
【 2004年2月号 】
T.仏の2004年度研究開発予算
今回は、仏の2004年度予算法(2003年12月18日、仏上下院可決。)について、研究開発関連部分を中心に見ることとする。
1.民生研究開発予算
2004年度の民生研究開発予算は89億2,847万ユーロで、前年度比+2.2%の増加となった。この増額の中には、以下のものが含まれる。
- 補助金の増額・・・・・・・・・・・・・・・・+1%
- 公的研究機関への直接配分・・・・8,000万ユーロ
- 減税制度の拡充・・・・・・・・・・・・・3,000万ユーロ
研究省は、優先研究分野に対する新規研究資金(1.5億ユーロ)を加えた、研究開発に対する実質的な公的支出で見ると、前年度比+3.9%であるとしている。
民生研究開発予算を省別に見ると、以下のとおりである。(上位3省のみ。全体の約87%を占める。)
- 研究省・・・・・・・・・・・・62億3,659万ユーロ(前年度比+1.7%)
- 経済財政産業省・・・・・10億1,899万ユーロ(前年度比▲3.0%)
- 文部省・・・・・・・・・・・・・5億1,137万ユーロ(前年度比+1.0%)
なお、公的研究機関において2004年度に発生する1,600名の退職者について、その半分程度しか補充しないとしている。退職者の補充の一部(550名)は、3〜5年の期限付き雇用とする予定である。
2.科学補助金及び研究技術補助金
研究省所管の研究開発予算のうち、研究開発に対する一般的な助成制度の中で最大のものである科学補助金(FNS)及び研究技術補助金(FRT)の予算額は、以下のとおりいずれも大きく増加した。
- FNS・・・・・・・・・・・・1億4,296万ユーロ(前年度比+10.4%)
- FRS・・・・・・・・・・・・1億1,921万ユーロ(前年度比+25.7%)
FNSは主として基礎研究を対象とし、公的機関と民間企業の協力等を促進するため、公的研究機関や公的機関に支出されている。支出分野で見ると生命科学分野が最大であり、全体の約52%(2004年度予算額7,500万ユーロ、前年度比▲10.9%)を占めている。情報通信分野は全体の約10%(同1,400万ユーロ、▲4.8%)となっている。
FRTは産官の連携の下、新製品や新サービス、イノベーションを促進することを目的としており、半分以上が民間企業に支出されている。支出分野で見ると情報通信分野が最大であり、全体の約55%(2004年度予算額6,600万ユーロ、前年度比+46.6%)を占めている。情報通信分野の大きな予算額の伸びは、仏研究省の情報通信技術に対する重要性の認識を示すものと言えるであろう。
3.研究開発投資減税
2004年度予算法には、民間企業の研究開発を促進する観点から、研究開発投資減税制度の改正が盛り込まれた。
これまでの研究開発投資減税制度では、当該年度の研究開発費と、直前2年間の研究開発費の平均の差額の50%が法人税の控除対象となっていた。企業における研究開発費の大幅な増加が期待できない現状では、この制度の効果があまり期待できないことから、当該年度の研究開発費それ自身の5%を控除対象に加えるよう改正された。また、控除限度額が約3割引き上げられた。
制度の概要について、日本の制度との比較も含めて、表に示す。
表 研究開発投資減税制度の概要
| |
フランス |
日本 |
| 2003年度まで |
2004年度から |
増加試験研究税制 |
総額型税額控除制度 |
| 控除額 |
当該年度の研究開発費と、直前2年間の研究開発費の平均の差額の50% |
当該年度の研究開発費と、直前2年間の研究開発費の平均の差額の45%、及び当該年度の研究開発費の5% |
当該年度の研究開発費と、直前5年間の研究開発費のうち上位3年の平均の差額の15% |
当該年度の試験研究費の10〜12%(10%+試験研究費売上高比率×0.2) |
| 控除限度額 |
610万ユーロ |
800万ユーロ |
法人税額の12% |
法人税額の20% |
(注)日本の増加試験研究税制と総額型税額控除制度は選択適用であり、両方の制度を同時に利用することはできない。
4.仏国内の評価
この2004年度予算に関して、政府の研究開発への姿勢に対する批判が高まっている。
2004年度予算が新規研究資金を含めても前年度比+3.9%であることに対し、イノベーション戦略委員会のプレティ議長は、「(2010年までに)研究開発費をGDPの3%とする目標とは相容れない。目標達成には研究開発費を年率8%増加させる必要がある」とした。
科学研究者全国組合の事務局長フォッセイ氏は、「予算額、不透明さ、資源についての思料のほどは、この予算の最も本質的な特徴だ。悲劇的な2003年度予算と比べても、停滞しているとしか言えない。」とした。
エニュレ研究相は、フォッセイ氏の批判を「この予算は、科学分野や期待あるハイテク分野での政府負担による研究に関して、如何に政府がコミットし続けているかを示している。前途有望な研究プロジェクトを支援するため、優先研究分野に関する新規資金を1.5億ユーロ用意した。」として、はねつけた。
公的研究機関の指導的立場にある研究者は、予算削減に抗議する署名活動を開始した。その中でも著名な数名は、要求が受け入れられなければ、辞職するとしている。この署名活動は全国的に賛同を得つつあり、2004年1月23日時点で2万人が署名したとしている。仏原子力庁のビュガ長官は、「従前研究機関に配分されていた予算が、個別研究プロジェクトに配分されるようになっている。予算が全体では増加しているにも関わらず、予算削減に抗議する背景はこれである。」としている。
研究機関での処遇について、仏の有名な薬学研究センターであるコシン大学の学長で、著名な遺伝学者でもあるカーン氏は、こう述べている。「世界で最も先端的な研究をしたいと思う若者に対して、我々はこんな契約しかできない − 何の展望もなく、技術的なバックアップが不十分で、ジョブ・セキュリティ皆無、月給は1,800〜2,000ユーロ、限られた期限の雇用契約。」仏研究者社会では、約4%の研究者が研究のベースを恒久的に米国に移そうと考えているとも言われている。
U.産業動向
<仏:2003年白物家電市場は+1.0%の増加>
仏白物家電メーカーの団体GIFAMは1月20日、2003年の仏白物家電市場は売上高ベースで40億7,000万ユーロ(同+1.0%)であったと発表した。
主要製品について、2003年の台数ベースの市場規模は以下のとおり(かっこ内は対前年比及び世帯普及率)。
- 冷蔵庫・・・・・・・・・・248万5千台(+12%、96%)
- 洗濯機・・・・・・・・・・222万5千台(▲2%、95%)
- 掃除機・・・・・・・・・・296万台(+2%、86%)
- 電子レンジ・・・・・・・182万台(+4%、72%)
<仏:オンラインショッピングの売上高、大幅に増加>
仏遠隔販売企業連盟(FEVAD)は1月20日、2003年クリスマス期(11〜12月)のインターネットを通じたオンライン販売売上高は前年同期比で67%増加し、7億ユーロ以上であったと発表した。また、2003年通年ベースでは69%の増加であったと推計している。調査対象のサイト数は6,000以上で、その2003年売上高は39億ユーロと見られるとしている。
V.政策動向
<フィンランド:携帯電話の電磁波曝露値は基準以下>
フィンランド放射線原子力安全局(STUK)は1月21日、市販の携帯電話12機種のSAR(比吸収率、任意の10g当たりの組織に6分間に吸収される電波エネルギー量)を測定し、フィンランド当局の定める制限値(2W/kg)を超えていないことが確認されたと発表した。STUKでは、SARが2W/kgを下回っていれば、電波による人体組織の大きな発熱は起こらず、また健康に対する悪影響も認められないとしている。
12機種のSARは欧州規格(EN 50361)に定められた計測方法により測定され、その結果は0.45〜1.12W/kgであった。多くの機種のSAR測定結果は、メーカーが公表しているSARに近いものであったが、中にはメーカー公表値の1.5倍のものもあった。
STUKでは2004年内にさらに約20機種の測定を行う予定である。
©JEITA,2004
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