JEITA HOME


パリ駐在員報告
 【 2002年1月号 】



 欧 州 動 向
   〜 欧州の仮想移動体通信 〜


J.欧州の仮想移動体通信

 「仮想移動体通信」という用語は、日本ではあまり聞き慣れないのではないかと思う。仮想移動体通信とは、自前の通信ネットワークを持たない事業者が、事業権を有する既存の携帯電話事業者から、ネットワークの通信容量を購入し、その上で携帯電話サービスを提供する事業である。欧州では、英ヴァージン・モバイルが1999年11月に初めて仮想移動体通信サービスを開始し、その後英国ではこのような事業形態が広まってきている。一方、日本では仮想移動体通信事業は未だ一般化していないが、外国企業の日本市場への進出や独自の付加価値サービスを提供する新規参入者等により、今後このような事業形態が登場する可能性があると考えられる。このため、今回は既に仮想移動体通信事業が展開している欧州の現状について報告する。

1.仮想移動体通信事業の概観

(1)仮想移動体通信事業形態の必要性
 国から周波数の割当を受け自前の通信ネットワークを有する携帯電話事業者の数は、欧州では各国それぞれ3〜4社(英国4社、フランス3社、ドイツ4社、イタリア4社、スペイン3社)である。それ以上の数の携帯電話事業権を交付することは、周波数資源には限りがあることから困難である。しかし、電気通信業界の競争が激しい欧州では、実際には携帯電話事業への進出を希望する事業者は多い。これを解決する方法として、仮想移動体通信という事業形態により、実際に国から周波数の割当を受ける事業権の数に関わりなく、より多くの事業者が携帯電話サービスを提供することが可能となる。
 また、携帯電話事業は元来設備産業であるため、全国をサービス範囲としてカバーするためには膨大な初期投資が必要となり、新規事業者にとって参入ハードルは高く、特に小規模なサービスを提供する目的では採算が合わず参入は不可能に近い。しかし、仮想移動体通信事業により、インフラを所有せずに事業を行うことができ、小規模サービスでの参入も可能となる。

(2)仮想移動体通信事業の定義
 仮想移動体通信事業の定義について、欧州全体で統一された見解はまとまっていない。以下の2つの捉え方がある。


@ 広義の仮想移動体通信事業:「1つ以上の携帯電話事業者から通信ネットワークを借りて、自社ブランドで携帯電話サービスを提供する事業。」
 
A 狭義の仮想移動体通信事業:「1つ以上の携帯電話事業者から通信ネットワークを借り、自社独自のSIMチップを用いて、自社ブランドの携帯電話サービスと独自の付加価値サービスを行う事業。原則として、料金請求等の顧客管理を独自に行う。」

 SIMチップとは、携帯電話端末に挿入するユーザ別のICチップであるが、通信ネットワークを借りる携帯電話事業者のものとは異なる独自のチップにより、仮想携帯電話事業者が独自の付加価値サービスを提供したり、端末器画面をコントロールしたりすることが可能となる。要するに、サービスに自社のブランド名を冠しても、通信ネットワークを借りた携帯電話事業者と同一内容のサービスを提供するだけでは厳密な意味での仮想移動体通信事業とはいわず、独自の付加価値サービスや料金設定など“サービスの独立性が高い”ことが要件となるわけである。フランスの電気通信監督機関ARTは仮想移動体通信事業の定義として狭義の解釈を採用しており、欧州の最近のマスコミでは狭義の解釈が主流になってきているようだ。
 ドイツでは、英国でのヴァージン・モバイルの仮想携帯電話事業の開始以前より、独モビルコム、独デビテル、独ハッチソン・テレコムが、既存携帯電話事業者が提供しているサービスをそのまま販売している。例えば、モビルコムは、1992年以来、独マンネスマン・モビルフンク(現ヴォダフォン、独第2位)、独Tモビル(ドイツ・テレコム子会社、独第1位)、独Eプルス(独第3位)の携帯電話サービスの販売を行っており、モビルコムを通じた加入者数は500万件(2001年6月末)を越えている。しかし、これは広義では仮想携帯電話事業と解釈することもできるが、既存事業者のサービスの再販売(リセール)であり、狭義の仮想移動体通信事業には当たらない。以下、本稿では狭義の解釈をとっている。

(3)仮想移動体通信事業への参入の目的
 仮想移動体通信事業への参入の主な目的としては、大きく以下のようなものが挙げられる。

@

国内に既に周波数の割当を受けた既存の携帯電話事業者が存在し、新たな周波数帯域の割当は受けられないが、当該国において大規模に携帯電話事業を展開したい場合(マス市場型)。新規参入者が、他業種で既に消費者に対して強力なブランドや販売網を有している場合が、このケースの代表的なタイプと考えられる。英ヴァージン・モバイルは1999年11月から仮想移動体通信サービスを開始し、加入者数は120万件(2001年9月末)を越えている。狭義の仮想移動体通信事業者ではないが、独モビルコムのような大規模な再販業者も本類型に準じて整理することができると思う。
 このようなケースでは一般的に、仮想移動体通信事業者側は自前のネットワークを有する携帯電話事業者に発展することを希望する傾向にあるようであり、新規参入枠が設定された次世代携帯電話事業では、モビルコムはドイツでの事業権を獲得している。ヴァージンも英国での次世代携帯電話事業権の入札に参加したが、こちらは落札価格の高騰により断念を余儀なくされた。

 
A

長距離系NCCが、自社回線の通信トラフィックの増加をねらって仮想移動体通信事業に進出する場合。NCCが固定電話サービスを提供している場合は、固定電話サービスと携帯電話サービスを一括契約し、割安なサービスや料金一括請求サービス等を提供することにより、顧客を固定化することも戦略となっている。英エナージスや英ワン・テルがこれに当たる。

 
B

欧州では近年、企業買収により電気通信事業者の国外への進出合戦が活発に行われてきており、現在では概ね系列化が完了した感がある。従って、今後事業権を有しない国に進出し、自社の国際ネットワークを構築するためには、仮想移動体通信に寄らざる得ない。テレ2や、フランスでの携帯電話子会社を有しないドイツ・テレコムが同国に進出しようとしているケース、さらには外国企業が日本に進出しようとしているケースがこれに当たる。

 
C

コンテンツ事業と結びつけるなど、付加価値をつけた携帯電話サービスを提供する場合。この場合は、付加価値部分と携帯電話サービスを合体させることに意味があり、当該付加価値を必要とするユーザが対象であるため、一般的に携帯電話サービス自体の規模はそれほど大きくはならないと考えられ(ニッチ市場型)、中小規模でも携帯電話サービスに進出できる仮想移動体通信の特徴を活かしたケースと言える。英FTモバイルがこれに当たる。

 
D

次世代携帯電話(第3世代)事業権を獲得した事業者であって、現行のGSM携帯電話(第2世代)事業権を有しない事業者が、GSM携帯電話サービスを始める場合。次世代携帯電話では、現行の携帯電話より事業者数が増えるため、新規参入者が存在している。しかし、欧州では次世代携帯電話サービスの開始が当初より遅れる見通しであるため、これらの新規参入者は早期にサービス提供が開始できない。一方で、GSM上での高速サービスであるGPRS(第2.5世代)が昨年後半から開始され、次世代携帯電話につながるモバイル・インターネット・サービスの切り札として期待されている。このため、新規参入者にとっては、次世代携帯電話のサービスが立ち上がるまで待っていては、モバイル・インターネット・サービスに乗り遅れ、他社にユーザを囲い込まれてしまう恐れがあるため、とりあえず次世代携帯電話までのつなぎとして、仮想携帯電話事業によりGPRSサービスを提供する必要に迫られている。独クバム(テレフォニカ・モビレスとソネラの共同子会社)や西エクスフェラ(仏ヴィヴェンディ=ユニバーサル系)のGPRSサービスがこれに当たる。



(4)既存の携帯電話事業者にとってのメリット・デメリット
 仮想移動体通信事業が成立するかどうかは、既存の携帯電話事業者が通信容量の卸売りを受け入れるかどうかにかかっており、以下に既存事業者側にとってのメリット・デメリットを列挙する。

<メリット>
・仮想移動体通信事業者に余剰帯域を販売することにより、インフラの無駄を省き、売上増加につながる。

<デメリット>
・仮想移動体通信事業者が携帯電話市場のシェアを奪い、既存の携帯電話事業者自身のライバルになる恐れがある。
・携帯電話サービスを提供する事業者数が増えることにより、料金引き下げ競争に拍車がかかる恐れがある。
・仮想移動体通信事業者の加入者数が増えれば、ネットワークが飽和状態となり、ネットワークを貸した既存の携帯電話事業者側の回線品質が低下したり、事業拡大に支障が生じる恐れがある。

 既存の携帯電話事業者にとって、最近までは自社の加入者数の増加が最大の課題であったため、仮想移動体通信事業に対しては門戸を閉ざしていた。しかし、ヴァージン・モバイルの成功は、新規参入者への仮想移動体通信事業への関心を高めることになった。つまるところ、既存の携帯電話事業者側にとっては、仮想移動体通信の受け入れ如何は、自社のインフラの通信容量の余剰がどの程度あるかが、大きな判断要因の1つとなるのであろうが、概してニッチ市場型には前向き、加入者を奪われる恐れがあるマス市場型に対しては後ろ向きである。このため、マス市場型では、近い将来にヴァージン・モバイルに次ぐ事例が現れるかどうかは不透明である。

2.主要国の現状

(1)英国
 英国は、欧州における仮想移動体通信の発祥国であり、現在も欧州でこのような事業形態が最も広まっている国である。自社回線を有する既存のGMS携帯電話事業者は4社であり、ヴォダフォン、mmO2(旧ブリティッシュ・テレコム・ワイヤレス)、オレンジ(フランス・テレコム子会社)が1位の座を凌ぎ合い、ワン2ワン(ドイツ・テレコム子会社)がこれに続く3強1弱の状態となっている。英国では、ワン2ワンに次いでmmO2が仮想移動体通信の受け入れに積極的になっており、オレンジとヴォダフォンも門戸を開きだした。以下に、主な仮想移動体通信事業者を挙げる。

@ ヴァージン・モバイル(3.(1) に事例紹介)
ヴァージン・モバイルは、英国の企業グループであるヴァージン・グループと、英4位の携帯電話事業者であるワン2ワンの折半出資により1999年6月に設立され、1999年11月に欧州で初めて仮想移動体通信サービスを開始した。サービス開始後約1年で急成長を遂げ、現在では英国第5の携帯電話事業者といってよい地位を確立した。
 
A ワン・テル
BTワイヤレス(現mmO2)と2000年11月に契約し、2001年春から仮想移動体通信サービスを開始。同社傘下の固定電話の加入者とインターネット加入者に、携帯電話サービスとの一体利用を呼びかけている。
 
B エナージス
エナージスは英電力ナショナル・グリッドの子会社である。同社は、2000年7月にオレンジと3年間の回線利用契約を結び、一方オレンジもエナージスの通信回線を使用する契約を行なった。顧客サービスやテクニカル・サポートはオレンジが担当する。本件は、電力会社が通信事業に進出した事例である。
 
C テレ2
スウェーデンの電気通信事業者。スウェーデンでの携帯電話事業(商標はコンヴィック)では加入者数220万件(2001年6月)を有する。2000年12月にデンマークで仮想携帯電話事業を開始し、欧州各国への進出を進めている。携帯電話事業権を有しない国では、仮想携帯電話事業を展開することにより、汎欧州ネットワークの構築を目指している。
 
D FTモバイル(3.(2) に事例紹介)
2001年秋からサービスを開始した。専門コンテンツの仮想移動体通信事業者の先行例として注目されている。
E トランサテル(本節のフランスの@を参照、3.(3) に事例紹介)


 上記の他、英国にはKingstone Communications、Viatel、Redstone Telecom、World Access Communications等の仮想移動体通信事業者がある。

(2)フランス
 フランスでは、これまで、自社回線を有する既存のGSM携帯電話事業者が、仮想移動体通信事業に警戒感を有してきたことから、現時点では仮想携帯電話事業は始まったばかりの段階である。既存の携帯電話事業者は3社であり、オレンジ(フランス・テレコム子会社)はシェア48%、SFR(ヴィヴェンディ・ユニバーサル子会社)はシェア34%、ブイグ・テレコムはシェア18%と、1位、2位、3位の順が明確となっている。これら3社の中では、最下位のブイグ・テレコムが仮想移動体通信事業を最も早く受け入れ始めた。SFRは、2001年夏になりようやく全体方針としては門戸を開放する方向に方針を転換し始めたものの、個々の交渉は難航している。最大手のオレンジは、現時点では前向きな態度はない。フランスで昨夏から始められた個々の仮想移動体通信事業契約の交渉はほとんど合意に至っていない。

@ トランサテル(3.(3) に事例紹介)
国外ローミング料金の割引を売り物にしたニッチ市場向けサービスを行うフランス事業者。2001年6月より英仏で試験サービスを開始。
 
A アンテルカル
ブイグ・テレコムが初めて仮想移動体通信事業契約を結んだ事業者。伊プロバイダーのティスカリの子会社。
 
B テレ2(本節の英国のCを参照)
テレ2のフランスへの進出の企ては2000年6月に開始され、最初はブイグ・テレコムと回線利用の協議が行われたが物別れとなり、現在他の事業者とも交渉しているが、交渉は難航している。


 新しい形のビジネスとして、フランスのコンサルタント会社のヴァロリスが中心となり、各国の携帯電話事業者から通信ネットワークを一括して借り受け、ニッチ市場型の仮想移動体通信事業への進出を希望する複数の事業者に通信容量を分割して貸し出すMPLE(M-Private Label Enabler)プロジェクトが進められている。

(3)ドイツ
 ドイツの自社回線を有する既存のGMS携帯電話事業者は4社である。Tモビル(ドイツ・テレコム子会社)とヴォダフォンの独国内加入者はそれぞれ2,000万人を越え、これらから大きく離れてEプルス(蘭KPN子会社)とフィアック・インターコム(ブリティッシュ・テレコム子会社)が続くという、2強2弱の状態となっている。前述したように、ドイツでは、英国での仮想携帯電話事業の登場以前より、モビルコム、デビテル、ハッチソン・テレコムが、上記既存事業者のサービスの大規模な再販売を行っている。しかし、これらは狭義の仮想移動体通信事業には当たらず、現時点では、ドイツでは仮想移動体通信事業は発展していない。

○ クバム
 同社は次世代携帯電話の事業権を有しているが、そのサービス開始までのつなぎとして、2001年11月にGSM上での仮想移動体通信事業を開始した。次世代携帯電話サービスの開始の前に、ユーザを確保することとと、ブランドを浸透させることを狙っている。Eプルスの回線を使用。


3.仮想移動体通信事業者の事例

(1)マス市場型(ヴァージン・モバイル)
 ヴァージン・モバイルは、欧州初の仮想移動体通信事業者として1999年11月のクリスマス商戦時にサービスを開始した。同社は、ヴァージン・グループとワン2ワンの折半出資により設立された。ヴァージン・グループは、DVDやCDなどの映像・音楽商品を販売し若者層の人気が高いバージン・メガストアや、航空会社ヴァージン・アトランティックなどを運営する企業グループである。一方、ワン2ワンは、英4位の携帯電話事業者であるが、加入者数で他3社に大きく水を開けられており、加入者数増加が課題となっていた。そこで、移動体通信への進出を希望するバージン側と、バージン・メガストア等の販売力により加入者獲得を期待するワン2ワン側の利害が一致して設立されたのがバージン・モバイルである。
 ヴァージン・モバイルは、既存の携帯電話事業者よりも安い料金と若者層向けのコンテンツにより急速に成長した。サービスへの加入は、電話やインターネットでの申し込みに加え、ヴァージン・メガストア、ギフト・レジャー販売チェーンのV.Shop、携帯電話販売チェーン店Our Priceという強力な販売網を通じて行なわれている。SIMカードには通常よりも性能が高い32キロビットを使用し、送受信能力を高めている。2000年秋には、既存の携帯電話事業者4社をさしおいて、英国の携帯電話雑誌「Mobile Choice」の年間最優秀オペレータに輝き、知名度を一気に上げることに成功した。採算性確保のための当面の加入者目標を、2002年で150万件に設定しているが、順調に加入者が増加している。また、ヴァージン・モバイルでは、顧客サービスの充実にも力を入れており、「Mobile Choice」誌の2001年最優秀カスタマー・サービス・プロバイダー部門で第1位となっている。

<ヴァージン・モバイルの加入者増加の推移>
 1999年11月   サービス開始
 2000年 1月   15万件
 2001年 1月   75万件
 2001年 6月   101万件
 2001年 9月   120万件

 ヴァージン・モバイルは英国での仮想移動体通信事業の成功に続き、オーストラリアではOptusと、シンガポールではSingtelと提携して、仮想移動体通信サービスを開始した。ブランソン会長は、世界ネットワーク化を構想しており、米国、インド、中国、香港への進出を計画している。

(2)ニッチ市場型1(FTモバイル)
 ヴァージン・モバイルと異なり、より専門性の高いニッチ市場向けの仮想移動体通信事業者の先行事例として、経済新聞のファイナンシャル・タイムズが英国の携帯電話販売会社カーフォン・ウエアハウス・グループと折半出資で2001年3月に設立したFTモバイルがある。
 FTモバイルのサービスは、企業経営者や上級管理職を対象としたもので、経済・金融ニュースの速報が自動配信される。配信されたニュースに関心を持った場合は詳細情報を見ることができる。もちろん、一般のニュース、スポーツ・ニュース、ゲームなども呼び出すことができる。
 回線はmmO2を利用しており、加入申し込みと端末機購入はカーフォン・ウエアハウスの店舗で行なう。

(3)ニッチ市場型2(トランサテル)
 トランサテルは、事業規模自体は小規模であるが、複数の国で仮想移動体通信事業を行うことにより自社の国際ネットワークを構築し、ユーザに対して外国での通話料金を割り引く等により、国外出張など国外での使用頻度が高いビジネスマン等のユーザに目を付けたニッチ市場でのサービスを目指している。

<トランサテルのサービス>

  • 国外からの電話料金を30〜70%割引
  • 統合メッセージ・サービス:パソコン、携帯電話、固定電話のいずれからでもメッセージにアクセス可能。
  • ホテル、飛行機、列車、タクシー、レンタカー等の予約が容易、等 2001年6月から、英仏において試験サービスが開始されており、その他の国にもサービス範囲が拡大される予定。

 回線は、フランスではブイグ・テレコム、英国ではワン2ワンを利用している。なお、同社は、携帯電話事業者から借りた回線を他の事業者に再販し仮想移動体通信サービスの管理を行なうビジネスも検討している。

4.終わりに

 欧州では当面、仮想移動体通信事業者が徐々に増加していくものと思われる。現行のGSMベースでは価格以外の差別化は容易ではなく、価格の差別化自体も料金値下げ競争により大きな利益をあげることは容易ではないと思われるが、次世代携帯電話サービスが開始されれば、このような事業形態が大きく発展するのではないかと予想される。次世代携帯電話については、各社とも多額の事業権料の支払いや設備投資を行っていることから、できるだけ早期の売上の確保に迫られているが、一方で一般ユーザが第2世代から第3世代に移行するには時間を要するため、サービス開始当初は通信容量に大きな余剰が発生すると考えられる。このため、少なくともこのような時期には、各社とも仮想移動体通信事業者の参入を積極的に受け入れる方向になるのではないかと考えられるためである。新規参入側にとっても、次世代携帯電話はマルチメディア通信のツールであるため、コンテンツ提供と結びつけること等により、仮想移動体通信事業への進出を望む事業者が増えるのではないかと思われる。
 一方、我が国では現在、仮想移動体通信事業は一般化していない。しかし、日本では欧州と異なり既にモバイル・インターネットが普及し、次世代携帯電話サービスも開始されていることから、ISPやコンテンツ・プロバイダーなどの異業種からの参入も含め、仮想移動体通信事業への潜在的参入予備軍は少なくないのではないかと想像される。仮想移動体通信にはベンチャー企業の参入も不可能ではなく、今後我が国においてもこのような事業形態が多く現れてくれば、電気通信業界の競争の更なる活発化と、ユーザに対してより多様なサービスの提供がなされることが期待される。


U.産業動向

<欧州:欧州最優秀ITベンチャー企業が決定>
 昨年11月に、欧州委員会とEuro-CASE(欧州応用科学技術評議会)は、ITを活用した優秀な製品・技術に対して与えられる欧州情報社会技術賞(European IST Prize)の受賞企業20社を発表したが、さらにこの内から3社が最優秀賞(European IST Grand Prize)が決定され、12月3日に独デュッセルドルフで開催されたIST2001イベントにおいて発表された。受賞企業は以下の通り。

・MISON社(ノルウェー):脳外科手術用3Dナビゲーション・システム ・VIRTOOLS社(フランス):三次元コンテンツ開発プラットフォーム ・ECO-DAN社(デンマーク):コンピュータ画像とレーザ技術を用い、除草剤の使用量を削減するトラクター誘導システム  欧州委員会のリッカネン委員からは、受賞者をたたえるスピーチの中で、ベンチャー企業はリスクを伴うものであり、起業家が一度失敗しても再度チャレンジできるような社会に欧州が変わって行くべきとの話があり、ベンチャー企業を取り巻く環境において欧州もわが国と同様の問題を抱えていると感じた。

IST2001
IST2001イベントにおける授賞式の模様(筆者撮影)

<欧州:パソコン市場>
 欧州における2001年のパソコンの売上高は前年比6%程度の減少(実績見込み)であり、2002年半ばまで売上が回復するとの予想はない。企業向け市場では、大企業はパソコン購入を延期もしくは取りやめる傾向にある。消費者向け市場でもパソコン市場は縮小している。

<チェコ:次世代携帯電話事業権が決定>
 チェコの次世代携帯電話事業権が決定した。落札社は以下の2社。なお、チェコ第3の移動体通信事業者であるチェスキー・モバイル(加TIW子会社)は、今回の入札には応じなかった。 ・ラジオモバイル(ドイツ・テレコム子会社) ・ユーロテル(チェコ・テレコム子会社)


V.政策動向

<EU:競争力に関する報告書を発表>
 欧州委は産業界の競争力に関する2001年度報告書を発表し、欧州企業はイノベーションやITをはじめとするニューテクノロジーの活用で米国企業に遅れをとっており、これが競争力の格差拡大を招き、GDPが米国の2/3以下となっていると指摘した。労働生産性の優劣がこうした格差を生んでいると分析し、この生産性の格差は、技術革新への取り組み、ニューテクノロジーの活用、職業教育等の分野における遅れに起因しているとしている。

<欧州:電子政府>
 11月30日、ベルギーのブリュッセルで、EU、EFTA及びEU加盟申請国の電気通信相による会合が開催され、電子政府構築に向けて注力する方針で合意した。なお、欧州各国におけるインターネットを通じた公共サービスへのアクセス状況については、アイルランド、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、スペイン、英国、ポルトガルなどが成果をあげていると評価された。



(C)Copyright JEITA,2002