JEITA講座
『IT最前線』
『IT最前線』報告書
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 『形あるものが自分の手によって生まれる喜び』,『苦労して作り上げたシステムが人の役に立つ楽しみ』は,我々日本人の働く原動力として明治以来機能してきた。この気持ちを現代の日本人,特に若者は失ってしまったのだろうか?『決してそうではない。若い人にその喜び,楽しみを直接伝えれば,もの作りの原点・力をきっと回復・増幅することができる』というのが我々の出発点であった。
 人材育成アクションプランWG(以下,人材育成AP-WG)は,日本の技術力を人づくりの面から底上げするという目的で当協会に設置された人材育成委員会(委員長・富士通・青江秀史氏)の答申『もの作りの楽しさを企業から大学に発信せよ』を受けて,具体的なJEITA講座『IT最前線』をプロモートするために生まれたワーキンググループである。電機・情報分野9社の代表委員が知恵を出し合って,最前線にふさわしいカリキュラムと各社の一線級の講師陣を揃え,更にこの企画に賛同いただいた東京大学,早稲田大学,東京工業大学の教授陣のご協力を得て,2002年4月より1年間にわたり,企業の息吹を大学に吹き込む努力を続けてきた。
 本報告はその活動を総括し,今後のWG活動に資するとともに,全国の大学にわれわれの活動を知っていただくために編纂したものである。
 JEITA講座を実施するに当たり,特に留意したことは『技術そのものを伝えるのではなく,技術の面白さを伝える』ということである。各社からの講師にはそのために多大なご苦労をおかけした。幸い,いずれの講師も第一線で活躍中の技術者たちであり,またそれゆえに若者の技術離れを人一倍感じておられた方々であったので,忙しい仕事を抱えながらも,すばらしい教材を作っていただいた。
 その甲斐あって,前期に実施した早稲田大学では学生・院生を含め600名近くの受講者を得(履修生は430名程度に限定),技術の楽しさと苦しさを学んでもらうことができた。同時期に開講した東京大学では,大学院生200名超に対する講義を行った。こちらはかなり深い議論が講師と院生の間で取り交わされ,もの作りの奥深さが次代を背負う若者に伝わった。後期に開講した東京工業大学では,複数の企業技術者によるケーススタディゼミ形式という我が国ではおそらく初めてのユニークな講座が9つ実施され,最後は受講生がケースに基づくビジネス提案を,秘密保持契約にサインした企業講師・関係者を前にして発表するという形で締めくくることになった。受講生にも講師にも,「大変ではあったがやりがいがそれにも増して大きかった」という感想を持ってもらえた。
 すべての講義は,講師と受講生の試行錯誤であり,すべてが成功であったのでは勿論ない。しかし双方の汗の分だけ,いやそれ以上に双方の心に残されたものはあったと信じる。本当?と思われる方は,ぜひ報告(アンケート)を一読いただきたい。
 この試みは3年間,いろいろな形で続けようということで,WGの合意が取れている。2003年度は東京以外の大学や衛星放送による講義等を試みる。また多くの他企業にも参加していただけるように働きかける予定である。
 われわれの願いはこのような講義が,日本全国であたりまえのように行われるようになることにある。そして日本の若者が技術の面白さを理解して,活き活きとした視点を技術の領域に持ち込んでくれるようになることにある。そのために『失敗を恐れず,機会損失を恐れよ』をモットーに前進を続ける覚悟でいる。そして,これらの試みがいつの日か実を結んでくれることを信じている。
 最後にJEITA講座の大学側調整役をご担当いただいた東京大学・坂井修一教授,早稲田大学・笠原博徳教授,東京工業大学・森欣司教授をはじめとする大学関係者の方々,人材育成AP-WG初代主査の三菱電機・河内浩明氏を始めとする歴代の委員の方々および講師の方々,初代事務局の伊藤拡史氏等々,JEITA講座実現にご尽力いただいたたくさんの方々に,心より御礼を申し上げる。

平成15年5月
社団法人電子情報技術産業協会
人材育成アクションプラン検討WG
主査 増位 庄一


付録:教材
【早稲田大学】
【東京工業大学】
【東京大学】



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