2006年(平成18年)報告書
「欧州におけるIT活用に関する調査研究 調査報告書」
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【 要約 】
EUは現在、2010年までに世界でもっとも活発な知識立脚型経済社会となることを経済社会上の最大の目標にしている。2000年3月、リスボンEUサミットでメンバー国に承認されたこの戦略は、リスボン戦略と略称される。戦略の柱は、「よりよい情報社会と研究開発に関する政策、競争力とイノベーションを促進する構造改革、域内市場統合の完成を通じ、知識立脚型の経済社会への移行を準備すること」とされる。それに並行して、高福祉型の欧州社会の長所を現代的なかたちに更新しながら維持することと、経済成長が持続可能であることが目指されている。つまり知識立脚型の経済社会を実現する手段は、「情報社会化と研究開発」、「競争とイノベーションのための構造改革」、「域内市場統合の完成」という3つである。このうち「競争とイノベーションのための構造改革」と「域内市場統合の完成」は、EUの政策においてはほぼ不可分である。このように情報社会化の支えとなるITが、その研究開発においても、その利用拡大のための政策措置においても、非常に重視されている。これを反映してEUのIT政策の基本目標は、EUの企業・政府・市民が、世界レベルで進行中の知識情報立脚型経済の形成に、主導的な役割をになうかたちで参画できることの確保とされている。
リスボン戦略は2004年、2010年への中間評価として、その進捗を評価された。この評価により、現状ではリスボン戦略の達成は不可能とされ、戦略自体の目標は据え置かれたが、その達成にはより分かりやすい目標が必要とした。こうして特に研究開発努力(域内の研究開発支出をGDP比で3%に引き上げる)、経済成長率、雇用創設などで、目にみえる効果が必要とされた。この評価作業を受けてリスボン戦略は見直され、EUのIT政策を総合的にまとめたeEuropeの2005行動計画も更新され、i2010として2005年7月に発表された。i2010はリスボン戦略の見直しを反映して、情報通信技術分野の競争力強化による経済成長と雇用創造という、経済・社会政策的な側面を打ち出している。しかし、見直しが行われたとはいえ、リスボン戦略におけるIT政策の重要性は変わっていない。
このようなEUの社会経済政策の状況を踏まえ、本調査ではEUが進めているIT政策、技術開発政策について、その概要の調査、分析を行った。
1.eEurope計画及びi2010の推進
eEurope計画はリスボン戦略の柱のひとつとして、EUの情報社会化のために重点政策を特定し、その達成のためのアクションと達成評価のための数量目標とをセットにした行動計画として立案実行されてきた。これまで第1期計画eEurope2002、拡大EUにおける情報社会化のためのeEurope+の後、2005年末までに第2期計画eEurope2005が行われた。後続計画として、2005年6月に発表された「成長と雇用のための欧州情報社会イニシアティブ:i2010」が開始されている。i2010イニシアティブは、@欧州単一情報社会、AICTにおけるイノベーションと研究開発投資、BみんなのICT社会、公共サービスの向上、生活の質の3つの分野で展開される。
i2010を実効的なものとするため、2006年3月にi2010ハイレベルグループの設置し、ICT政策の戦力的課題、i2010の実効性の評価、i2010の実施に関するモニタリング並びに行動措置の改善に関するアドバイス等を行う。
2.第7次フレームワーク計画
EUの技術開発政策の中心であるフレームワーク計画が、2007年から第7次計画として更新された。新計画はこれまでよりいっそう戦略性を強め、新しい要素を幾つか盛り込んでおり、その分メンバー国からの合意取り付けにも時間を要し、計画の最終決定は2006年冬にまでずれ込んだ。計画は立ち上がったばかりであり、計画に盛り込まれた重大な要素のすべてが実施を待つばかりという状態ではなく、適用のための決定を今後に待つものもある。この第7次フレームワーク計画の立ち上がりに関係して、ユーレカ計画におけるICT関連のクラスター・プロジェクトの実施運営にも大きな変化が現れつつある。
3.ユーレカ計画
EUの技術開発政策のもう一つの柱であるユーレカ計画は、企業が提案する欧州レベルの共同研究開発に当該のユーレカ・メンバー国政府が助成することを基本的なメカニズムにした、官民共同出資による欧州共同研究開発のためのスキームである。計画の下で実施されているプロジェクトは、クラスターと呼ばれ実質的には特定技術に関する複数年プログラムであるものと、個別プログラムと呼ばれる一般的な共同研究開発プロジェクトの2種類がある。このうちよく知られているのはクラスター・プロジェクトで、情報技術分野で3本、通信分野で1本、エネルギー分野で1本、バイオ分野で1本が進行中である。
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