
【 2003年4月号 】
欧 州 動 向
〜 欧州における経済社会の情報化の状況 〜
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T.eEurope2002の成果
EUの情報社会政策は、1999年12月策定のeEurope計画と、その行動計画であるeEurope2002を中心に進められてきた。eEurope2002行動計画は、政策目標の期限を2002年末に置いており、「より安価、高速、安全なインターネット」、「一般市民や技能に対する投資」、「インターネットの活用の促進」という3つの柱を掲げている。なお、eEurope2002の後継としてeEurope2005が2002年6月に決定され、現在はこのeEurope2005に基づき政策が進められている。
欧州委員会は2月12日、「eEurope2002最終レポート」として、eEurope2002の成果をベンチマーク数値により検証した結果を公表した。eEurope2002の成否のみならず、EUの情報化の現状という点でも重要な情報であり、以下にその内容を簡潔に紹介する。
1.インターネットへの接続
(1) インターネット接続普及率
インターネット接続の世帯普及率は2000年3月の18%から、2002年11月には43%へと増大した。その一方で、国ごとに大きな格差を生じている(図1)。ギリシャでは14%にとどまっており、この数字は過去2年間、わずかに増えたに過ぎない。
図1:インターネット接続の世帯普及率

(出典)「eEurope2002最終レポート」(欧州委員会)
eEurope2002は、情報インフラに係る地域間格差を減少させることの重要性を強調していた。このため、欧州委員会は既存の構造基金によるプログラムにおける情報社会プロジェクトの優先度を引き上げた。構造基金のうち約100億ユーロが、情報インフラ、電子政府、電子商取引及び情報通信スキル分野に投入されている。
学校のインターネットへの接続は、2002年2月には93%に達している。2002年末までに全ての学校をインターネットに接続するという目標について、多くの加盟国は達成したか、その途上にある。
(2) 競争の強化による価格の低下
標準的なダイヤルアップによるインターネット接続の価格は、この2年間、継続して下落している。現在、月に20時間(オフピーク)使う標準的な家庭ユーザについて、多くの加盟国では月額10〜20ユーロ(通話料込み)となっている。
ブロードバンド接続については、データが限られている。ブロードバンド接続が広範囲で利用可能となることはeEurope2005の主要目標の1つである。
(3) 高速な研究用ネットワーク
GEANTネットワークは2001年12月に最大速度が10Gbpsとなり、2002年末には1か月当たり1PB(ペタ・バイト)以上のデータを伝送している。GEANTネットワークは今や世界で最も高速な研究用ネットワーク・バックボーンであり、32か国をカバーしている。
2.法的枠組みの整備
(1) 電気通信に関する新しい規制の枠組み
eEurope2002は、インターネットを早期に立ち上げるために価格の引き下げが重要であるとし、競争を促進するとともに競争的な価格を提供するための主な手段は、新たな規制の枠組みにあるとしていた。
2000年7月に欧州委員会は電気通信に関する新たな枠組みのためのパッケージを提案し、以下の欧州指令等が採択された。
- フレームワーク指令(2002/21/EC)
- 許可指令(2002/20/EC)
- アクセス指令(2002/19/EC)
- ユニバーサルサービス指令(2002/22/EC)
- データ保護指令(2002/58/EC)
- 電気通信ネットワーク・サービス市場の競争に関する指令(2002/77/EC)
- 周波数スペクトラム決定(676/2002/EC)
加えて、加入者回線の自由化規則を2001年1月2日に発効させたが、その効果的な適用は不十分で、遅々としている。
(2) 電子商取引
法的枠組みは、電子商取引指令(2000/31/EC)、電子署名指令(1999/93/EC)及び情報社会における著作権及び関連権利指令(2001/29/EC)により強化された。
3.インターネットの活用の促進
(1) 学校
EUの学校におけるコンピュータ装備率は高く、しかも上昇している。平均すると、1台のオフライン・コンピュータあたり10人の生徒という割合である。1台のオンライン・コンピュータ当たりの生徒数は25人から17人になったが、加盟国間で大きなバラツキがある。
学校のADSL接続率は5%から19%へと大幅に増えたが、ケーブルモデム接続率は6%のままである。
EUの教師の半分以上が公的なコンピュータ利用研修を受けており、4割がインターネットの使い方の研修を受けている。9割以上の教師が自宅でコンピュータを使っており、8割近くが自宅でインターネット接続を行っている。さらに、9割近くの教師はインターネットが教育の方法を既に変えたか、あるいは早かれ遅かれ変えるだろうと確信している。
(2) 知識立脚経済における労働
デジタル・リテラシーに関連して、コンピュータの訓練を受けている労働者の割合は2000年の23%から2001年には29%へと増加したが、この伸びは2002年は続かなかった。コンピュータを業務に利用している者の割合が、コンピュータの訓練を受けた者の割合よりも遙かに高いことから、さらなるコンピュータ訓練が求められる。
労働場所の柔軟性は、テレワークに関する公的機関の間での2002年7月の合意により、大きく拡大した。労働者にテレワーカーが占める割合は、2000年の5.6%から2002年には8.2%に拡大した。
公衆インターネット・アクセス・ポイントはWebにアクセスするためだけでなく、訓練や遠隔労働のためにも重要である。EU市民の約8%が利用している。
(3) 全ての者の参画
eEurope2002のサブタイトルは「全ての人のための情報社会」であり、真に包括的な情報社会の推進を目的としていた。アクセシビリティに関する主な成果は、以下のとおりである。
- 公的Webサイトに対するWebアクセシビリティ・イニシアティブ・ガイドラインの採択
- アクセシビリティ原則への適合を促進するための、関連法制や標準のレビュー
- 全ての人のためのデザインに関する中心的なネットワークであるEdeANが2002年7月に発足し、現在約100のメンバーがいる
- 特に雇用可能性の向上と、特別なニーズを必要とする人々の社会への参加のため、IT製品のアクセシビリティに係る「全ての人のためのデザイン」標準を発表した
(4) 電子商取引の加速化
B2Cに対する要求は増大しているものの、B2Bほどではない。インターネットユーザーのうちオンラインショッピングをしばしばまたはときどき行う者の割合は、2000年10月に18.5%であったものが、2002年11月には23%に増大した。小売全体に占めるB2Cの割合は、約1%に過ぎない。
(5) より安全なインターネット
セキュリティ侵害防止のためのアクションは多くの分野で進行中である。電子署名指令が採択されたが、この認証形態の利用は限られている。eEurope計画は、また、1億ユーロの研究費に裏付けられた業界主導のスマートカード・イニシアティヴを始動した。
(6) 電子政府
eEurope2002は、2002年末までに基本的な行政サービスがオンラインで利用可能となるという目標を設定していた。2002年10月、全ての加盟国は20の基本的な行政サービスの全てについて、少なくとも部分的にオンラインで利用可能としている。
(7) オンライン・健康サービス
eEurope計画が始まってから、健康サービスのオンラインでの提供はかなり進展している。2002年の調査では、EUの一般開業医の78%はインターネットに接続されており、英国や北欧各国ではほぼ100%となっている。また、48%の開業医が電子カルテを利用している。しかし、患者へのサービス提供に関してインターネットを利用したインタラクティブなサービスは、電子メールによるコンサルテーション(12%)、オンライン診療予約(2%)など、まだ初期段階と見られる。
4.まとめ
この評価は、eEurope2002が、その主な目的を達成したことを示している。
官民ともに幅広くITアプリケーション、コンテンツ及びサービスを積極的に活用することが、EU経済全体の生産性と競争力を向上させ、民間投資にとって好ましい環境を創り出すために期待される。
U.日本との比較
上にでてきたベンチマーク数字の一部について、日本との比較を表1に示す。
表1

(備考)学校の高速インターネット接続率は、EUはADSLとケーブルモデムを加えたもの、日本は400kbps以上の回線で接続されたものである
(出典)EUの数字は全て「eEurope2002最終レポート」(欧州委員会)
日本の数字は以下のとおり
@「平成13年通信利用動向調査」(総務省)
A「学校における情報教育の実態等に関する調査」(文部科学省)
B「平成14年版情報通信白書」(総務省)
C「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査」(経済産業省、電子商取引推進協議会、株式会社NTTデータ経営研究所)
表1を見るとEUと日本の間に大きな差違がないようにも思えるが、以下の2点に留意する必要がある。
- 数字の取り方が異なるため、単純に両者を比較することはできないこと
- 図1にもあるように、EUの中でも情報化の進んでいる国とそうでない国には大きな格差があるため、単純に差違がないと理解することは必ずしも正しくないこと
しかしながら、EU、日本ともに、インフラ面を中心とした情報化は相当程度進展してきたことは、表1から読みとれる。
eEurope2002がインターネットの普及を政策の中心としていたのに対し、その後継であるeEurope2005では、インターネットの経済活動での利用と、それによる新規市場の創出、コスト削減及び生産性の向上を主眼としている。すなわち、既にインターネットの普及については目途がたったことから、次の段階であるインターネットを活用した経済の競争力強化に軸足が移ったものである。
日本でも「e-Japan重点計画-2002」(平成14年6月18日IT戦略本部決定)に基づき、ITを経済競争力の強化につなげる政策が展開しているところであるが、EUと日本のIT利用を巡る競争はこれからが本番である。競争力ある日本を実現するために、官民一体となった強力な取り組みに期待したい。
V.産業動向
1.コンピュータ・インターネット
<欧:欧州情報通信市場回復の予測>
欧州情報技術観測所(EITO)は2月25日、2003年の欧州IT市場予測を発表した。西欧の情報通信市場は2002年には+0.2%の成長にとどまったが、2003年には+2.5%の成長を、また2004年には+4%の成長を予測している。また、インターネット普及率についても人口ベースで2002年の44%から2006年には66%に達すると予測している。ただし、ハードウェア部門については回復は遅れると見ており、2003年は−0.7%の成長、2004年は+2.8%の成長と予測している。
2.テレコミュニケーション
<独・仏:DT及びFT、過去最高の純損失を計上>
ドイツ・テレコム(DT)は3月10日、2002年の業績を発表した。2002年の純損失は246億ユーロに上り、これは同社にとって過去最高であるだけでなく、欧州企業としても過去最高記録である。その主因は、子会社やUMTS事業免許など保有資産の評価損が215億ユーロに達したことにある。EBITDAは前年比+7.8%の163億ユーロ、売上高は前年比+11.1%の537億ユーロであった。また、2002年末の純負債は前年比−2.7%の611億ユーロであった。
また、フランス・テレコム(FT)は3月5日、2002年の業績を発表した。2002年の純損失は207億ユーロに上り、これは同社にとって過去最高であるだけでなく、仏企業としても過去最高記録である。その主因は、のれん代償却費及び特別準備金が182億ユーロに達したことにある。EBITDAは前年比+21.1%の149億ユーロ、売上高は前年比+8.4%の466億ユーロであった。また、2002年末の純負債は前年比+7.3%の680億ユーロであった。同社では2003年の業績を売上高で3〜5%の成長、EBIDTA及び営業利益で2桁の成長と見込んでいる。
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