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パリ駐在員報告
 【 2002年5月号 】



 欧 州 動 向
   「欧州のIT研究開発政策」 〜 フレームワーク計画とユーレカ計画 〜


1.はじめに

 欧州レベルでの産業界の研究開発に対する助成金の交付による2大支援スキームには、@ EUのフレームワーク計画と、A ユーレカ計画がある。現在、第6次フレームワーク計画の策定作業が最終段階に入っているところであり、今回は、この検討状況と併せて、これらの計画におけるIT分野の概況について報告する。
 フレームワーク計画とユーレカ計画については、これまでも何度か本稿において採りあげたため、詳細な説明は省略するが、概要は次の通りである。
 フレームワーク計画は、欧州委員会が助成金を支出する市場前段階における研究開発に対する支援スキームである。1984年に開始されて以来、4年毎の計画が繰り返される形で進められ、2002年は第5次フレームワーク計画(1998年〜2002年)の最終年であるとともに、2002年末からは第6次フレームワーク計画(2002年〜2006年)が開始される。IT分野については、フレームワーク計画の中にIST(Information Society Technologies)プログラムが設定され、各技術分野の中で最大の予算割合が充当されている。ISTプログラムでは、平均年2回の公募により個別プロジェクトが選定されてきている。
 一方、ユーレカ計画は、欧州委員会は原則として助成金を支出せず、各国政府が助成金を支出し合う市場指向性のある技術開発に対する支援スキームであり、1985年に開始された。プロジェクトの立ち上げを希望する民間企業は、欧州内のパートナーに自らコンタクトすると同時に、自国のユーレカ事務局(多くは産業省や研究省に置かれている)を通じ、政府レベルでの共同研究開発プロジェクトが準備される。この準備作業には、各国政府からその国のプロジェクト・メンバーに対する助成決定も含まれる。こうした準備を受け、ユーレカ加盟国の各コーディネート事務局がラベル認定プロジェクトを推薦し、ユーレカ・ハイレベル・グループで承認されればユーレカ・ラベルが認定される。これらのプロジェクトが毎年6月終わりに開催されるユーレカ閣僚理事会で公式に発表される。
 フレームワーク計画では、優先領域として支援対象技術分野がかなり細かく設定され、その枠内でプロジェクトの公募が行われることから、トップダウン型と言われている。これに対して、ユーレカ計画では、民間企業等のプロジェクト参加者の自由な発意により個別プロジェクトが形成されるため、ボトムアップ型と言われる。ユーレカ計画では、フレームワーク計画のように全体に占めるIT分野の割合が予め設定されているわけではないため、ボトムアップの結果としてIT分野のプロジェクトは全体の6割以上を占めている。フレームワーク計画、ユーレカ計画とも、個々のプロジェクト毎に複数の国の企業/研究機関が参加し、共同研究が原則になっている点は共通である。

2.第6次フレームワーク計画の検討状況

(1)検討スケジュール

 EUのIT分野の研究開発政策(ISTプログラム)を含むフレームワーク計画については、第6次計画の準備が一昨年から開始され、2001年2月に優先テーマ領域とその予算配分を示した欧州委員会の提案が発表された。
 フレームワーク計画の検討は、従来、欧州委員会の提案を閣僚理事会が審議して採択するのが基本的なパターンであったが、近年欧州議会の権限が強化され、第5次計画の検討段階から閣僚理事会と欧州議会の双方での審議が必要になり、両者間での調整手続きが必要になった。
 2001年は、欧州委員会の提案をもとに、閣僚理事会と欧州議会とで第6次計画案の検討が進められ、現在に至っている。今後2002年半ばに、閣僚理事会と欧州議会により最終的な採択が行われる予定であり、新計画は2002年11月に開始されることとなっている。実際の第1回目の研究開発プロジェクトの公募は、2002年末か2003年初めに行われる見込みである。

(2)第6次フレームワーク計画案の全体像

 第6次フレームワーク計画案の総予算額は、162.7億ユーロ(ユーラトム計画を除く)である。第5次計画は137.0億ユーロ(同)であり、18.8%増という大幅な増加となっている。フレームワーク計画は全体として、「欧州研究エリア」の創設を目指すものと位置付けられ、@「域内研究の集中と統合」と題された優先分野ごとの研究開発活動、Aイノベーション促進、人材の育成・流動化、研究インフラ等に関する「欧州研究エリアの構造化」、B「欧州研究エリアの基盤強化」と題された域内研究開発活動のコーディネート等の活動の3つに分けられている。
 このうち中心となるのは、第一の「域内研究の集中と統合」であり、全体の約80%の予算が充てられている。この「域内研究の集中と統合」では、次のように7つの"優先テーマ領域"と"科学技術のニーズの先取り"という8分野が設けられている。

  1. ゲノム、バイオテクノロジー
  2. 情報社会技術(ISTプログラム)
  3. ナノテクノロジーとナノサイエンス、知識ベース多機能材料、新製造プロセスとデバイス
  4. 航空・宇宙
  5. 食品安全
  6. 持続可能な発展、気候変動、生態系
  7. 知識ベース社会における市民と統治
  8. 科学技術ニーズの先取り(EUの政策ニーズに適時に対応する研究開発、科学技術ニーズを先取りする研究開発、中小企業支援、国際協力)

 科学技術ニーズの先取りと性格付けられた分野は、実際には、狂牛病が発生した際に従来のフレームワーク計画予算の硬直的な性格から、必要な研究対策を講じられなかった欧州委員会が、緊急対応用もしくは戦略プロジェクト用として、具体的使途を決めないままプールすることを主に意図した予算枠である。他の7つの優先テーマ領域とは明らかに異なるこの分野に対しては、加盟国や欧州議会からも曖昧な予算枠として批判が出ている。
 また、第6次フレームワーク計画の検討においては、計画の運営・実施に際しての"新たな方式"について議論が行われている。注目されるのは、@Integrated projects、ANetworks of excellence、BEC条約第169条の適用、の3つである。これまでフレームワーク計画の個々のプロジェクトは小規模であり、政策効果が必ずしも有効ではなかったのではないかとの反省のもと、これらの新たな方式はいずれも、特定の優先テーマについて研究活動や研究資源の"規模"を確保することを狙ったものである。
 Integrated projectsは、同様の目的を目指した複数の研究を、基礎研究プロジェクトから実証プロジェクトまでを含めて、統合して運営しようというものである。
 Networks of excellenceは、特定の優先テーマについて、欧州の産学官の研究組織を、明確な共同研究計画を通じてネットワーク化し、一定の研究規模を確保した上で、これを重点的に強化しようというものである。欧州の研究組織がお互いに連携することにより、当該テーマ領域において世界的な影響力を獲得することを目指している。
 EC条約第169条の適用は、複数加盟国政府による研究開発プログラムを共同研究開発としてまとめたうえ、これにフレームワーク計画の資金も投入(加盟国政府との共同実施)しようというものである。これについては、制度上では従来も実施可能であったが、実際にはこのような方式は採られてこなか った。
 これらの新たな方式案については、導入規模やその詳細に関して、加盟国の意見がまとまっておらず、今後の検討が注目される。

(3)第6次フレームワーク計画案におけるIT分野の位置付け

 IT分野は、第5次計画に引き続きIST(情報社会技術)プログラムとして、7つの優先テーマ領域のうち、最大の予算枠である36.0億ユーロが割り当てられている。第5次計画においてもISTプログラムの予算額は同額の36.0億ユーロであったが、第6次計画案は第5次計画に比較して計画全体の予算総額が増加していることから、ISTプログラムの全体に占める割合は低下することになる。しかし、3月のバルセロナにおける閣僚理事会で、欧州委員会に対してeEurope2005行動計画の策定が求められたように、IT政策はEUの最優先事項の一つであり、ISTプログラムの予算強化を求める声は、閣僚理事会にも欧州議会にもあったといわれる。事実、欧州委員会の提案審議に先立ち、2001年8月に発表された欧州議会委員会の報告書は、ISTプログラムの予算を39億ユーロとすることを提案していた。
 これに対して、欧州委員会側は、IT関連の研究開発は、36.0億ユーロだけではなく、「科学技術ニーズの先取り」等のISTプログラムの枠外においても実施されることになると説明している。ISTプログラムの枠外からどの程度の予算がIT関連に回されるのかは分からないが、第6次フレームワーク計画においては36.0億ユーロ+αがIT分野の研究開発に充てられることになると見られる。

(4)次期ISTプログラム

 ISTアドバイザリー・グループによる将来ビジョン"Ambient Intelligence"(自然に取り巻くインテリジェントな情報通信技術環境)に沿って、次期ISTプログラムにおいては、3つの基幹技術分野が設定され、アプリケーション開発が第4の重点分野となっている。

  1. 信頼性、普及性があり、新しいアプリケーションやサービスに適応した、モバイル、ワイヤレス、オプティカル、ブロードバンドの「通信インフラストラクチャ」と「コンピュータ技術」
  2. 微細化を極限まで進め、消費電力とコストを低下させる「マイクロエレクトロニクスとマイクロシステム・コンポーネント」
  3. 直感的操作が可能で、言葉、視覚、触覚、動作を解釈できる「ユーザ・フレンドリーなインターフェース」と、よりシンプルかつ効率的に知識へのアクセスを可能とする「次世代ウェブ技術」
  4. 主要な社会経済上のチャレンジのための応用研究及びアプリケーションの研究

次期ISTプログラムの検討に際しては、以下の点に注意が払われている。

● 一定の規模確保のための取り組みの集中と基幹技術分野の重視
 現行のISTプログラムにおいては、4つのキー・アクション(市民のためのシステムとサービス、新しい業務方式と電子商取引、マルチメディア・コンテンツとツール、重要な技術とインフラ)のうち、"技術"の視点からの課題設定は1つだけであり、アプリケーションの観点からの課題設定の性格が強かった。一方、次期ISTプログラムでは、技術の観点からの課題設定が3つに対して、アプリケーションの観点からの課題設定は1つと、アプリケーションの切り口ではなく、テクノロジーの切り口にシフトしている。
 これは、アプリケーションの切り口からのアプローチにより、実際の研究開発の対象となる技術が多くの技術分野に分散してしまうことを避け、特定の技術分野を最上位の課題として掲げることにより、重要技術分野に取り組みを集中させることを狙ったものと考えられる。

● 欧州レベルと加盟国レベルの研究開発プログラムの間の連携確保
 欧州委員会が支援する研究開発活動と加盟国レベルで支援が行われる研究開発活動の間の連携がない場合、非効率になる恐れが強い。このため、あらゆる研究開発の取り組みが欧州研究エリア内で連携され、効率的な協力や研究者間のリソースの共有に必要な仕組みを提供することが必要としている。

● リスクの大きい中長期スパンでの研究開発の重視
 第5次フレームワーク計画におけるISPプログラムでは、個々のプロジェクトの研究開発成果の市場化までの時間が長くなってきている。つまり、市場化までの期間が短い技術開発については、産業界側がISTにおける共同研究スキームに応募しなくなっている。この傾向に対応して、次期ISPプログラムでは、より中長期の研究開発が重視される方向にある。
 この方針ついては、小生はやや疑問を感じている。IT分野の研究開発は他分野に比較して市場化までの時間が短いものが多いのは事実である。IT分野の世界的な大競争の状況において、秘密漏洩や時間との勝負の点を考えれば、他社/他機関との共同研究を前提としたスキームでは、企業側にとって"虎の子"技術の研究開発をISPプログラムのもとで実施しにくいだけのことであり、フレームワーク計画のスキーム上の弱点であるように感じられる。

● プログラム運営の効率化とプロジェクト運営の柔軟化
 第5次フレームワーク計画開始当初は、プロジェクト応募から契約までの平均日数は250日前後であった。第一段階としてこれを150日にまで短縮するべく効率化が図られ、目標が達成できる見込みとなっているが、第6次フレームワーク計画では、契約タイプの数を制限すること等により、さらに効率化が図られる予定である。
 また、個々のプロジェクトの運営についても、プロジェクト・チーム側の自律性と柔軟性を拡大し、技術変化や市場変化に対応しやすくすることが目指される。


3.第5次フレームワーク計画におけるISTプログラム

(1)進捗状況

 現行の第5次フレームワーク計画におけるISTプログラムでは、1999年3月の第1次公募から合計8回のプロジェクト公募が予定された。最終となる第8次公募は2001年11月から開始され、主要部分は2002年2月末に締め切られた。第8次公募では、@eEuropeの実施に貢献するプロジェクト、A第5次フレームワーク計画において残されていたテーマ課題の消化、B第6次フレームワーク計画への橋渡し、が主要な目標とされ、第5次計画が収束段階に入っていることがわかる。

(2)第4次IPPAレポート

 第1回から第6回(2001年上半期)までの公募結果に関して、プログラム全体のプロジェクト・ポートフォリオを分析したIPPAレポートが2001年9月に発表された。プログラム全体のプロジェクト・ポートフォリオ分析を行うIPPAレポートは、第3次公募までは公募の都度作成されており、2001年9月のものは4回目のレポートとなる。第4次レポートはそれまでのレポートと異なり、プログラムの4分の3が進捗した状況での分析であり、第5次フレームワーク計画のほぼ全体を通じたIT分野の研究開発状況に関するものである点が注目される。
 第1回から第6回までのプロジェクト募集により、ISTプログラムでは1,706件のプロジェクトへの支援が決定されている。これは予算額ベースでは、総予算36億ユーロの4分の3にあたる約27億ユーロになる。これらのプロジェクトについて、研究開発プロジェクト、Take-Upアクション(市場導入プロジェクト)、政策支援など支援プロジェクトの3種類に分類すると、次表のような分布となる。


表 種類別のプロジェクト件数と助成金額
プロジェクトの種類 件数 金額(百万EUR)
研究開発プロジェクト 1,146 2,257
Take-Upアクション 295 199
支援プロジェクト 265 235
合  計 1,706 2,691
(出所)Integrated Programme Portfolio Analysis(IPPA), 2001年9月


 IPPAレポートでは、全プロジェクトを24の技術分野と、21の応用分野に分類して、ISTプログラムでの研究活動の対象となっている分野について分析している。

@ 対象技術分野
 図1は、技術分野別のプロジェクト分布である。2「ミドルウェアと分散システム」、4「知識・情報管理」、12「インターネット技術」、14「モバイル・ワイヤレス通信」、17「マイクロ/オプト・エレクトロニクス」、18「マイクロシステムとセンサー」、22「視覚化、仮想環境、画像処理」の7分野が150件以上のプロジェクトを集め、他の技術分野より活発な活動領域となっている。

A 対象応用分野
 図2は、応用分野(産業/サービス・セクター)別のプロジェクト分布である。プロジェクトが集中している分野の第一は、情報通信・エレクトロニクス産業に関係する13「家電」、14「IT製造業・情報サービス業」、15「通信機器産業」、16「電気通信事業者、サービス・プロバイダー」である。
 次に注目されるのは、7「保健医療」、8「教育・訓練」、12「運輸」など社会的ニーズに関するプロジェクトである。これらのセクターは、ISTプログラムの全体を通じた様々なアクション・ラインによってカバーされているうえ、ISTプログラムの最上位に設定された4つのキー・アクションのうち、キー・アクション1「市民のためのサービスとシステム」、キー・アクション2「マルチメディア・コンテンツとツール」では、50%以上のプロジェクトがこれらのセクターに関係している。
 なお、セクター横断的プロジェクトと特定セクターに関するプロジェクトの比率はほぼ半々となっている。



図1 技術分野別プロジェクト分布


技 術 分 野
ソフトウェア・エンジニアリング 13 ネットワーク管理
ミドルウェアと分散システム 14 モバイル・ワイヤレス通信
信頼性システムとインフラ 15 交換機、ルーター、通信システム
知識・情報管理 16 コンピュータ・アーキテクチャー
エージェント技術 17 マイクロ/オプト・エレクトロニクス
最適化ツールと判断支援システム 18 マイクロシステムとセンサー
コンテンツ・オーサリング・ツール 19 信号・データ処理
信頼性と安全性 20 マルチ・モード/多覚インターフェース
サプライ・チェーン・マネージメント、組織ツール 21 言語と発話技術
10 シミュレーションとCAD/CAM 22 視覚化、仮想環境、画像処理
11 組み込み型システム 23 バイオインフォマティックス、ニューロインフォマティックス
12 インターネット技術 24 その他
(出所)Integrated Programme Portfolio Analysis(IPPA), 2001年9月



図2 応用分野別プロジェクト分布



応用分野(産業/サービス・セクター)
金融・保険 12 運輸
電子出版とメディア産業 13 家電
文化セクター 14 IT製造業・情報サービス業
小売 15 通信機器産業
行政 16 電気通信事業者、サービス・プロバイダー
社会サービス 17 化学産業
保健医療 18 繊維・衣料産業
教育・訓練 19 農業/農食品業/水産業
観光 20 医薬/遺伝子工学
10 エネルギー 21 建設、エンジニアリング、建築
11 環境    
(出所)Integrated Programme Portfolio Analysis(IPPA), 2001年9月


4.ユーレカ計画におけるIT分野の取り組み

(1)進捗状況

 ユーレカ計画の新規プロジェクトは、毎年6月末に開催されるユーレカ閣僚理事会で公式に発表される。前回2001年6月には、議長国スペインの首都マドリッドでの閣僚理事会において、190件の新規プロジェクトが発表された。プロジェクト実施総額は、4億9,300万ユーロである。この数字は新規プロジェクト数としては近年の実績を上回っているが、2001年の新規プロジェクトには、クラスターと呼ばれる大規模プロジェクトは一本もなく、インパクトには欠ける年であった。
 一方、スペインが議長国を務めた一年間(2000年下半期〜2001年上半期)に、それまでに立ち上げられた7件のクラスターにおいてサブ・プロジェクトが63件認定されているが、それらの実施総額は22億6,300万ユーロと、新規プロジェクト190件の実施総額の4.6倍に達している。この数字から分かるように、現在ユーレカ計画の活動は、実質的には、ユーレカ・メンバー各国政府の代表から成るハイレベル・グループが運営する部分と、クラスターとして立ち上げられ、欧州の主要企業と研究機関のコンソーシアムが運営する部分に分かれつつあると言える。

(2)クラスター

 クラスター・プロジェクトは、実際には一つの"プログラム"であり、多くのサブ・プロジェクトを通じて実施されている。数多くのサブ・プロジェクトについて、個々の概要や必要予算額を詳細に決定した上で大規模プロジェクトを立ち上げるには、大きな準備努力が必要となる。しかし、規模が大きくても柔軟な研究開発戦略が必要とされる場合には、このような積み上げ式の準備手法は必ずしも適切とは言えない。このため、プロジェクトの大枠だけを決定し、それに対するユーレカ・ラベルの認定を行った上で、プロジェクト実施中に個々のサブ・プロジェクトを募りながら進めるのがクラスター方式である。サブ・プロジェクトに対しては、一般のユーレカ・プロジェクトと同様にメンバー国政府からの助成が行われるが、その準備調整作業は政府内のユーレカ事務局ではなく、コンソーシアム事務局(一般にプロジェクト・リーダーとなる企業や研究機関内に置かれる)やコンソーシアム運営委員会が行うため、クラスターはきわめて独立性の高い一つのプログラムとしてとらえるのが実情に適している。このクラスターの概念は1998年からユーレカ計画で正式に採用されている。
 現在ユーレカ計画においてクラスターとされているプロジェクトは、IT分野のMEDEA+(半導体)、ITEA(ソフトウェア)、PIDEA(エレクトロニクス・パッケージング/インターコネクション)、EURIMUS(マイクロシステム)の他、電子製品廃棄物のリサイクルに関するSCAREと森林関連のEUROFORESTの6つである。全6件のクラスターのうち、IT分野が4件を占めている。さらに、実施コストについてみれば、IT分野4件は合計で80億ユーロに達するのに対し、他の2件のプロジェクトは合計で2億ユーロ強でしかなく、クラスターを通じた研究開発の主要な分野はITといえる。また、ユーレカ計画のIT分野全体の取り組みとしても、この4つのクラスターに取り組みが集中している。
 以下に、IT分野の4つのクラスターについて進捗状況を簡単に紹介する。


@ MEDEA+
  • 対象分野:半導体
  • 期  間:2001年〜2008年
  • 予算総額:40.0億ユーロ
 MEDEA+では、プロジェクト全体をアプリケーション分野と基盤技術分野に二分したうえ、さらにテーマを細分化してサブ・プロジェクトを募集している。2001年までに2回の公募が行われ、38件のサブ・プロジェクトが認定された。


A ITEA
  • 対象分野:ソフトウェア
  • 期  間:1998年〜2006年
  • 予算総額:32.0億ユーロ
 1999年7月に第1次公募が開始されてから、2001年までに4回のサブ・プロジェクトの公募が行なわれ、42件のプロジェクトがITEAのサブ・プロジェクトとして認定された。


B PIDEA
  • 対象分野:エレクトロニクス・パッケージング/インターコネクション
  • 期  間:1998年〜2003年
  • 予算総額:4.0億ユーロ
 PIDEAは、微細化かつ高性能化していく電子部品を接続し、パッケージに収める技術を対象にしており、2001年9月までに22件のサブ・プロジェクトがPIDEAのラベル認定を受けた。


C EURIMUS
  • 対象分野:マイクロシステム
  • 期  間:1998年〜2003年
  • 予算総額:4.0億ユーロ

 センサー等のマイクロシステムを開発するEURIMUSでは、2001年までに12回のサブ・プロジェクトの公募が行われた。最新のサブ・プロジェクト数は13件であり、公募回数の割りにサブ・プロジェクト数が少ないのが特徴である。現在も、3〜4ヶ月に1度の割合でサブ・プロジェクトの公募が予定されている。

5.追記

 話は全く変わるが、軽い話題を1つ紹介する。
 先日、チェコ第二の都市ブルノ(首都プラハの東方200km、プラハから電車で約3時間)で開催されたIT見本市を視察した。ブルノの見本市会場は、社会主義政権時代から存在するものであるが、10以上の展示館があり、東欧の地でしかも首都以外の都市に、ハノーバーやパリのメッセ会場にも匹敵するような見本市会場があることに率直な驚きを感じた。米国企業、西欧企業、日本企業が多く出展しており、内容的には西欧におけるIT見本市と何ら変わるところはない。ただ、スタートアップ企業の展示館は閑散としており、これからだけでは単純には判断できないものの、同国でのITベンチャーはまだまだこれからという印象を受けた。意外であったのは、平日であり、入場料は約500円と現地の人にとっては決して安い金額ではないと思われるにもかかわらず、ビジネスマンに交じり非常に多くの小・中・高校生や一般市民の若者の入場者がいたことである。わが国では、IT見本市というとビジネスの場というイメージがあるが、チェコでは世界の先端技術を求めて多くの一般市民が集まっているように思えた。ちょうど、我々が航空ショーやモーター・ショーに興味を覚えるのに似ているのかもしれない。


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 ところで、欧州では携帯電話のローミング・サービスがあるため、小生は国外に出張する際は、自分の携帯電話端末でその国でどれだけの数の携帯電話会社のサービスがあるか確かめることにしている。チェコでは、プラハ〜ブルノ間の山間部や田園地帯の鉄道沿線ですら、3社のサービス(EUROTEL,PAEGAS,CZ03)が提供されていた。10年少し前までは社会主義国であったにもかかわらず、現在では競争が導入されていることに改めて感心した。東欧は大きく変化を続けているようである。



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