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パリ駐在員報告
 【 2002年8月号 】



   〜 欧州の次期情報化行動計画 〜

JEITAパリ駐在 福 田  賢 一


 前任の山本雅亮氏に代わって、(社)電子情報産業協会欧州事務所(パリ)に着任いたしました福田賢一と申します。今回より欧州駐在員報告を担当させていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
 第1回となる今回は、欧州の次期情報化行動計画を中心にお伝えしたいと思います。


T.次期情報化行動計画

 EUの情報社会政策は、1999年12月策定のeEurope計画と、その行動計画であるeEurope2002を中心に進められている。eEurope2002行動計画は、政策目標の期限を2002年末に置いており、「より安価、高速、安全なインターネット」、「一般市民や技能に対する投資」、「インターネットの活用の促進」という3つの柱の下、11の政策項目を掲げている。
 さて、eEurope2002行動計画を引き継ぎ、2005年末までの政策目標を示した「eEurope2005 −全ての人のための情報社会」行動計画が、欧州委員会から本年5月29日に発表され、6月21〜22日にセビリアで開かれた欧州理事会で合意された。
 eEurope2002行動計画がインターネットの普及を主眼としていたのに対し、eEurope2005行動計画ではインターネットの経済活動での利用と、それによる新規市場の創出、コスト削減及び生産性の向上を主眼としている。このため「サービス、アプリケーション及びコンテンツの拡充」と、「ブロードバンドインフラ整備及びセキュリティ」の2つの柱を掲げ、以下の4項目を2005年までに実現するとしている。

 @現代的なオンラインサービス(電子政府、遠隔教育、遠隔医療)
 A活力あるeビジネス環境
 B競争的な価格でのブロードバンド接続の広範な提供
 C安全な情報インフラ

 各項目ごとの政策目標を簡単にまとめると以下のとおりである。ただし、残念ながらeEurope2005行動計画は具体的な予算額については一切触れていない。

@現代的なオンラインサービス(電子政府、遠隔教育、遠隔医療)

(電子政府)
  • 2005年までに、全ての公共機関をブロードバンドで接続する
  • 2003年末までに、電子政府サービスをサポートする、相互接続性に関するフレームワークを発行する
  • 2004年末までに、公共サービスを対話的で、誰でもアクセスでき、ブロードバンドやマルチプラットフォームで利用できるものとする
  • 2005年末までに、公共調達の主要な部分を電子化する
  • 公共のインターネットアクセス場所の整備を支援する
  • 2005年までに欧州振興(文化と旅行)と、公共情報提供のためのサービスを開始する

(遠隔教育)
  • 2005年末までに、全ての学校をブロードバンドで接続する
  • 2002年末までに、遠隔教育のプログラムの提案を採択する。これは2004〜2006年に実施する
  • 2005年末までに、学習や研究が効率的に行えるよう、全ての大学がオンラインアクセスを提供する(バーチャル・キャンパス)
  • 2003年末までに、大学や研究機関のコンピュータを共同利用できるようにするための研究と試行を開始する
  • 2003年末までに、大人(例えば失業者や職場復帰した女性)に対してキーとなる能力を付与するための行動を開始する

(遠隔医療)
  • 2003年春の欧州理事会までに、健康保険カードの電子化に係る提案を行う
  • 2005年末までに、健康情報のネットワークを整備する
  • 2005年末までに、疾病予防や健康相談などの情報を市民に提供するオンラインサービスを整備する


A活力あるeビジネス環境

  • eビジネス利用の障害となる、問題のある法律をレビューする。このレビューは、2003年のeビジネスサミットで開始する
  • 2003年末までに、中小企業のeビジネスをサポートするためのネットワークを構築する
  • 2003年末までに、欧州におけるIT技術能力の供給と需要に関する分析を公表する
  • 2003年末までに、取引、セキュリティ、署名、購買及び支払に関する相互接続性の向上したソリューションを確保する
  • 2003年末までに、欧州大でのオンライン紛争の解決システムの実現可能性について調査する
  • 2003年末までに、.euドメイン名を使って付加的な要素、例えば信用できる機関であることを示すことなどを欧州企業に与える可能性について調査する

B競争的な価格でのブロードバンド接続の広範な提供

  • ワイヤレスブロードバンドサービスに周波数を割当て、また周波数を効率的に使うために、新たな規制の枠組みを用いる
  • 条件不利地域におけるブロードバンドアクセスの整備を支援する
  • 例えば法的障害を取り除くことを通じ、投資を促進するために、線路敷設権、電柱及び管路へのアクセスを容易にする

C安全な情報インフラ

  • 2003年半ばまでに、サイバーセキュリティタスクフォースを立ち上げる。これはセキュリティに係る競争力センターとなる
  • 2005年末までに、情報通信機器の設計と実装に「セキュリティの文化」を取り入れる
  • 2003年末までに、政府の機密情報を交換するための安全な通信環境の実現可能性について調査する

 そしてeEurope2005行動計画の「まとめ」には、「成功裡にいけば、この行動計画は成長、生産性、雇用そして欧州社会の結集にインパクトを持つだろう」と記されており、情報社会政策の推進に向けた欧州委員会の強い決意がうかがえる。
 さて、日本ではe-Japan重点計画の見直しを行った結果、新たに「e-Japan重点計画-2002」が決定(平成14年6月18日IT戦略本部)され、これに基づき情報社会政策を加速化させている。その中でも、電子政府にとりわけ大きな関心が寄せられているところである。
 欧州における電子政府の進捗状況を見てみよう。欧州委員会は、行政サービスのオンライン化実施状況調査(第2回:2002年4月時点調査)の結果を6月20日に発表した。調査対象国はEU15か国と、アイスランド、ノルウェー及びスイスの計18か国、調査対象行政サービス数は20である。本調査は、インターネットを利用して手続全体が電子的に行える水準のなのか、あるいは様式がダウンロードできるまでの水準なのかといった観点から、オンライン化状況をパーセンテージ化してまとめており、電子政府の進捗状況を示すものである。
 まず、国別のオンライン化状況を第1回調査との比較で図1に示す。なお、第1回調査は昨年10月時点のものであり、スイスを除いた17か国を対象としている。


図1 行政サービスオンライン化状況(個別)
(出所)Web-based Survey on Electronic Public Service(欧州委員会), 2002年6月

 各国ともこの半年の間に5〜10数ポイント、オンライン化が進んでおり、欧州における電子政府の動きが急速に進展していることが分かる。特にアイルランド及びスウェーデンではオンライン化率が75%を超えているが、これは多くの行政サービスについて、様式をダウンロードできるという水準ではなく、手続全体をオンラインで行えるという水準に達していることを示しており、注目に値する。
 次に、サービス別のオンライン化状況を図2に示す。


図2 行政サービスオンライン化状況(サービス別)
(出所)Web-based Survey on Electronic Public Service(欧州委員会), 2002年6月

 税や社会保障の関係のサービスのオンライン化率が高く、許認可に係るサービス(環境関連許可、建築許可等)のオンライン化率が低くなっている。特に、付加価値税及び所得税については、18か国中14か国がオンライン化率100%となっており、際だってオンライン化率が高い。
 さて、本調査では、以上の数字を分析した結果として、以下の点を指摘している。


  • 提供窓口がよく統合され、単純な体系のサービスについては、オンライン化率が高く、オンライン化の進展も早い(例:付加価値税、所得税)
  • 提供窓口が多いが比較的単純なサービスについては、最低限のバックオフィス再編と併せ、ポータルを構築することにより、オンライン化が進む(例:公共図書館、転出・転入届)
  • 比較的提供窓口が多く複雑な体系のサービスについては、バックオフィス再編に相当努力し、これにポータルを組み合わせることにより、オンライン化が進む(例:社会保障関連雇用者負担)
  • 提供窓口が多くしかも非常に複雑な手続を伴うサービスについては、未だ様式のダウンロード等の水準に留まっている。しかし、情報を集約し、必要な様式を全て統合するとともに、ポータルを導入することにより、オンライン化は進展してきている(例:環境関連許可)。サービスのプロセスリエンジニアリングを行うことにのみよって、完全な電子化を達成できる

 すなわち、行政サービス提供側のバックオフィスの改革と、行政サービスポータルの組み合わせが、オンライン化のためには不可欠ということである。e-Japan重点計画-2002(平成14年6月18日IT戦略本部決定)でも、オンライン化に当たって業務改革、類似業務・事業の整理、制度・法令等の見直し等により行政の効率化を図る旨記されており、両者の視点は一致している。
 行政サービスに求められることは良質のサービスを効率的に提供することである。電子政府はそのための手段である。電子政府にすることが目的なのではない。電子政府になったときに、どれだけサービスの質が向上し、かつ効率的になるかによって、各国間での行政サービスの競争力地図が塗りかわることは確実であり、それは必ずや産業競争力に跳ね返ってくるに違いない。
 少なくともオンライン化という観点からは、欧州では電子政府が急速に進展しつつあることは、先の調査の数字が示すとおりである。日本では国の申請・届出等手続については実質的にすべてを2003年度中にオンライン化することとなっているが、2002年4月時点でのオンライン化手続数は未だ590で手続総数約1万1千の5%に過ぎない。地方自治体についてはこれからという段階である。IT戦略本部の強力なイニシアチブにより、単に紙が電気に置き換わっただけではない、良質なサービスを効率的に提供する真の電子政府が早期に実現されることを期待したい。
 ところで、小生はパリ赴任に際して、諸手続のため市役所、郵便局、銀行など様々な窓口に行き、多量の書類を書き、長く待たされ、かなりの労力と時間を費やした。数年後には、諸手続が全てインターネットで、しかもワンストップで行えるようになって、これが昔話となることを切に願っている。


U.産業動向

1.コンピュータ、インターネット

<仏:インターネット利用状況調査>
 仏国立経済研究所は6月、インターネット利用状況の調査結果を発表した。2001年10月時点で、15歳以上でインターネットを利用している者の割合は31.9%。インターネットを利用している者の割合を属性別に見ると、年齢別では15〜19歳では63.8%と高いのに対し、70〜79歳では2.4%と低くなっている。職層別では管理職等76.3%、一般労働者12.9%となっており、学歴別では高学歴者が73.1%、低学歴者7.1%となっている。所得階層別では上位25%層が52.4%、下位25%層が21.4%である。15歳以上の学生の学校におけるインターネット利用率は73.0%である。

2.テレコミュニケーション

<仏:2001年の電気通信の状況>
 仏電気通信規制局は7月9日、2001年の電気通信に関する年間報告書を発表した。電気通信業界の雇用者数(2001年末)は152,615人(対前年比▲2.0%)、設備投資は71.76億ユーロ(同▲8.6%)、固定電話の市場規模は144.38億ユーロ(同▲1.3%)と厳しい状況が続く一方で、携帯電話の市場規模は98.77億ユーロ(同+26.8%)、インターネット(アクセス等)の市場規模は11.60億ユーロ(同+58.8%)と引き続き大きな成長を続けている分野もあり、その他サービスを合わせた通信事業全体では市場規模は327.82億ユーロ(同+10.6%)となった。

3.その他

<仏:電子マネー>
 仏の電子マネーMONEOを運営するBMS社は6月13日、ソシエテ・ジェネラル銀行以外の全ての仏銀行がMONEOを採用したと発表した。現在の利用者数は50万人、利用可能な小売店は38,000となっている。BMS社は2002年末には利用者数で100万から200万人、カード数で1600万枚になると見込んでいる。小売業者は新たな設備投資とさらなる決済コストが生じることを恐れ、業界団体を通じてMONEOの導入に抵抗を示している。他方でカード読取機メーカは、新規市場の出現を歓迎している。


V.政策動向

<EU:行政機関にオープンソースソフトウェアの利用を推奨>
 欧州委員会は7月8日、電子政府のコスト削減のため、行政機関はソフトウェアをオープンソースラインセンスで共有すべきであるとする報告書を発表した。報告書は、このためにソフトウェアを管理する機関を設け、ソフトウェアを共有するだけでなく、ソフトウェアの開発やテストの際の協力体制の場とすることを提言している。なお、別の調査では、公的セクターにおける本年の電子政府関連支出は前年比28%増の66億ユーロに達するとしている。

<EU:次世代携帯電話>
 欧州委員会は6月12日、次世代携帯電話(第3世代)サービスの発展に向けた報告書を発表した。報告書は、現状では市場の動向に任せ、新製品を生み出す健全な競争環境を整備することが必要だとして、欧州委員会が各国と協力して免許条件や周波数割当の調和を図っていくこととしている。小生としては、通信事業者が多額の負債を抱え厳しい状況にある中でもう少し何かできることはないものかと思うのだが、報告書は末尾を、サービス発展のための簡単な答はないが、次世代携帯電話には今の困難を乗り超える十分な勢いがあり、その点について欧州委員会は引き続き自信を持っている、と結んでいる。

<仏:インターネット総括報告書>
 仏電気通信規制局は6月5日、この5年間のフランスにおけるインターネット総括報告書を発表した。報告書はプロバイダーとの契約者数の急激な増加(1997年の50万人から2001年12月の710万人)を強調する一方で、懸念事項として一般家庭におけるパソコン普及率の低さ、接続通話料の高さ、携帯電話によるインターネット(WAP)の失敗、通信会社の過剰債務等を指摘している。報告書は将来のインターネットの発達は加入者回線の自由化(ADSL)とWiFiによると見ており、仏電気通信規制局はこの2つの技術の発達を確保するための措置を早期に導入する姿勢である。




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