述言語としてコンパクトHTMLを採用しており、HTMLで記述された一般のウェブページが参照できる。これに対して、WAPではWMLという新しい記述言語を採用しており、WAP専用のページしか参照できない。

B コンテンツが少ない。
C

転送速度が遅い。品質も悪く、データ転送途中に切れてしまう。品質が悪いのはWAP特有の問題ではなく、携帯電話一般の問題である。実際、小生はフランス・テレコムの携帯電話を使っているが、雑音が入ることは日常茶飯事であり、突然通話が切れることもしばしばである。これではデータ通信に支障が出て当然であろう。

D

端末が魅力的ではない。最新型として販売されている端末も、未だに画面が小さく、カラーは存在せずモノクロである。GSMの特性上もあり、待ち受け時間は短い。端末自体の大きさは大きめである。


(2)GPRSに寄せられる期待

 現在各電気通信事業者は、近々本格的普及が開始するGPRS(2.5世代)上でのモバイル・インターネットの普及に大きな期待を寄せている。GPRSは現在のGSM携帯電話上で高速なデータ通信を行う方式で、データ転送速度は概ね我が国のPHS程度である。GPRS方式では、欧州では初めてデータ量による課金方式が採用される。小生が最近訪問した電気通信事業者、通信関連メーカでは、WAP失敗の最大の原因としてデータ量による課金方式を採用しなかったことを挙げており、その点でGPRSは大いに期待されている訳である。このため、欧州の各事業者は、このGPRSが第3世代携帯電話に向けた欧州における将来のモバイル・インターネットの成功如何の試金石になるとの見方をしている。一般ユーザ向けのGPRS端末は今年のクリスマス商戦から本格的普及が開始するため、今年末から来年の動向は要注目である。
 各電気通信事業者では、GPRSでのモバイル・インターネット・サービスの強化に力を入れている。例えばテレコム・イタリア・モビレでは、既に企業向けのGPRSサービスを開始しており、各種アプリケーションを提供している。一般ユーザ向けのサービスも近々開始される予定であり、既に200のコンテンツ・プロバイダと提携しているとのことであった。
 ブリティッシュ・テレコム・ワイヤレスも既に企業向けサービスを開始している。ただし、GPRSでは企業向け市場を重視しているという同社の弁と、サービス速度が64kbpsに過ぎない点がマッチしない感じがした。64kbpsといえばPHS程度であり、このような遅いスピードで企業向けサービスに特化できるのかとの問いに対しては、企業ユーザにはモバイルPCからデータを会社本部に送るニーズがあり、テキストデータのみを想定すればよく、イメージデータを想定する必要がないので、64kbpsでよいとの回答であったが、事業者側にも認識の遅れがあるように感じたがどうであろうか。


(3)欧州におけるモバイル・インターネットと第3世代携帯電話の見込み

 現在のWAP低迷状況のもと、欧州のモバイル・インターネットは日本のような爆発的な普及に至るであろうか。もちろん、いずれは欧州においてもモバイル・インターネットは普及するであろうが、第3世代携帯電話といってもいつまでも存在し続けるものではなく、既に世界では第4世代携帯電話の研究が進められており、2010年以降は第4世代の時代とも言われている。このため、2002年から10年間程度の間のなるべく早い時期に欧州でモバイル・インターネットのニーズが立ち上がり、多額の投資の回収が図れるかどうかが、電気通信事業者にとっての最大関心事項である。また、事業者側の採算が合うことが普及の前提として必要であろう。
 答えは小生にとっても正直なところよく分からない。
 まず、プラスの面としては、現在欧州ではショート・メッセージ・サービス(SMS)が爆発的に普及しているので、モバイル・インターネット普及の素地がないわけではないと言える。SMSは携帯電話の標準サービスとして付いているもので、パケット通信ではないものの、簡単な電子メール・サービスのことである。北欧の某通信機器メーカによれば、若者層はPCベースの電子メールから携帯電話のSMSに移行しているとの分析であり、モバイル・インターネットの方が便利であれば、さらにこれに乗り換えることも大いに予想される。
 一方、マイナス面としては、電気通信事業者側は、一様に、モバイル・インターネットは若者層から普及すると期待してるものの、欧州は日本のように中高生が携帯電話を持つような社会ではないため、起爆剤になる世代が果たして存在しているのかどうか、未だ確信を持てていない模様である。
 従って、欧州における第3世代携帯電話の普及如何は、GPRSの成功如何が試金石となるわけであるが、各電気通信事業者とも、現時点では第3世代携帯電話の将来見込みについては確固たる自信がないように小生には見受けられた。第3世代携帯電話のサービスが当初予定通りの時期に開始されるかどうかも疑わしいところである。例えば、フランス・テレコムでは、2002年6月のサービス開始時期は延期するつもりはないと言っていたが、同時にメーカ側の事情により端末とインフラ整備が間に合わなければ延期されることもあり得るともしており、予定通りのサービス開始を全面的には肯定していない。実際、ヴォダフォンは7月20日に、端末準備の遅れを理由に2003年にサービス開始がずれ込むことを発表した。

3.メーカ・サイドの観点から

 第3世代では、日本企業は携帯端末分野で欧州市場に進出するチャンスといえよう。第2世代の際はGSM方式の壁に阻まれ日本企業は進出できなかったが(日本の携帯電話はPDC方式)、第3世代では日欧共通のW-CDMA方式となる。現在でも僅かながら日本製GSM端末が販売されているが、欧州メーカ製よりははるかに魅力的である(ただし高額)。日本メーカの携帯端末は、漢字の表示の必要性からの表示の精細さや、i-modeでのカラー表示の経験等により、ユーザにとって魅力的な端末の提供が可能となろう。それだけに、日本製端末が市場を席巻するような事態もあり得ると考えるが、第1世代のアナログ携帯電話の際に日本製端末が欧州市場をおさえて問題になり、第2世代のGSMでは日本企業が事実上閉め出された経験を踏まえ、第3世代では同じような轍を踏まない注意が必要かと思う。既に携帯端末で欧州企業と提携している日本企業がいくつかあるが、このような現地企業と提携した形をとるなど工夫が必要であろう。一方で電気通信事業者側にとってみれば、端末はどのメーカのものであろうが魅力的な端末であり自社の加入者が増えればよいため、電気通信事業者側を味方につけるのも一つのやり方であろう。
 一方で、第3世代携帯電話の基地局等のインフラ面では、エリクソン、ノキア、独シーメンス、加ノーテルが強く、日本企業が市場に食い込むのはなかなか簡単ではないようであるが、これは携帯端末とは異なり一般ユーザを対象にしているわけではないため、致し方ない面があろう。
 余談であるが、好調なノキアに比して、携帯端末の市場シェアが著しく低下しているエリクソンの不調が伝えられるが、ドイツの某総合電機メーカによれば、「ノキアは携帯端末には強いもののインフラ系には弱い。一方、インフラ系は開発にも資金力が必要であり、その点で現時点では不調といえども従来よりインフラに強いエリクソンは侮りがたい。」との指摘があった。両社は携帯端末の製造についても対照的な方針をとっている。エリクソンが生産のアウトソーソング化を行ったのに対して、ノキアの現在のアウトソーシング率は低く、同社は「生産能力の保有は会社にとって重要であるため今後もアウトソーシング率を増やすつもりはない。」と言明していたが、両社の今後の成り行きは興味深いところである。


WAP



U.欧州のIT普及率最新データ

 欧州の主なIT関係指標について最新データを収集・整理したので報告する。以下の表では、原則として英・仏・独・伊・西の欧州主要5ヶ国及び日・米を比較した。さらに表1では、IT普及率の高い北欧の代表国としてスウェーデンを採り上げた。


表1 単位人口当たりの主要IT普及率
  @パソコン(%) Aインターネット(%) Bホスト数(台) C携帯電話(%)
英国 33.8 42.4 3.8 68.1
フランス 30.5 18.4 2.2 50.3
ドイツ 33.6 38.9 2.6 58.5
イタリア 20.9 25.2 2.8 73.7
スペイン 14.3 17.7 1.6 61.3
スウェーデン 50.7 69.0 7.2 73.8
EU平均 32.7 3.4 62.5
米国 58.5 62.9 26.8 40.7
日本 31.5 34.6 4.3 47.0
(注)Bは100人当たりのインターネット・ホスト数
(調査時点)@2000年12月、A2001年4月、B2001年1月、C2000年12月
(出展)@ITU(国際電気通信連合)、ABCEurostat

 欧州全体を概観すると、北に向かうほどIT普及率は高く、南に向かうほどIT普及率が低いという「北高南低」という特徴がある(南欧の携帯電話を除く)。特にスカンジナビア諸国は、@パソコン普及率、Aインターネット普及率、B単位人口当たりのインターネット・ホスト数、C携帯電話普及率のいずれをとっても高い値を示している。
 @パソコン普及率、Aインターネット普及率、B単位人口当たりのインターネット・ホスト数について見た場合、日本と英仏独の欧州主要3ヶ国は概ね同程度のIT化率ということができる。ただし、日欧双方との米国には大きく遅れをとっている。なお、フランスのインターネット普及率が低いのは、インターネット普及前に「ミニテル」という通常の電話回線を利用した情報提供端末(我が国のかつてのキャプテン・システムに相当)が普及しており、現在も多くの人が利用しているためであり、単純にインターネットの普及が遅れているととらえることは間違いである。なお、現在ミニテルの利用率は減少に向かいつつあり、ミニテルからインターネットへの移行が進んでいる。
 C携帯電話普及率については、欧州の方が日本以上に普及している。我が国の方が普及率が高いかと思っていたが、意外な感じである。ただし、携帯電話を使ったモバイル・インターネット(WAP)については、表2に示すように欧州ではほとんど普及していない。例えば、オレンジ(フランス・テレコム)のフランス国内全加入者に占めるWAPユーザの割合は3.5%(2001年1月)に過ぎない。米国の携帯電話の普及は日欧よりも遅れている。


表2携帯電話会社のWAPユーザ数の例
オレンジ(フランス) 50万人
テレコム・イタリア・モビレ(イタリア) 30万人
テレフォニカ・モビレス(スペイン) 30万人
ワン2ワン(英国) 13.5万人
(注)最低月1回以上WAPを利用するユーザを対象
(調査時点)オレンジ、ワン2ワンは2001年1月
テレコム・イタリア・モビレは2000年12月
テレフォニカ・モビレスは記載なし
(出展)telecoms.com

 ブロードバンド・インターネットの普及率(表3)については、欧州は日本よりは進んでいるものの、米国よりははるかに遅れている。日欧とも、ブロードバンドの普及はまだまだこれからというところである。欧州では、今年の1月から欧州委員会の主導により加入者回線網の自由化が行われ、ADSLの普及が進められようとしているところである。なお、欧州では無料インターネット接続が普及したため、一般ユーザがインターネット接続のために料金を支払うことに抵抗感を感じている部分があり、これがADSL普及の足枷の1つになっているという指摘もある。それにしても、韓国のブロードバンドの普及率には目を見張るものがある。これに対して我が国は、他の国よりも数ヶ月新しい最新のデータで比較しているにも関わらず低い値である。90年代に旧郵政省がCATVを難視聴対策としてのみとらえ県境を越えての事業を認めなかったことと、NTTがISDNやFTTHに拘りADSLの普及に努めてこなかったことが、現在の日本のブロードバンドの遅れとして現れていると思う。


表3 世帯数比でのブロードバンド普及率  (単位:%)
  CATV ADSL 衛星 T1/
専用回線
合計
英 国 2.3 0.5 0.3 0.0 3.1
フランス 4.0 1.7 0.3 0.0 6.0
ドイツ 2.7 2.2 0.1 0.0 5.0
スペイン 1.8 1.1 0.2 0.0 3.1
米 国 7.6 2.8 0.5 0.2 11.1
韓 国 18.6 38.6 0.1 0.0 57.3
台湾 3.5 2.6 0.1 0.0 6.2
日 本 2.1 0.6 0.0 2.7
(注)日本の合計値には衛星インターネットは含まれていない。
(調査時点)日本以外は2000年12月〜2001年2月。日本は総務省公表の最新値を用いたため2001年6月。
(出展)日本以外:NetValue、日本:総務省データをもとに独自に算出

 欧州内では現時点ではフランスが最もブロードバンドが普及している。ただし、表4に示すようにドイツではCATVが大きく普及しており、今後同国でケーブル・モデム方式のブロードバンド・インターネットが普及することが予想される。ドイツでは、これまでドイツ・テレコムが直接・間接的にCATV会社のほとんどを支配してきたが(独占禁止の観点から欧州委員会はドイツ・テレコムに対してCATV事業の切り離しを求め、現在ドイツ・テレコムは傘下のCATV会社の売却を進めているところである)、ドイツ・テレコムはデータ通信に対してはISDNの普及に努めてきたため、CATV普及率の割にはケーブル・モデム方式でのブロードバンド・インターネットが普及していないという経緯がある。なお、ドイツは高いISDN普及率を誇っているが、ドイツ・テレコムがADSLサービスを開始したのは1999年になってからであり、このあたりはNTTがISDNにこだわり日本でADSLの普及が遅れたのと似たような経緯をたどっている。

表4 CATV加入世帯数  (単位:万件)
英 国 フランス ド イ ツ イタリア スペイン 米 国 日 本
335 307 2,112 41 90 6,850 821
(調査時点)2000年12月
(出展)EITO Task Force


V.産業動向

<伊:ピレリとベネトン、テレコム・イタリアの経営権取得>
 伊ピレリ(タイヤ・メーカ)と伊ベネトンは7月28日、テレコム・イタリアの親会社であるオリベッティの資本の27%を共同で買収し、テレコム・イタリアの経営権を取得した。


<ノルウェー:欧州で初めての次世代携帯電話事業権の返上>
 ソネラ(フィンランドの電気通信事業者)とエニテル(ノルウェーの電気通信事業者)が折半出資しているブロードバンド・モバイルが8月9日、ノルウェーの次世代携帯電話の事業権を返上した。直接の原因は、エニテルの経営破綻にある。事業権料は2,500万ユーロで、これに毎年の電波使用料(2001年は300万ユーロ)が加わることになっていたが、ソネラは単独で事業権を引き継ぐことを拒否した。今回の次世代携帯電話事業権の返上は、欧州で初めてのことである。



W.政策動向

<仏:個人情報保護関連法改正案が提出>
 フランスでは7月18日、個人情報保護関連法改正案が閣議に提出された。現在、情報処理・自由全国委員会(CNIL)は、個人情報を含んだすべてのデータベースの提出を受け、その監督に当たっているが、今回の改正は新時代に即した管理体制に移行することを目的としている。
 主な改正ポイントは次の通り。@従来、公共部門が保有する個人情報のデータベースと、民間部門のデータベースとを区別し、前者に認可手続きを適用、後者については事前届出を求めていた。改正案では、データベースの「危険度」(政治信条、性的傾向、犯罪歴等のデータ内容や、その目的等)に応じて、危険度の高いものについては民間部門を含めて認可対象となる。ただし、認可手続きは従来よりも軽減される。A欧州連合域外へのデータベースの移転は、個人情報が保護されている国以外には認めない。




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