
【 2003年9月号 】
〜 欧州景気動向とIT関連企業業績 〜
JEITAパリ駐在 福 田 賢 一
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T.欧州景気動向
90年代中頃から安定的な成長を見せていたユーロ圏の経済は2001年から減速傾向に転じ、直近の2003年第2四半期の実質GDP成長率は0.0%となった。直近4四半期のGDP成長率を見ると、日本及び米国に比べ、ユーロ圏は低迷している(図1)。また、2001年第1四半期以降、総固定資本形成がマイナス続きと投資が減少しているとともに、2003年に入ってからは輸出の減少傾向も明確になってきた。失業率は2001年上半期は8.0%で安定していたが、その後上昇を続け、直近の数字では8.9%(2003年6月)となっている。個人消費も低調である。
図1 ユーロ圏及び日米の実質GDP成長率(前期比)

(出典)欧州委員会統計局、内閣府経済社会総合研究所、米国商務省経済分析局
為替に目を転じると、ユーロは円及び米ドルに対して2002年半ば頃から値を上げ続け、2003年4月頃からはユーロ高の勢いが顕著なものとなった(図2)。2003年5月31日には140円/ユーロを超えて過去最高を記録したが、その後下落に転じ、本稿執筆時点(8月26日)には127円/ユーロの水準となっている(なお、直近1週間で5円以上下落している)。こうしたユーロの急激な変動は、企業活動に大きな影響をもたらしている。
図2 ユーロの対円及び対米ドル為替レート

(出典)欧州中央銀行
欧州中央銀行の2003年8月月報(8月7日発表)では、ユーロ圏の景気動向について、本年下半期から徐々に回復、来年には回復の加速が期待できる理由が増えているとしている。具体的には、可処分所得の上昇、外需回復の兆し等を挙げている。
OECDが本年7月末に発表したユーロ圏経済のレポートでは、ユーロ圏の景気動向について、2004年には潜在成長力が約2%に回復するとともに、失業率も2004年後半には約8.5%に低下するとの見方を示している。また、労働及び生産市場改革の効果により、構造的な失業を削減するとともに、潜在成長力を1.75%から米国並の2.25%に引き上げることができるとの見方も示している。
本年欧州を襲った記録的猛暑が、景気に対してプラスに働くか、マイナスに働くかは、今のところ決定的な説はないようである。日本であれば猛暑はエアコンや飲料、衣料等の売上増大を通じ景気にプラスに働くと思われる。当地でも飲料の売上は大きく伸びている。他方で一般家庭や多くのレストランにはエアコンがないが、エアコンが売れたという様子は見受けられない。また、猛暑による農作物の被害が深刻となっている。経済全体で見ると、マイナスの面の方が大きいかもしれない。
さておき、以上のような厳しい景気動向の中、IT関連企業の業績がどうなっているか、2003年第2四半期の各社業績発表が出たので、簡単にまとめてみた。
U.IT関連企業の業績
以下に、IT関連大手企業の業績をいくつかまとめた。企業によっては第2四半期の計数を公表せず上半期の計数としている場合があること等により、企業ごとに数字の取り方が異なっているが、御容赦願いたい。
1.企業の電子商取引の状況
(1)通信
売上は若干の増加ないしは横ばいであるが、収益は大きく増加している。経済状況を鑑みると、善戦している。
◆ ブリティッシュ・テレコム(英)
2003年第2四半期の売上は45億8600万ポンド(前年同期比0.02%減)と横ばいであったが、EBITDAは14億6000万ポンド(前年同期比12.0%増)と増加した。
また、6月末時点での同社のADSL加入者数は105万8000となった。
◆ ドイツ・テレコム(独)
2003年第2四半期の売上は135億9300万ユーロ(前年同期比4.7%増)、EBITDAは47億1000万ユーロ(前年同期比24.7%)の大幅増、また純益は2億5600万ユーロ(前年同期は20億8300万ユーロの損失)で2期連続の黒字となった。同社は、8億ユーロのコスト削減が奏功したと見ている。
同社の携帯電話子会社Tモバイルの2003年第2四半期の売上は55億5700万ユーロ(前年同期比18.9%増)、EBITDAは20億8800万ユーロ(前年同期比54.9%増)と大幅に増加した。
同社のインターネット子会社Tオンラインの2003年第2四半期の売上は4億4900万ユーロ(前年同期比20.7%増)、EBITDAは1億100万ユーロ(前年同期比248.3%増)と大幅な増加となった。また、同社のDSL加入者数は6月末で322万となった。
◆ フランス・テレコム(仏)
2003年上半期の売上は228億5200万ユーロ(前年同期比1.7%増)、償却前営業利益は84億8500万ユーロ(前年同期比23.5%増)と大きく増加した。
同社の携帯電話子会社オレンジの2003年上半期の売上は86億1500万ユーロ(前年同期比6.9%増)、償却前営業利益は33億ユーロ(前年同期比41.8%増)と大幅な増加となった。同社では2003年通年の償却前営業利益を最低62億ユーロと見込んでいる。
同社のインターネット子会社ワナドゥーの2003年上半期の売上は12億2700万ユーロ(前年同期比33.7%増)、償却前営業利益は1億900万ユーロ(前年同期比289.3%増)と、好調を続けている。同社ブロードバンド接続の6月末時点での仏国内加入者数は139万4000(うち132万がADSL、残りはケーブル)となった。
◆ テレコム・イタリア(伊)
2003年上半期の売上は55億ユーロ(前年同期比6.7%増)、純益は18億ユーロ(前年同期比8.4%増)となった。同社では為替レート要因がなければ、売上は15.3%増になっていたとしている。
◆ テレフォニカ(西)
2003年第2四半期の売上は71億430万ユーロ(前年同期比1.6%減)であったが、EBITDAは31億3690万ユーロ(前年同期比3.5%増)と増加し、純益は8億8220万ユーロ(前年同期は56億9530万ユーロの損失)と回復した。携帯電話子会社のテレフォニカ・モビレスの回復(2003年第2四半期純益4億1690万ユーロ、前年同期は46億2320万ユーロの損失)が、これに大きく貢献した。
(2)通信機器
携帯電話分野において、本年は世界シェアが40%に到達すると見られているノキアは別とすると、売上は大幅に減少している。しかしながら、収益は改善している。
◆ ノキア(フィンランド、通信機器)
2003年第2四半期の売上は70億1900万ユーロ(前年同期比1.2%増)であったが、ネットワーク部門の再編に3億9900万ユーロを投じたことから、営業利益は8億5800万ユーロ(前年同期比32.9%減)と大きく減少。同社CEOは「携帯電話市場の39%を当社が占めており、この比率は増大しているが、当社の売上は経済情勢及び弱い米ドルを反映したものとなった」としている。また、同社は第3四半期の携帯電話の売上を前年同期比で台数ベース10%増、金額ベースでは横ばい又は微減と予測している。
◆ エリクソン(瑞、通信機器)
2003年第2四半期の売上は276億瑞クローナ(前年同期比28.3%減)であったが、営業損失は2億瑞クローナ(前年同期は25億瑞クローナの損失)と大きく回復。同社CEOは「我々は引き続き2003年中の黒字回復を目指している。過去8四半期で営業費用を半分以下に削減し、以前に予告した費用水準を達成しつつある」としている。同社は、為替変動が売上に及ぼした影響は、マイナス9%としている。また、同社は2003年の世界携帯市場が米ドルベースで前年比10%以上減少する可能性があるとの見方を変えていない。
◆ アルカテル(仏、通信機器)
2003年第2四半期の売上は31億4900万ユーロ(前年同期比25.6%減)と大幅に減少したが、営業利益は2100万ユーロ(前年同期は1億2600万ユーロの損失)に回復し、純損失も6億7500万ユーロ(前年同期は14億3800万ユーロ)に改善した。同社CEOは「粗利益率は上昇を続けており、第2四半期は固定費も実質的に減らしている。弱い米ドルと前例のない価格圧力を伴った不景気な市場の中で、こうした業績を上げたことに自信を持って良い」としている。
(3)その他
◆ トムソン(仏、家電、旧トムソン・マルチメディア)
2003年上半期の売上は38億2300万ユーロ(前年同期比23.2%減)、営業利益は1億4300万ユーロ(前年同期比42.1%減)と大きく減少し、純損失9200万ユーロ(前年同期は1億2300万ユーロの純益)に転落した。同社売上の約4割を占める消費者向け製品の売上が前年同期比33%減、同約13%を占めるコンポーネントの売上が同46%減となったことが大きく影響している。また、為替変動により、売上が5億4400万ユーロ(14.2%)減少したとしている。同社では2003年下半期の売上を47から51億ユーロの間と見込んでいる。
◆ フィリップス(蘭、家電・電子)
2003年第2四半期の売上は65億3200万ユーロ(前年同期比18.2%減)と大きく減少し、営業損失は2600万ユーロ(前年同期は1億6500万ユーロの利益)となった。しかし、純利益ベースでは4200万ユーロ(前年同期は13億5500万ユーロの純損失)と回復した。同社は、為替変動による損失は8400万ユーロであったとしている。
◆ SAP(独、企業向けソフトウェア)
2003年第2四半期の売上は16億3800万ユーロ(前年同期比7.9%減)となったが、営業利益は3億4000万ユーロ(前年同期比6.3%増)と増加した。売上高減少の約半分はソフトウェアの売上減(4億3100万ユーロ、前年同期比13.1%減)によるものである。地域別の売上では、米州(5億600万ユーロ、前年同期比14.7%減)の減少が大きく、欧州・中東・アフリカ(9億4200万ユーロ、前年同期比3.5%減)の減少は小幅にとどまった。同社CEOは「ビジネス環境は引き続き厳しいが、我々は競合他社よりもよくやった」としている。
◆ STマイクロエレクトロニクス(仏伊、半導体)
2003年第2四半期の売上は17億220万米ドル(前年同期比11.2%増)と増加したが、営業利益は1億2150万米ドル(前年同期比17.2%減)と減少した。営業利益を製品別に見ると、通信・周辺・車載分野が1億3390万米ドルと大きい。ディスクリート・標準ICは2400万米ドルの利益を出しているが、メモリ製品は1290万米ドルの損失となっている。同社CEOは「粗利益率は第1四半期よりも向上しているが、価格圧力と米ドルの下落により打撃を受けている」としており、また、古い生産サイトの大半を新しい生産サイトやシンガポールの生産サイトに移転すると予告している。
◆ インフィニオン(独、半導体)
2003年第2四半期の売上は14億7100万ユーロ(前年同期比11.4%増)と増加し、営業損失は1億1000万ユーロ(前年同期は1億2900万ユーロ)と僅かに改善した。売上の約4割を占めるメモリ製品は、前年同期比3.6%の売上増にとどまった。同社CEOは、「特にDRAM市場が好調な一方、米ドル下落と強い価格圧力があった。為替変動要因がなければ、純損失は(6800万ユーロ少ない)4800万ユーロのはずだった」としている。同社は2003年6月からのDDRメモリの需要増大と価格上昇を好感しており、企業の更新投資の緩やかな上昇による需要拡大と、米インテル社のSpringdaleチップセットの登場によるDRAM需要拡大(同チップセットはデュアルチャネルDDRメモリをサポートする)に期待している。
V.政策動向
<仏:無線LANの規制緩和>
仏電気通信規制局(ART)は7月24日、無線LANに関する規制緩和を発表した。仏では2002年11月7日にARTが無線LANの公共施設での利用を「試験利用」の位置づけで認めたものの、無線LANの周波数帯を利用している仏国防省との関係があり、仏本土96県のうち58県では等価等方輻射電力(EIRP)の条件が厳しい、周波数帯によっては屋外の利用ができない又は国防省の許可が必要、新規に公衆アクセスポイントを設置する際にはARTの許可が必要といった問題があった。その後、EIRPの制限については2003年1月1日に58県から38県に緩和された。
今回の規制緩和では、これらの問題について、以下のとおり改善された。
○ 残された38県でもEIRP規制が緩和され、仏本土96県全て同じ条件となった。具体的なEIRPの値は以下のとおり
| - 2400〜2454MHz帯 |
屋内、屋外ともに100mW |
| - 2454〜2483.5MHz帯 |
屋内100mW、屋外10mW |
| - 5150〜5250MHz帯 |
屋内200mW、屋外の利用は不可 |
| - 5250〜5350MHz帯 |
屋内200mW(DFS/TPC又は相当を使用の場合)、 |
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屋内100mW(DFSのみ使用の場合) |
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屋外の利用は不可 |
○ 国防省の許可が不要となった
○ 関連するEU指令及びEU勧告に準拠し、新規公衆アクセスポイントの設置手続きについて、簡単な届出のみとなった
なお、ARTは依然、無線LANの利用を「試験利用」と位置づけており、2004年下半期に技術面でのアセスメントを行い、無線LANの免許システムを再考することとしている。
©JEITA,2003
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