
【 2003年10月号 】
T.欧州におけるeビジネスの状況
1.はじめに
欧州委員会がとりまとめた「欧州eビジネスレポート」を基に、欧州企業におけるeビジネスの動向を見てみる。
このレポートはeビジネスの動向を把握するためにまとめられているもので、2002年6月と、2003年3月に調査を行っている。2002年の調査はEU15か国において15業種を対象とし、1か国1業種当たり103の企業を選定して行われた、大規模なものである。他方、2003年の調査はEU5か国(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)において7業種を対象とし、1か国1業種当たり35の企業を選定しており、かなり規模が限られたものとなっている。このため、両年の結果を単純に比較することが困難であり、整合性のとれない記述となっている部分があることを、予め御承知おき願いたい。
2.電子商取引の状況
基礎情報として、企業におけるWebサイトの保有率を見てみよう。
図1 企業におけるWebサイトの保有率(2003年3月)

(備考)対象はEU5(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)
水色は既にWebサイトを保有、紫は1年以内にWebサイト保有予定
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
従業員数50名未満の企業でも、1年以内にWebサイト保有予定の企業を合わせると、半数以上がWebサイトを保有することとなる。業種別に見ると小売と食品・飲料・たばこの保有率が低いが、これら業種は少数の大企業と多くの中小企業に2極化しており、後者のWebサイト保有率が少ないことが、当該業種全体の結果に影響した可能性が高い。
続いて、オンライン販売の導入状況について見てみよう。(表2)
表2 オンライン販売の導入状況(2003年3月、%)

(備考)対象はEU5(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
約半数の企業がオンライン販売を導入している。導入している企業のうち、SSLを使用している企業が約半数、オンライン支払が可能な企業は約3分の1となっている。
ところで、オンライン販売を導入している企業が、オンラインで受け付けた注文を企業内でどのように処理しているかを見てみよう。(図3)
図3 オンラインで受け付けた注文の処理方法

(備考)対象はEU4(ドイツ、フランス、イタリア、英国)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
2002年6月から2003年3月の9か月間で、電子メールで通知する企業の割合が10ポイント減少した。一方で、バックエンドシステムと統合している企業の割合が8ポイント増加し、約3分の1を占めている。バックエンドシステムと統合している企業を規模別に見ると、従業員数250名以上の企業が群を抜いている。
最後に、オンライン購買の導入状況について見てみよう。(図4)
図4 オンライン購買の導入状況

(備考)対象はEU4(ドイツ、フランス、イタリア、英国)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
全体でのオンライン購買の導入率は、2002年6月の43%から2003年3月には50%へと伸び、半数の企業がオンライン購買を導入していることになる。
従業員規模別で見ると、従業員数250人以上の大きな企業で、オンライン購買の導入率が大きく上昇している。業種別では化学工業及び輸送機械が大きく伸びている。
オンライン購買の効果について、実際に導入した企業はどのように見ているであろうか。(表5)
表5 オンライン購買の効果(2003年3月、%)

(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
4項目とも、「とてもよい」「まあまあよい」を合わせたポジティブな評価をしている企業が半数を超えており、ネガティブな評価をしている企業の割合は数%にとどまっている。
3.業務でのIT活用の状況
まず、企業間業務でのIT活用の状況として、企業間での協調・データ交換のオンライン化状況を見てみよう。(表6)
表6 企業間業務のオンライン化状況(2003年3月、%)

(備考)対象はEU5(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
デザイン作業や需要予測といった、比較的高度な連携を必要とされる業務については、オンライン化があまりなされていない。他方で、文書交換については比較的簡単に行えることもあり、オンライン化が進んでいる。
業種別では輸送機械と情報通信サービスが抜きんでている。
次に、企業内業務でのIT活用の状況を見てみよう。(表7)
表7 企業内業務でのIT活用の状況(2003年3月、%)

(備考)対象はEU5(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
文書共有や作業協調については導入率が比較的高いが、さらに進んだ利用となると未だこれからといった感じである。eラーニングなどはもっと積極的に活用されてもよいように思う。
4.IT人材の状況
過去1年の間にIT専門家を採用した、あるいは採用しようとした企業のうち、採用に当たって困難と感じた割合を図8に示す。
図8 IT専門家の採用についての難しさ

(備考)EU4はドイツ、フランス、イタリア、英国 EU5はEU4及びスペイン
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
従業員規模が小さい企業の方が困難を感じている割合が高い。また、時系列で見ると2002年よりも2003年の方が困難を感じている割合が高く、かつ大きな困難を感じたとする企業が約3分の1近くに達している。
ただし、どのようなスキルの人材を求めたか等について詳細な調査がなされていないため、単純にIT人材不足が進んでいると結論づけることはできない。
5.eビジネスに対する企業の評価
最後に、eビジネスに対する企業の満足度を見てみよう。(表9)
表9 eビジネスに対する満足度(2003年3月、%)

(備考)対象はEU5(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
「非常に満足」と「まあまあ満足」を合わせると、約9割の企業が好評価している。
しかし、時系列で見てみると、2002年から2003年にかけて「まあまあ満足」は増加したものの、「非常に満足」には変化がない(表10)。eビジネスの成熟には、未だ時間を要するということであろうか。
表10 eビジネスに対する満足度の変化(%)

(備考)対象はEU4(ドイツ、フランス、イタリア、英国)
(出典)欧州eビジネスレポート2003年版(欧州委員会)
U.産業動向
<仏:IT製造業2002年に大きく後退>
仏産業調査統計局(SESSI)が8月に発表した仏IT産業に関するレポートによると、2001年に後退に転じた仏IT製造業は、2002年には売上高で前年比10.4%減、雇用者数で同16.7%減と大きく後退した(表11)。
製造だけでなく販売やサービスまで加えたIT産業全体で見ると、2001年時点で売上高1,920億ユーロ、付加価値額637億ユーロ(全産業の6.1%)、従業員数87万6千人(国内雇用の5.6%)となっており、仏経済に大きなウェイトを占める産業である。そのうちIT製造業は売上高で35.8%、雇用者数で32.7%を占めており、IT製造業の後退は、仏経済に大きな影響を与えた。
表11 仏IT製造業の状況

(備考)2002年の数字は速報値
(出典)仏産業調査統計局発表資料
<仏伊:STマイクロエレクトロニクス、仏レンヌ工場閉鎖へ>
仏伊STマイクロエレクトロニクスは9月3日、欧州及び米国にある6インチウェハーの工場の少なくとも半数について、8インチウェハーに移行するか、シンガポールの6インチウェハー工場に集約し、コスト競争力を強化すると発表した。その一環で、同社は仏レンヌ工場(6インチウェハー)を2004年3月末に閉鎖することとしたが、9月3日及び9月17日に開かれた企業中央委員会では、いずれも労組側が途中退席する事態となった。なお、仏レンヌ工場の従業員428名について、同社は仏内の別の工場への配転を計画している。
V.政策動向
<EU:EU市民はオンライン支払を相応に評価>
欧州委員会は9月18日、オンライン支払に対するEU市民の認識に関する調査結果を発表した。オンライン取引の信頼性についてのEU市民による10点満点での評価結果は平均7.08点で、欧州委員会は「相応に評価されている」としている。評価が最も高かったのはフィンランドの8.41点で、これにオランダ(7.91点)、スウェーデン(7.79点)が続き、北欧諸国での評価が高い。他方、評価が最も低かったのはギリシャの5.25点で、これにポルトガル(5.51点)、スペイン(6.46点)が続き、南欧諸国で評価が低くなっている。
また、600を超えるインターネットサイトを分析した結果として、電子商取引サイトのうち、セキュリティ情報を容易に見つけられたのはEU全体で26%に過ぎなかったとしている。最高はフランスの47%で、最低はオーストリアの6%である。オンライン銀行のサイトでは、セキュリティ情報がはっきりと表示されているのはEU全体で83%であるが、デンマーク、ギリシャ、スペイン、アイルランド、ルクセンブルグ、オランダ、フィンランド及びスペインでは100%であった。
©JEITA,2003
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