パリ駐在員報告


2004年(平成16年)報告書

「欧州におけるIT活用に関する調査研究報告書」


pdf Download【PDF・約1.40MB】



【 要約 】

 欧州のIT政策の基本目標は、欧州連合の企業・政府・市民が、世界的な知識情報立脚型経済の形成に中心的役割で参画できる環境を作り上げることにある。これは、2000年3月にリスボンで開催された欧州連合サミットにおいて、欧州連合の社会経済政策の第一目標として掲げられ、同時に、2010年までに世界最大の知識立脚型経済の実現を目指した総合戦略(通称「リスボン戦略」)の一環として、より明確な位置付けが行われた。3本の柱からなるこの総合戦略における第一の柱は、「よりよい情報社会と研究開発に関する政策、競争力とイノベーションを促進する構造改革、及び域内市場統合を通じ、知識立脚型の経済社会への移行を準備する」ことである。つまり、情報社会政策はそのまま知識立脚型の経済社会への移行を準備するものとして位置付けられている。このことは、コック前オランダ首相が中心にまとめ、2004年11月に発表されたリスボン戦略の進捗に関する中間評価報告書の中でも確認された。同報告書は、現状はリスボン戦略の目標達成には程遠いという厳しい評価を下した。

 欧州連合のIT政策の最大の特徴は、それが情報社会政策と呼ばれるように、情報技術を通じた幅広い経済社会の変革を目指すことにある。これは技術としてのITの影響力が広範かつ深甚であることにもよるが、欧州連合の場合は、域内統合を基礎としたEUの理念そのものとも関係している。また、域内統合政策との関係は、現在の欧州委員会における情報社会政策の実施体制にも反映されている。

 本調査では、欧州連合が推進する以下のIT政策・技術開発政策について、その概要と特徴を調査し、分析した。

1.欧州連合のIT政策の概要
 プロディ委員長率いる欧州委員会の任期が2004年秋に満了となり、バローゾ委員長率いる新体制が発足したが、これまでのところ、情報社会政策が大きく変わったとは言い難い。しかし、情報社会を担当していたリーカネン委員の後を引き継いだレディング委員は、情報社会の他にメディアを担当している。今後、ビジネスの他にもコンテンツ関係や社会文化的なサービス分野への配慮が大きくなる可能性がある。
 法制面では、2003年10月が国内法への移行期限であったテレコム・パッケージについて、2004年12月時点で依然として5か国が移行を終えていない。施策面では、インターネットの安全のための組織、欧州ネットワーク情報安全エージェンシー(ENISA)が2004年3月に設置されたほか、「より安全なインターネット計画」の第2期計画(2005〜2008年)が、4500万ユーロの予算を付して、2004年12月に認められた。

2.eEurope計画の進捗状況
 欧州委員会は2004年2月に、eEurope2005行動計画の中間総括を発表した。中間総括は、同行動計画はeEuropeの目的及び新規加盟国における情報社会への挑戦という2つの観点からは適切なものであったとしながらも、進捗状況についての評価は行っておらず、実施方法と活動自身に関する修正を準備するものとなっている。この中間総括を受けて、欧州委員会は2004年5月に、eEurope2005行動計画の更新を発表した。更新計画における重要テーマは、以前のものと実質的には変わっていない。

3.技術開発政策
 欧州連合の産業技術研究開発政策の中心をなすフレームワーク計画について、現行の第6次計画(2003〜2006年)の後継となる第7次計画(2007年〜)に向けた準備作業が本格化した。欧州委員会は2004年6月に、将来の欧州連合の研究支援政策のガイドライン「科学と技術、欧州の未来の鍵」を発表すると同時に、第7次計画の優先テーマの採択に関して意見を募るための手続きを開始した。欧州委員会は2005年初めにも第7次計画の骨格を提案する予定である。


[Back] [Home]