
【 2003年5月号 】
欧 州 動 向
「欧州における研究開発を巡る状況」
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1.はじめに
欧州における研究開発投資の対GDP比(1.94%)は、日本(2.98%)や米国(2.70%)に大きく後れをとっており、リスボン戦略では、これを2010年には3%まで引き上げることとなっていることについては、2002年11月号の拙稿で述べた。
今回は、少し違った側面から、欧州の研究開発を巡る状況を眺めてみたい。
T.欧州における研究開発投資の状況
まず、企業におけるR&D(研究開発)投資の状況を見てみよう。世界のR&D投資額上位100社及び500社の、R&D投資の推移を表1に示す。
表1 世界のR&D投資額上位100社及び500社のR&D投資の推移

(出典)「欧州科学技術指標第3次報告」(欧州委員会)、2003年3月
(以下、出典は上に同じ)
上位100社及び500社に含まれる各国の企業数にはほとんど変化がないが、これら100社又は500社のR&D投資額に占める各国の割合は大きく変化している。1996年から2000年までの5年間の年平均伸び率で見ると、米国企業の投資額の伸び率は世界計とほぼ同じであるのに対し、欧州企業はこれを大きく上回り、日本企業はこれを大きく下回っている。これを受け、上位100社及び500社のR&D投資額合計に対する欧州企業の占める割合は、2000年には約3割に達している。他方で日本のそれは約2割に低下している。
ところで、上位500社を分野別に見ると、世界合計で投資額の27.4%をIT関連が、17.6%を自動車・自動車部品が、15.5%を製薬が占めており、R&D投資額におけるIT関連のプレゼンスが大きい。他方で、欧州企業だけを見るとIT関連は16%に過ぎず、自動車・自動車部品の24%に次いで2位となっており、欧州におけるIT関連R&D投資のさらなる拡大が求められるところである。これはリスボン戦略の訴えるところでもある。
次に、R&D投資額上位500社に含まれる欧州企業の国別内訳を表2に示す。
表2 世界のR&D投資額上位100社及び500社に含まれる欧州企業の国別分布(2000年)

(備考)欧州については、上位5か国のみ内訳を示した
表2を見ると、EU15か国のうち、上位3か国(独、仏、英)でEU15計の約4分の3を占めており、特にドイツ企業のプレゼンスが高いことが分かる。
さて、IT分野に着目して、R&D投資額の付加価値額比率を見てみよう(表3)。
表3 企業におけるR&D投資額の付加価値額に対する比率

(備考)1.EU7はベルギー、デンマーク、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア
及びフィンランド。電気機器の数字はイタリア及びフィンランドを含まない。
電子機器の数字はイタリアを含まない
2.米国のコンピュータ・事務機器及び電気機器の数字は1998年
3.日本の電気機器及び電子機器の数字は1997年
電気機器においては日本のR&D投資額対付加価値額比率が欧米各国より高いのに対して、電子機器においては日本のそれは欧米諸国と比べ決して高いとは言えない。電子機器は、製造業全体と比べR&D投資額対付加価値比率が高く、企業活動における研究開発の重要性が高い業種であることを考えれば、電子機器分野におけるR&D投資の一層の促進が求められよう。
R&D投資により生じる主要な成果は、知的財産である。IT分野に係る欧州特許の取得状況について、表4に示す。
表4 IT分野に係る欧州特許の取得状況
EU及び米国が、1992年から1999年にかけてシェアを増大したのに対し、日本が大きくシェアを落としている。他方で、米国は通信を別とすればEUよりも欧州特許のシェアが高く、同国企業の知的財産戦略の強さが伺える。
U.産業動向
1.コンピュータ・インターネット
<仏:ソフトウェア及び情報サービス産業の2003年予測>
ソフトウェア及び情報サービス産業の仏業界団体サンテック・アンフォルマティック(会員企業・グループ数500以上)は4月3日、仏における同市場の2003年予測を発表した。同市場は2002年に前年比3%減少したが、2003年上半期は2002年上半期よりも厳しい状況になると予想している。また、2003年中の景気回復がない場合には、通年でも市場が減少すると見ている。分野別では、2003年はコンサルティング、技術支援、パッケージ・ソフトウェア等の分野で減少が続くものの、企業内管理の分野では増加すると見ている。
2.テレコミュニケーション
<瑞:オレンジのUMTS事業免許譲渡を許可せず>
スウェーデンPTS(通信監督機関)は4月23日、仏オレンジ(移動体通信、フランス・テレコムの子会社)のUMTS事業免許の子会社(GGG Licens AB)への譲渡許可申請を拒否した。PTSは、オレンジがUMTS事業免許をGGG Licens ABに譲渡したうえで同社を売却するのではないかと警戒しており、これは禁止されているUMTS事業免許の売却に当たると判断された模様である。オレンジは巨額の負債を抱えており、昨年12月にスウェーデンからの撤退を発表していた。なお、オレンジは昨年9月、UMTS事業開始の3年間の延期申請をPTSに拒否されている。
V.政策動向
<仏:インターネット市場報告書>
仏ART(電気通信規制局)は3月18日、「インターネット、フランス市場のレビュー」を発表した。フランスにおける2002年末時点での有料インターネット接続回線数は、低速回線が913万5千(対前年比30.8%増)、高速回線が167万5千(同178.5%増)となり、高速回線の増加が著しい。また、2002年上半期のインターネット接続サービスの売り上げは5.6億ユーロ、接続時間数は7.4億時間となっている。ダイヤルアップによる接続料金については、大手7社の平均で過去3年間に52〜69%低下しているが、月10時間以下の短時間プランについては2002年は上昇に転じている。DSL向けの加入者回線利用については、ARTがフランス・テレコムに対して2002年5月に行った料金引き下げ勧告により、同社の月額料金は2001年7月の14.5ユーロから2002年6月には10.5ユーロ(28%減)になったとしている。
<EU:健康情報収集に係るインターネット利用状況>
欧州委員会は4月16日、健康情報収集に係るインターネット利用状況についての調査結果を発表した。欧州市民の41%が、インターネットが健康情報を得るよい方法だと考えている一方で、16%がよい方法でないと考えており、16%は探す情報によりけり、27%は分からないとしている。健康情報の主要情報源として医者や薬剤師といった専門家を挙げた人は45%に上る一方、インターネットをあげた人は3.5%にとどまった。欧州委員会のデビッド・バーン委員(保健・消費者保護担当)は、「欧州市民の大部分が、Web上の健康情報の量と信頼性に気づいていない。公衆健康行動計画とe-Healthプログラムを通じて、市民が良質、便利かつ信頼性のある健康情報にアクセスできるよう、EUは進めているところだ。」と語った。なお、健康に関する情報と知識の向上を図ることは、EUにおいて2003年から2008年にかけて実施される公衆健康行動計画(予算3.12億ユーロ)の優先課題の1つである。
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