
【 2005年7月号 】
■ はじめに
欧州委員会は6月1日、「i2010:欧州情報社会2010」と題するイニシアチブを採択した。EUの情報社会政策は2005年末までを対象としたeEurope2005行動計画の下で進められてきたが、今後はi2010に引き継がれることとなる。
欧州委員会の情報社会・メディア担当であるレディング委員は、i2010発表に際し、以下のようにコメントしている。
「長い間専門家は通信ネットワーク、メディアコンテンツ、デバイスのデジタルコンバージェンスについて話していた。今や、我々はデジタルコンバージェンスが実際に起こっているのを見ている。VoIP、Web TV、オンラインミュージック、携帯電話上の映画、これらは全て現実のものである。この前途有望なセクターへの投資を拡大するため、市場志向で、柔軟で、将来性のある首尾一貫した規制の枠組みを提供しなければならない。そして、ナノエレクトロニクスといった情報通信技術の鍵に、研究開発支出を集中しなければならない。」
i2010は、欧州情報社会・メディア政策の重点分野として、以下の3つを掲げている。
- 単一欧州情報空間
- イノベーションと研究投資
- 参画、よりよい公共サービスと生活の質
以下、この3分野について、i2010が示す目標と政策を見ていく。
■ 単一欧州情報空間
単一欧州情報空間という言葉の意味がいまひとつ分かりづらいのであるが、デジタルコンバージェンスにより対応して、手始めに以下の4つの点に取り組まなければならないとしている。
- 速度:高精細ビデオのようなリッチコンテンツを配信するため、ブロードバンドをより高速にする
- リッチコンテンツ:新しいサービスやオンラインコンテンツを促進するため、法的・経済的な確実性を増大させる
- 相互運用性:インタラクディブなデバイス・プラットフォームと、可搬性あるサービスの促進
- セキュリティ:投資家及び消費者の信頼を高めるため、詐欺、有害コンテンツ、技術的障害に対してインターネットをより安全にする
そして、具体的な目標として以下を掲げている。
「安価でセキュアな広帯域通信、リッチで多様なデジタルコンテンツとデジタルサービスを提供する、単一欧州情報空間」
政策は以下のとおりである。
- 効率的な周波数管理計画の策定(2005年)を含めた、電気通信規制枠組みの見直し(2006年)
- 以下により、情報社会とメディアサービスのための首尾一貫した域内市場枠組みを創出
- 越境テレビサービス指令の改定のための欧州委員会提案(2005年)に始まる、AVサービスの法的枠組みの現代化
- 情報社会とメディアサービスに影響するアキ・コミュノテール(EUの法令等の総称)の分析と、必要な変更の適用(2007年)
- 情報社会とメディアサービスを管轄する現行及び新しいアキ・コミュノテールの早急かつ効率的なインプリメントの促進
- 欧州コンテンツの創造と流通の継続的支援
- セキュアな欧州情報社会のための計画の策定とインプリメント(2006年)
- 特にDRMをはじめとする相互運用性に係る計画の同定と促進(2006/2007年)
■ イノベーションと研究投資
欧州は世界の情報通信産業の売上の約1/3を占めており、年率5%で成長している。インドや中国といった成長市場では、年率2桁の成長となっている。イノベーションと研究への投資は情報通信セクターにとって雇用を生み出し続け、短期的にも長期的にも成長を続けるために重大な要素である。しかしながら、欧州での情報通信への投資は深刻な状況にあるとしている。
図 情報通信研究への投資(2002年)
| |
EU15 |
米国 |
日本 |
| 民間部門(億ユーロ) |
230 |
830 |
400 |
| 公共部門(億ユーロ) |
80 |
200 |
110 |
| 人口(百万人) |
383 |
296 |
127 |
| 人口当たり投資(ユーロ) |
80 |
350 |
400 |
| R&D全体に占めるICT比率 |
18% |
34% |
35% |
(出所)i2010、欧州委員会
この背景の下、以下の目標を掲げている。
「欧州をリードする競争相手とのギャップを縮めることにより、情報通信に係る研究とイノベーションを世界レベルのパフォーマンスとする」
政策は以下のとおりである。
- 2010年までに欧州連合のICT研究支出を80%増大させることを提案するとともに、加盟国にも同様の措置を求める
- 第7次フレームワーク計画の柱として、ICT研究戦略に重点を置く
- 技術的解決策及び組織的解決策の両者を必要とするボトルネックを解消するため、研究及び応用のイニシアチブを開始する(2006年)
- 民間におけるICT研究及びイノベーションへの投資を促進するための補足的な措置を策定する(2006年)
- 団結のための欧州戦略ガイドライン(2007〜2013年)の中で、万人のための情報社会に関する提案を行う
- 中小企業に視点を置き、ICTの利用に関する技術的、組織的、法的障害を除去することを目指したe-businessの政策を策定する
- 企業におけるイノベーションや新しいスキルの必要性への対応を促進するため、新しい労働形態を支援する手法を開発する
■ 参加、よりよい公共サービスと生活の質
ICTは生活の質を向上させることに大きく貢献しうるものであるとし、以下の目標を掲げている。
「情報社会は、参画を支え、良質な公共サービスを提供し、生活の質を増進する。」
政策は以下のとおりである。
- アクセシビリティとブロードバンドカバレッジに関する政策ガイドラインを発行する(2005年)
- e参画に関する欧州イニシアチブを提案する(2008年)
- 電子政府と、電子化された公共サービスの戦略的方向性に関する行動計画を採択する(2006年)
- 公共サービスを電子化するための技術的、法的、組織的解決策を実地レベルで試験するためのプロジェクトを開始する(2007年)
- 初期段階として3つの「生活の質」に係るフラッグシップ・イニシアチブを立ち上げる(2007年)
■ 結論
イニシアチブは、結論で以下のように述べている。
欧州連合は成長と雇用のためのパートナーシップに重きを置くことによりリスボン戦略を再活性化した。i2010は、欧州における知識集約型製品とサービスに対する投資・イノベーションの誘致に貢献するだろう。
欧州連合及び加盟国以外の関係者は、イノベーティブな知識集約型社会を支援するために、オープンで建設的な対話に参加すべきである。特に産業界は、デジタル社会を発展させる上で決定的なボトルネックが存在する分野において建設的な取組みができるよう、ICTにおける研究及び技術への投資を増やすべきである。
i2010により、欧州委員会は新たな集約された情報社会政策へのアプローチを開始した。リスボン戦略の再スタートという新たなガバナンス・サイクルと一体となって、i2010は持続可能な成長と雇用というリスボン戦略の最重要目標に貢献するであろう。
(最後に)
今夏に帰国の運びとなり、小生のパリ駐在員報告も今回が最後となりました。3年間に渡り、小生の駐在員報告をご覧いただき、ありがとうございました。
© JEITA,2005
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