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パリ駐在員報告
 【 2003年2月号 】



 欧 州 動 向
   〜 欧州におけるeLearningの状況(その2) 〜


T.欧州におけるeLearningの状況

 今回は、前回に続いて欧州におけるeLearningの動向に関して、eLearningビジネスを展開しているBJI社及びVektor社の事例をお伝えする。

1.BJI社
 BJI社はヒューマンリソースに関するコンサルティングに強みを持つBJコンサルティングの子会社として1998年に設立され、従業員15名(うち8名がコンサルタント)、eLearningサービスをワンストップで提供することを目指している会社である。同社の活動は、大きく以下の3つからなる。

 (1) コンサルティング
 依頼のあった企業にコンサルティングミッションを派遣し、組織のミッション等から、その企業にふさわしいeLearningの方法や従来の研修との組み合わせについて検討を行う。

 (2) コンテンツ開発
 コンサルティングの結果に基づき、コンテンツを以下の3種類から選択する。
  • 出来合いのコンテンツ
  • ゼロから書き起こす、あるいは出来合いのコンテンツを改良する
  • 従来型の研修(BJコンサルティングがもともと強い分野)
 同社のポリシーは、この3つをうまく組み合わせて使うことであり、そこに同社の強みがある。

 (3) eLearning技術の導入
 ゼロからの開発はせず、インプリメントを行う。Aspenなどを用いている。

 以上のように、かなり大がかりな導入となるため現在のターゲットは大企業が中心である。しかし、安価なソリューションの導入により、中小企業や学校もターゲットとしていきたいとのことである。
 eLearningの効果として、同社は、研修期間の短縮を挙げている。ある企業の例では、従来型の研修で4日間を要していたところが、eLearningの導入により2日間に短縮できたという。また、学習者の能力向上も確実であるという。
 他方で、eLearning導入についての問題点として、仏経済の影響により仏企業が教育投資を控えていることと、仏企業にeLearningをなかなか認めてもらえないことを挙げている。
 面白い話として、米企業と仏企業では、eLearningに求める要素が違うとのことである。米企業は研修を企業戦略の一環としてとらえており、このためコンテンツは淡々としたものでも学習者は真剣に取り組むのだそうである。対して、仏企業は税優遇制度(企業研修を実施しない場合、企業は総賃金の一定割合を税として納める義務が発生する。詳細は前号)の関係もあって、研修を行うことが義務であるととらえており、このためコンテンツはチャーミングなものにしないとダメなのだそうである。
 実際に同社のコンテンツを拝見させていただいたが、とても楽しく、引き込まれるようなものであり、この部分での同社の努力の大きさを感じた。

2.Vektor社
 Vektor社は80年代後半に英ランカスター大学で行われた語学教育に関する研究成果を基に、1989年から語学教育を行っている企業である。
 同社は従来型の教育とeLearningの的確なミックスに強みを持っている。西欧とアジアに共通する傾向として、対面式で先生に教えられる形式を好むということがあり、チューターによる徹底した個々人のサポートが重要であるとのことである。このため同社は西欧とアジアに約100名のチューターを置き、個々の学生の学習進捗状況を常に把握するとともに、いつでもメールや電話でサポートできる体制を取っている。チューターはいわば学校でいう担任のようなもので、受け身ではなく積極的に学生をサポートし、学生の顔もeLearningシステムを通して覚えている。

 同社のサービス提供形態には、以下の4種類がある。
  (1) 一般的なeLearningコース(チューターによるサポートあり)
  (2) 対面式でeLearningも用いた5日間の集中コース
  (3) 週に半日、5週間のエクステンシヴコース
  (4) エグゼクティブを対象とした対面式のコース

 ちなみに、(2)のコースは朝から夕方まで、昼食時間も先生と一緒というハードなものであり、このコースを終えた学生は、一般的なeLearningに移ろうと思うとのことである。
 eLearningビジネスを行うに当たっての問題点として、同社は初期段階での資金の確保を挙げている。クリティカルマスを超えるまでがたいへんであるが、英国では政府のサポートがあり、とても助かったとのことである。


3.まとめ
 前号での御紹介を含めた3者の話を小生なりに総合すると、eLearningの成功のポイントは以下のようになると思われる。
  • 何のためにどのようにeLearningを行うのか、戦略的にデザインを描くこと
  • その際、従来型の研修との効果的なミックスを視野に入れること
  • eLearningシステム構築に当たっては、何でも自前で書き起こすのではなく、既存のコンテンツ等の活用も検討すること
  • 有機的な人的サポートにより学習者の積極的支援を行うとともに、的確な学習環境(ラーニングコミュニティ)の形成を図ること

U.産業動向

1.コンピュータ、インターネット
<仏:ワナドゥー好調>
 仏ISPのワナドゥー(フランス・テレコム子会社)は2003年1月14日、2002年の業績発表を行った。連結売上高は20億7500万ユーロで前年比28%増であるが、ブロードバンドサービスのユーザーが137万4千人(前年比66%増)と大幅に増加したこと等からインターネット・アクセス部門の売上高が10億3100万ユーロ(前年比66%増)と大きく伸び、電話帳部門の売上高を超えた。ただし、純損益については2月末の発表とされた。同社のシシェル社長は「ワナドゥーは、850万以上のユーザーを有する欧州第2位のISPであり、8億8000万ユーロ以上の売上を有する欧州第3位の電話帳事業者である」と述べている。同社は2003年の売上高の25〜30%の伸びと、インターネット・アクセス、ポータル、電子商取引の部門でのEBITDAの黒字化を見込んでいる。

<仏:2002年第4四半期のB2C市場、大幅に拡大>
 仏ACSEL(オンライン商業サービス協会)は2003年1月22日、同協会加盟大手15社の2002年第4四半期B2C取引売上高が前年同期比で64%増となったことを発表した。同15社の取引件数は2002年第4四半期が330万件(前年同期比63%増)、2002年1年間で見ると1000万件超に達した。また、ネット利用者が電子商取引サイトを閲覧する時間は、2002年6月には平均で1か月当たり26分であったが、同12月には41分と58%の増加となった。カテゴリ別に利用者の増加を見ると、女性の45%増及びサラリーマンの60%増が目立つとしている。

2.その他
<EU:ハイテク製造業の雇用は独が圧倒的リード>
 Eurostat(欧州委員会統計局)は2002年12月17日、EUにおけるハイテク製造業及び知識集約型サービス業の2001年の雇用状況について発表した。
 これによると、2001年のEU域内の総雇用のうちハイテク製造業が7.6%、知識集約型サービス業が32.9%を占めている。1996年から2001年の5年間の年平均伸び率で見ると、全製造業は0.5%であるのに対しハイテク製造業は1.0%、全サービス業が2.1%であるのに対し知識集約型サービス業が3.0%と、これらの産業が雇用の伸びを牽引している。
 ハイテク製造業及び知識集約型サービス業の雇用に占める割合を国別に表1として示す。


表1 ハイテク製造業及び知識集約型サービス業の雇用に占める割合(2001年、国別)
  ハイテク製造業 知識集約型
サービス業
ベルギー 6.6% 38.1%
デンマーク 7.0% 42.7%
ドイツ 11.2% 31.0%
ギリシャ 2.2% 22.8%
スペイン 5.5% 24.9%
フランス 7.2% 35.0%
アイルランド 7.3% 31.9%
イタリア 7.4% 26.9%
ルクセンブルグ 1.2% 35.8%
オランダ 4.3% 40.0%
オーストリア 6.5% 29.3%
ポルトガル 3.6% 19.1%
フィンランド 7.4% 39.1%
スウェーデン 7.9% 45.7%
英国 7.2% 40.3%
EU 7.6% 32.9%
(注)1.スウェーデンの数値は2000年、2.EUの数字は推計値
3.ハイテク製造業は、以下の製造業からなる
事務用機器及びコンピュータ、ラジオ・テレビ・通信機器、医用精密・光学機器、時計、輸送機器、その他電気機械器具、その他機械器具、化学品・化学製品
4.知識集約型サービス業は、以下のサービス業からなる
郵便、通信、コンピュータ関連、研究開発、海運、空輸、金融、不動産、機械器具レンタル(オペレータなし、家庭向け)、その他ビジネスサービス、教育、社会福祉、レクリエーション・文化・スポーツ
(出典)「Employment in high tech and knowledge intensive sectors in the EU continued to grow in 2001」(Eurostat)


 ハイテク製造業において、1位はドイツ(11.2%)で、2位のスウェーデン(7.9%)を大きく引き離している。地域別に見ると表2のとおり、上位10地域のうち9地域をドイツが占め、ここでも圧倒的にリードしている。
 知識集約型サービス業では、1位はスウェーデン(45.7%)であるが、40%以上の国が他にも3か国あり、ハイテク製造業ほどにはバラツキがない。地域別に見ると表2のとおり、上位10地域のうち5地域を英国が占めている。


表2 ハイテク製造業及び知識集約型サービス業の雇用に占める割合(2001年、地域別)
  ハイテク製造業(注1) 知識集約型サービス業(注2)
  地域名 地域名
1位 独 Stuttgart 21.0 英 Inner London 61.1
2位 独 Tubingen 18.1 瑞 Stockholm 53.2
3位 独 Braunschweig 17.8 英 Outer London 49.4
4位 独 Karlsruhe 16.9 蘭 Noord-Holland 45.8
5位 仏 Franche-Comte 16.6 フィンランド Uusimaa (Suuralue) 45.7
6位 独 Niederbayern 16.2 英 Surrey, East and West Sussex 45.6
7位 独 Unterfranken 15.6 仏 Ile de France 45.3
8位 独 Mittelfranken 14.6 英 Bedfordshire, Hertfordshire 45.0
9位 独 Schwaben 14.4 英 Berkshire, Bucks and Oxfordshire 43.4
10位 独 Freiburg 14.1 独 Berlin 43.1
(注)1.最低8万人がハイテク製造業に従事している地域が対象
2.最低30万人が知識集約型サービス業に従事している地域が対象
3.その他、表1の注に同じ
(出典)表1に同じ


V.政策動向

<EU:フランス・テレコム再建策>
 欧州委員会のスポークスマンが2003年1月8日に語ったところによると、欧州委員会のモンティ委員(競争政策担当)は、フランス・テレコムに対する仏政府の支援策について、正式な調査を開始するつもりである。正式調査開始の可否は、欧州委員会によって数週間のうちに決定される予定である。ただし、正式調査の開始が、不当な支援があったと認定したということを必ずしも意味するものではないとしている。
 仏政府の支援策とは具体的には90億ユーロの出資のことであり、仏政府は同額をErap(政府系投資機関)を通じてフランス・テレコムに前貸ししている。他方で同社は2002年12月5日の再建計画発表以降、2度に渡って計90億ユーロの社債の発行に成功している。この社債発行により同社は2003年の財務問題は解決したとしており、仏政府の支援を必要としなくなる可能性も出てきた。

<EU:IT関連著作権指令の適用の遅れ>
 欧州委員会は2001年4月にIT関連の著作権の保護に関する指令を採択したが、国内法への適用期限である2002年12月22日までに適用したのはデンマークとギリシャの2か国だけとなっている。この指令は、プログラムや音楽CDのコピーの制限、データベースの保護などを目的としたものである。英では2003年3月末の導入を目指して政府による意見調整が行われている。仏では2002年12月5日に政府原案が公表されたが、様々な批判のため見直しを余儀なくされている。ソフトウェアの権利保護を主張するBSA(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)は、欧州におけるソフトウェアの不法コピーによる損害額は、毎年30億ユーロに達するとしている。他方で、消費者団体やフリーソフトウェア関係団体は、デジタル作品へのアクセス権が制限されるのではないかとの懸念を示している。




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