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パリ駐在員報告
 【 2002年2月号 】



 欧 州 動 向
   〜 英仏独の電子政府に関する政策の概要と仏の最新動向 〜


J.英仏独の電子政府に関する政策の概要と仏の最新動向

 英仏独では2005年に向けて電子政府構築の取り組みが行われている。一方、EUのeEurope計画では電子政府が重要課題の1つとして採り上げられているが、現時点での公式の行動計画であるeEurope2002行動計画において各加盟国に対して設定されている政策目標は2002年末を期限としたものであり、内容的にはそれほど詳細化されておらず、高度な目標でもない。eEurope2002行動計画以降の取り組みについては、昨年11月にブリュッセルでeGoverment大臣会合が開催され、大きな方向性についての議論がなされ、EUレベルでの更なる取り組みの重要性が確認されたところである。このような取り組みとなっているのは、EU加盟15ヶ国の状況は様々であり、実現困難な高度すぎる目標を設定しても意味がないことから、比較的近い将来の目標を設定し一歩一歩着実にIT化を進めていく方式をとっていることとと、実際の取り組みにおいては個々の加盟国政府の役割が大きいことから、EUレベルとしては大目標を掲げ、加盟国の具体的な取り組みを促すという役割であるためと考えられる。
 このため、比較的中長期間で全体としてどのように電子政府を構築していくかという政策目標については、eEurope計画ではなく個別の国について見てみる必要がある。
 欧州ではノルウェーをはじめとする北欧、オランダで電子政府の取り組みが進んでいるようであるが、これは一般に欧州では北に行くほどITが進んでいることと、人口の少ない小国では新システム導入の小回りが利きやすいということに起因していると思う。人口の多い主要国では、これら小国ほど取り組みは進んでいないが、欧州全体に与えるインパクトしては、主要国について見てみる必要があろう。このため、本稿ではまず、主要国として英国、フランス、ドイツについて電子政府に関する政策を概観する。続いて、実際にどの程度取り組みが進んでいるかであるが、進捗状況を簡単に数字で表せるわけではなく非常に評価しにくいため、これら3国の代表としてフランスの現状について解説する。各種調査の情報を総合すると、英仏独での進捗状況は概ね同程度と考えられるため、フランスの状況から欧州主要国の状況が概ねお分かりいただけるのではないかと思う。

1.英仏独の政策の概要

 一口に電子政府と言っても、その対象範囲は広い。ここでは、@行政情報の電子的提供、A申請・届出等の行政手続きの電子化、B決済の電子化、C政府調達手続きの電子化、D行政事務の電子化の5つに分類して整理した。@は市民や企業が行政情報をインターネットを通じて入手するという一方向の情報流通であり、電子政府の最も基本となる段階である。Aは、市民や企業がインターネットを通じて行政側に申請や届出等も行えるという双方向の関係である。Bは、Aに加えて納税等の電子決済も行える段階である。CとDは、@〜Bとは概念が異なり、Cは政府調達手続き等の公共市場のインターネット化であり、Dは政府組織内の電子化である。
 @〜Dについて、英仏独の政策目標を以下に簡単にまとめた。これらは、各国政府の公式の電子政府計画及び担当省からの回答をまとめたものである。なお、分野毎の個別の目標がない場合は、全体の共通目標を記述した。

@行政情報の電子的提供

英 国 2005年までに、政府サービスの全てをオンライン化する。
フランス 2005年までに、個人、企業、各種団体向けの全ての行政情報をオンライン化する。
ド イ ツ 2005年までに、政府サービスの全てをオンライン化する。


A申請・届出等の行政手続きの電子化

英 国 2005年までに、政府サービスの全てをオンライン化する。
フランス 2005年までに、個人、企業、各種団体向けの全ての政府サービスをオンライン化する。
ド イ ツ 2005年までに、政府サービスの全てをオンライン化する。


B決済の電子化

英 国 2005年までに、オンライン決済を可能とする。
フランス 2005年までに、税・社会保障関連のオンライン決済を可能とする。
ド イ ツ 2005年の実現を目標に、決済電子化の実施方法を調整していく。


C政府調達手続きの電子化

英 国 2002年までに、中央政府の調達手続きを完全に電子化する。
フランス 2005年までに、中央政府、地方出先機関、地方自治体の全てにおいて、公共市場の電子化を完了する。
ド イ ツ 2005年の実現を目標に、2002年初頭に「オンライン資材調達・購入を実験的に行い、その後各省がどのように実施していくかを決定する。


D行政事務の電子化

英 国 2005年の政府サービスの完全オンライン化を目指し、行政事務の電子化を促進する。2004年までに、新たに作成された公文書を電子的に保存し、かつ、呼び出せるようにする。
フランス 2005年までに行政事務を電子化する。
ド イ ツ 2005年を目標に行政事務を電子化する。


(1)英国
 2000年3月、ブレア首相は「2005年までに政府サービスの全てをオンライン化する。」との目標を発表した。サービス・オンライン化の目標年はそれまで2008年だったため、3年間の前倒しをはかる当時として意欲的な政策であった。その後の情報化施策のトータル・パッケージであるUKオンラインにおいてもこの目標は引き継がれ、現在に至っている。
 英政府によれば、2001年11月現在の政府サービスのオンライン化率は42%である。また、政府サービスのオンライン化に並んで、はっきりとした目標年が打ち出されたものとして政府調達手続きがあり、UKオンラインの中において「中央政府の調達手続きを、2001年までに50%、2002年までに100%電子化する。」との目標が掲げられている。しかし、政府商務局(Office of Government Commerce)によると、政府の電子調達に関しては、2001年現在でも実験的試行段階にあり、今後の実験結果も交えて2002年6月に最終報告書が提出され、これが本格実施に向けての技術的な指針となる予定である。
 英政府のオンライン・サービスの統一ポータル・サイトは、http://www.ukonline.gov.ukである。

(2)フランス
 1998年1月に、ジョスパン政権誕生後初めての総合的IT政策である「情報社会に向けた政府行動計画」が策定され、この中の6つの優先分野の1つとして電子政府が設定された。2000年10月には、国家改革省庁間委員会で電子政府に関する具体的政策が発表された。2001年8月に、サパン公務員・行政改革大臣は、電子政府についてのフランスの諸外国に対する遅れを取り戻す第一段階は終了したとした上で、第二段階として2005年までに全ての行政手続きをオンライン化するという新たな目標を設定した。この第二段階は、2001年11月の国家改革省庁間委員会で正式に承認されスタートした。
 仏政府のオンライン・サービスの統一ポータル・サイトは、http://www.service-public.frである。

(3)ドイツ
 1999年9月に、シュレーダー政権誕生後初めての総合的IT政策である「21世紀の情報社会におけるイノベーションと雇用」が発表され、この中で電子政府構築の必要性が指摘された。これに続き、2000年9月にシュレーダー首相が情報化社会促進行動計画「Internet for all」を発表し、この中の10項目の1つである電子政府イニシアチブ「BundOnline 2005」(連邦オンライン2005)が現在の電子政府に関する政策のベースになっている。BundOnline 2005は、市民向け、企業向け、行政内部の3点から電子政府促進をうたった計画で、実現の目標年を2005年に設定している。連邦政府の1,200にのぼるサービスについて、2005年までにインターネットを通じてサービスを受けられるようにしようというものである。2001年11月には、BundOnline 2005の新たな取り組み施策が決定されている。
 実施面においては、内務省内にBundOnline 2005のプロジェクト・チームが設けられ、このチームが例えばどの行政サービスを優先的にオンライン化するのか、どの技術規格を採用するのかといったことを検討し、電子政府の構築を進めている。この他、内務省は2006年には地方選挙でのオンライン投票を実施する方針で準備を進めている。
 独連邦政府のオンライン・サービスの統一ポータル・サイトは、http://www.bund.deである。

2.フランスの電子政府構築の現状

(1)行政情報の電子的提供
 まず、インターネットを通じた行政情報の提供についての取り組み状況として、フランスの公的インターネット・サイト数の推移を見てみる(表1)。昨年1月から10ヶ月間でサイト数は38.2%増加している。中央政府のサイトは既に整備された機関が多く伸び率が小さいのに対して、地方自治体のサイト開設が目立っている。

表1 公的インターネット・サイト数の推移
  2001年 1月 2001年10月
総  数 2,937 4,059 (+38.2%)
中央政府 626 733 (+17.1%)
地方自治体 2,311 3,326 (+43.9%)
地域圏 264 421
390 657
市町村 1,657 2,248
(出所)公務員・行政改革省のホームページ
(注)地域圏は、例えば近畿地方といった“地方”に相当する。
2000年以前については、データがない。

 また、2000年7月の第3回情報社会省庁間委員会において、2003年までに公共アクセス・ポイントの数を7,000箇所に拡大する目標を設定しており、2001年3月の1,600箇所から半年後の2001年9月には2,300箇所まで増加している。
 公的サイトへのビジター数は、1999年から2000年にかけて倍増したと言われているが、利用状況をより正確に把握するために、今年から中央政府と地方自治体の全てのサイトを対象とする利用状況調査が開始される予定である。

(2)申請・届出等の行政手続きの電子化
 フランス政府は、2005年までに、個人、企業、各種団体向けの全ての政府サービスをオンライン化する計画である。

@手続用紙のオンライン入手
 フランスの行政関係の手続用紙は約1,700種類あるが、2001年9月現在で1,103種類がインターネットを通じて入手できるようになった(表2)。オンライン化率は64.5%で、使用頻度の高いものについては全てオンライン化されている。表2より、2001年にオンライン化が大きく進んだことがわかる。政府は用紙のオンライン化と並行して、行政手続き自体の整理・簡素化を進めており、例えば2000年5月から同9月の間に手続用紙数が24.5%も減少している点が副次効果としておもしろい。
 オンライン上で入手可能な用紙の例としては、個人用では、パスポートの申請用紙、自動車免許用紙、IDカードの申請用紙、法人用では、公共市場(政府調達等)の入札応募用紙、建設許可の申請用紙などが挙げられる。

表2 オンラインで入手可能な行政手続用紙数の推移
  2000年 5月 2000年 9月 2001年 1月 2001年 9月
全用紙数 2,194 1,656 1,650 1,705
オンライン化数 511 643 643 1,103
オンライン化率 23.3% 38.8% 39.0% 64.5%
(出所)公務員・行政改革省のホームページ

Aオンライン手続き
 2001年10月現在で、100種類の行政手続きがオンライン上で可能となっている。うち、個人向けが80種類、法人向けが20種類である。以下にその例を示す。なお、以下の例には次項の決済を伴う手続きも含む。

【 個人向けサービス 】
証明書
  ・戸籍抄本の請求
  ・刑事犯罪前科簿抄本の請求
税金
  ・所得申告
  ・所得税の支払いと月賦払い手続き
雇用
  ・職業安定所の求人広告への応募
  ・公務員募集への応募
  ・中学校・高校教員採用試験の申込
教育
  ・奨学金の申請
  ・学生の住宅援助手当の申請
ボランティア
  ・海外ボランティアへの志願
  ・海軍見習い士官への志願

【 法人向けサービス 】
税金
  ・付加価値税(消費税に相当)の申告と支払い
  ・政府関係請求書のオンライン送付システムの利用申請
EU域内貿易
  ・貿易申告
雇用・社会保障
  ・雇用申請
  ・社会保障申請
統計
  ・工業生産統計のデータ提出

(3)決済の電子化
 フランスでは納税のオンライン化が始められつつある。現時点では、所得税、付加価値税、住居税、不動産税、事業所税の支払いが可能となっている。フランス政府は、2005年までに、税・社会保障関連のオンライン決済を可能とする計画である。
 所得税については、1998年にオンライン上で関連情報の入手と所得税の計算が可能となった。1999年には所得申告に必要な用紙がダウンロードできるようになり、2000年春には、オンラインでの所得申告が可能になった。そして、2001年7月からは、所得税のオンライン納付が可能となった。
 付加価値税は、わが国の消費税に相当するものであり税率は19.6%である。事業者は、消費者から徴収した付加価値税を国庫に納付するわけであるが、2001年4月より、このオンライン納付が可能となった。売上高1億フラン(約17.5億円)以上の企業約17,000社については、2002年1月よりオンライン納付が義務付けられている。
(4)政府調達手続きの電子化
 フランスでは、2005年までに、中央政府、地方出先機関、地方自治体の全てにおいて、公共市場のオンライン化を行う計画である。2001年9月には、電子入札による政府調達を行うためのルールを定めた政令が整備された。ただし、実際の取り組み状況としては、インターネットを通じた情報提供や申請用紙の提供は開始されているが、電子入札については実験段階にある。
 設備・運輸・住宅省は、2001年に公共市場の入札に関する専門サイトSAOMAP(http://saomap.cstb.fr)を立ち上げた。現在は、中央政府の一部及び地方出先機関の一部が同サイトを通じて入札応募要項の配付を行なっている段階であるが、将来的には、2005年を目標としてインターネットを通じたオンライン入札を可能にすることが計画されている。政府は、今後、同サイトを、他省庁が実施する入札や、地方自治体が実施する入札にも参加を広げてゆく方針である。
 一方、経済・財政・産業省は公共市場のオンライン化推進のため、自省のサイトを通じて、公共市場の情報提供を進めているが、現時点では書類申請のオンライン化には至っていない。
 電子入札については、2000年に国防省の兵器総局とオワーズ県が技術的検討に着手した。2001年7月には、経済・財政・産業省が電子入札の本格的な実験を初めて実施した。この実験では、オフィス用消費財(年間調達量の6分の1相当分)、2002年度用の文房具、運搬用段ボール(年間調達量の2分の1相当分)の3件について、電子入札にかけられた。入札はインターネット上で約1時間にわたりリアルタイムで実施された。この実験は、上記の電子入札に関する政令を準備する一環として実施されたものである。

(5)行政事務の電子化
 行政事務の電子化については、公的文書には目標年は設定されていないが、公務員・行政改革省は目標年を2005年としている。個別の取り組みについては、電子政府構築の計画の中で言及されている。
 1991年1月の第2回情報社会省庁間委員会では、地域圏及び県レベルで行政機関をネットワーク化する「国土情報システム(SIT)」を導入することが決定された。2001年10月現在で、全県で同システムの導入が完了しており、今後は地域圏での導入が進められる。2000年10月の国家改革省庁間委員会では、省庁間横断で中央省庁と地方出先機関をネットワーク化する「vit@min」を設置することが決定された。
 一方、省庁別のIT導入の取り組みとしては、内務省は市町村と県の間でのオンライン化の実験を行った。市町村の条例等の行政文書はその適法性のチェックを受けるため一旦県庁に提出されるが、これをオンライン化するべく、ローヌ県、ソーヌ・エ・ロワール県、イヴリーヌ県、ドゥー・セーブル県の4県で2000年秋に3ヶ月間にわたり実験が行われた。実験結果をもとに、2002年以降に各自治体への本格導入が計画されている。また、教育省は、教育省と各教員の間の連絡を円滑化するため「i−プロフ計画」を進めている。各教員がネットワークを通じて、行政文書の閲覧、必要書類の提出、テーマ別のガイダンス等をオンラインで行えるようにするものである。現在は試験段階であるが、2002〜2003年に本格導入が目指されている。

3.たわごと

 上記のように、フランスでは、各種の行政機関が一斉に電子政府構築に向けて取り組みを始めている。
 ところで、筆者は欧州各国の動向を調べるために、各国のウェブサイトをネットサーフすることがよくあるが、ドイツのサイトでは英語版を用意しているケースが意外と少ない。ドイツでは街中では英語がよく通じるのに不思議である。一方で、フランスでは街中では英語が通じにくいが、ウェブサイトでは比較的英語版が整備されているように思う。小生はドイツ語は全く解しないので、チンプンカンプンである。ドイツ語サイトは駐在員泣かせである。しかし、考えてみれば、わが国のサイトも外国人から見て似たようなものなのかもしれない。


K.産業動向

1.インターネット

<蘭:KPN、今春iモードを導入>
 オランダの携帯電話事業者KPNモバイル(NTTドコモが15%出資)は、NTTドコモと、iモードのライセンス契約を締結した。KPNモバイルは、今春からiモード・サービスを開始する予定である。

<仏:アルカテル、スカイブリッジ計画を凍結>
 仏アルカテル社が中心となって進めてきた衛星インターネット計画「スカイブリッジ」が凍結された。この計画はテレデシック計画と並ぶもので、80基の低軌道周回衛星を打ち上げ、高速インターネット・サービスを提供するというものであった。同社は、「金融市場が大規模な通信計画に資金を提供しなくなったため」と凍結理由を説明している。

2.テレコミュニケーション

<モナコ:欧州で初の次世代携帯電話サービスが開始>
 モナコ・テレコム(ヴィヴェンディ・ユニバーサル傘下)は、昨年12月より、欧州で初めて次世代携帯電話の試験サービスを開始した。

<スウェーデン:次世代携帯電話サービスが開始>
 スウェーデンの携帯電話事業者ユーロポリタン・ヴォダフォンは、同国南部のカールスクローナで、昨年12月より、次世代携帯電話サービスを開始した。

3.コンピュータ

<欧州:欧州企業のコンピュータ責任者の団体設立>
 仏大企業情報クラブ(CIGREF)の提案で、欧州10ヶ国の企業のコンピュータ責任者の団体としてユーロCIO(ユーロ・チーフ・インフォメーション・オフィサー)の設立が12月13日にブリュッセルで発表された。本団体の設立の目的は、情報システムのユーザ側として、情報システム事業者、情報コンサルタント事業者、電気通信事業者などの納入業者に対して常日頃有している不満等について、ユーザ側の利益を代表することである。同団体は今後、コンピュータ契約の改善、経験の共有、ロビー活動などを行っていくとしている。


L.政策動向

<EU:第6次フレームワーク計画、採択される>
 昨年12月、欧州研究担当相理事会で、EUの研究開発促進施策である第6次フレームワーク計画(2002〜2006年)が採択された。予算総額は162億7,000万ユーロで、うちIT関係は36億ユーロとなっている。なお、現行の第5次フレームワーク計画(1998〜2002年)は、今年で終了する。



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