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ソフトウェア技術者の育成に関する調査報告と提言 (平成18年度ソフトウェアに関する調査報告書 概要T) |
1.問題意識 | ||||
ソフトウェア事業戦略専門委員会では、我が国のソフトウェア産業が抱える諸課題を、 国際競争力がない ⇒ 優秀な人材が来ない ⇒ 競争力を持つ製品・技術が生まれない、 などの"負のスパイラル"として表現した。 日本のソフトウェア産業は、一見、複数の課題を同時に抱えているようにも見えるが、 実は、一つの問題が他の問題を生み出し、それらが相互に関連して、 現在の状況が作り出されていると捉えることもできる。 | 2.調査検討方法 | こうした負のスパイラルからの脱却のために、当委員会では、 ソフトウェア産業の競争力を左右するきわめて重要な要素である"人材の育成・確保"という観点から、 産業が抱える課題を整理し、課題を取り巻く現状やその背景を把握・分析することとし、 具体的には以下の調査・検討活動を実施した。 | ||
(1) | ソフトウェア産業が抱える課題や、産業の現状を正しく捉えるために、 既存調査等を含む文献調査・Web調査等を実施 | |||
(2) | 国内ソフトウェア産業に対するイメージ調査として、 全国の理系大学生500名を対象に、Webアンケートを実施 | |||
(3) | 大学におけるソフトウェア人材の育成に関する現状と課題の把握を目的として、 既存調査等を含む文献調査・Web調査等を実施施 | |||
(4) | 日米比較を目的として、米国におけるソフトウェア産業のイメージ・人気や、 国内のソフトウェア技術者に関する処遇の現状について調査を実施 | |||
(5) | ソフトウェア産業に対する問題意識やソフトウェア技術者の採用の現状、
採用に関する課題等について把握するために、企業や大学に対するヒアリング調査を実施 | 3.課題分析と提言 | 上述の調査結果を基に、以下の通り論点と課題を整理し、分析を行った。 | |
(1) | 日本のソフトウェア産業の存在感や就業先としての魅力の低下が問題視され、 電機・電子・情報系の学科に対する人気低下の傾向も、ここ数年、顕著に表れている | |||
(2) | 学生が専攻分野や就業先を選択する際に、産業に対するイメージが、 大きな影響力を持っている | |||
(3) | 良い人材を獲得するためには、ソフトウェア産業が人気の高い、 魅力的な産業でなければならない | |||
(4) | 学生は、ソフトウェア産業に対して、「先進的」「実力主義」 「若いうちから活躍できる」「今後の社会を支える」などのプラスのイメージも強く持っており、この産業が、必ずしも学生にマイナスイメージのみで捉えられているわけではない | |||
(5) | その反面、「労働時間が長い」「一生働けない」「仕事の内容が分かりにくい」 「米国に主導権を握られている」などのマイナスのイメージも浸透している | |||
(6) | これらのマイナスのイメージが、ソフトウェア産業が本来持つ、 もしくは過去に有していたプラスのイメージを弱めている | |||
以上のような議論を踏まえ、ソフトウェア産業が抱える課題の解決策として、 まずは、「マイナス要素の払拭」という側面から、以下の4点を提言する。 | ||||
● | 「一生続けられない」イメージの払拭 → 生涯にわたるキャリアパスの明示 | |||
● | 「労働環境が良くない」イメージの払拭 → 労働環境の改善 | |||
● | 仕事(誇り・やりがい)の不透明さの払拭 → "やりがい"と"誇り"のPR | |||
● | 自己批判の抑制 → 未来志向への転換 | |||
さらに、「プラス要素の促進・創出」という側面から、以下の5点を提言する。 | ||||
○ | 「個人の実力評価」の促進 → 能力に応じた処遇・評価制度の導入 | |||
○ | ソフトウェア事業のプレゼンス向上 → ソフトウェア事業の重要性PR | |||
○ | 人材採用先の拡大 → グローバルな人材活用 | |||
○ | 産業の"夢"の創出 → 未来への可能性を予感させる技術の研究・開発
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○ | 自信と誇りの復活 → 人材の可能性への信頼 | |||
報告書の本編においては、各々の提言について詳述するとともに、企業・業界・政府が、 それぞれの立場で取り組むべき施策として、考え得る具体策を例示している。 |