平成19年度ソフトウェアに関する調査報告書T 概要



平成19年度 ソフトウェアに関する調査報告書T(IS-08-情シ-1)概要
ソフトウェア技術者の育成に関する調査報告書と提言

第一部 『海外ソフトウェア技術者の採用と育成に関する調査報告』
 昨年度、ソフトウェア事業戦略専門委員会では、わが国のソフトウェア産業が抱える諸課題を、 「国際競争力がない ⇒ 優秀な人材が来ない ⇒ 競争力を持つ製品・技術が生まれない」などの 負のスパイラルが存在するというモデルによって整理した。
 さらに、この負の連鎖から脱却するためには、「人材の育成・確保」が重要課題の一つであるという認識をふまえて調査を行い、 わが国のソフトウェア産業が抱える課題と、その解決の方向性を示したが、 今年度は、海外ソフトウェア産業における技術者の採用と育成に関する調査を行い、 それをわが国の実態と比較した上で、わが国のソフトウェア産業が、より速やかに解決すべき課題を明らかにすることとした。
 調査は、主に米国を対象とし、大学教育に関する調査、インターンシップ・新卒採用に関する調査、 ソフトウェア技術者のキャリアアップに関する調査、人事・雇用制度に関する調査を行い、 米国のソフトウェア企業の強さを支える要因として、 @大学教育の段階における高度な実践的教育と専攻分野重視の採用Aエンジニア個人に対する業績評価に応じたメリハリのある処遇  B独自の競争力を持つ製品開発への集中 C国際分業による高付加価値事業への先鋭化などが強みとなっていることがわかった。
 これらの米国の強みから、日米の文化、雇用慣習、採用・育成制度の違いを踏まえた上で、 日本のソフトウェア産業が学ぶべき点として下記の7つの項目を挙げ、日本のソフトウェア技術者育成に関する提言としてまとめた。
 1)産学連携の促進
 2)インターンシップ・Co-op教育の促進
 3)自由に仕事が出来る環境の整備
 4)個人が評価される仕組みの導入
 5)長期的なキャリアアップのサポート
 6)新しいアイディアが実現出来る環境作り
 7)ソフトウェアエンジニアの人気と魅力向上のための事業戦略立案

第二部 『スキル基準、キャリアパスの制定、プロフェッショナル認定制度に関する提言』
 ソフトウェア技術者の「人材の育成・確保」という観点での有効な施策として、3つの具体策について、第二部〜第四部にて提言を行う。 第二部では、企業内に、スキル基準、キャリアパス、プロフェッショナル認定制度を整備することが有効であると推測されるが、 本委員会メンバへのアンケート調査をもとに、これらの制度がソフトウェア技術者の地位向上、モチベーションアップ、 優秀な人材採用のために役立っていること、また運用上どのような課題があり、その課題を分析することにより、 更に有効に活用するための施策について提言を行った。
 今回の分析から、スキルレベルの客観的な基準として、 公的な資格、企業が認定する資格などを活用することが有効であることがわかり、 キャリアパス・職種のレベルに対応する推奨資格や試験のマッピングガイドを本委員会にて作成した。

第三部 『企業と大学の連携に関する提言』
 「企業と大学との連携」という視点では、「インターンシップ活動」に焦点をあて、国内での状況を企業側と大学側からアンケート調査し、 第一部で示した海外における状況を把握し、これを踏まえて「国内でのインターンシップのあり方」について提言を行う。
 また、企業が求める人材を大学が育成出来ていないという指摘があるが、企業が求める人材像、 期待するスキルを明確にしていないという問題もある。今回は、アンケートを実施し、 ETSS(Embedded Technology Skill Standards)で定義されたスキル項目をベースに、企業が大学に期待するスキルを提示した。

第四部 『ソフトウェアの魅力PRの必要性について』
 ここ数年、大学の専攻の選択において、いわゆる「理科離れ」や「工学離れ」の影響等もあってか、 かつて突出した人気を誇った「電気・電子・情報系」の分野に関する人気は、以前と比較すると低下傾向にある。
 また、ソフトウェア関連業界への就職人気についても同様に低下傾向が見られる。
 そのような人気低下の背景には、IT・ソフトウェアが日常生活に浸透し一般化していく中、 同分野の「先進性」や「夢」、「凄さ」などが見えにくくなっていることなどがあるのではないかと考えられる。
 業界イメージの悪化に関しても、一部には労働環境の厳しい部分があるものの、 そのようなマイナスの側面だけではないソフトウェア関連業界およびそこで働く技術者たちの本当の姿が知られていないことが、 真の問題なのではないかと考えられる。
 ソフトウェアの持つ本当の魅力や、ソフトウェアエンジニアの本当の仕事を正しく伝えれば、 ソフトウェア関連業界へのイメージも高まり、志向する人も増えるのではないかと期待される。

第五部 『日本のソフトウェア産業の未来に向けて』
 現在の高度情報社会は、ソフトウェア技術によって支えられているといっても過言ではない。
特に近年は、企業情報システムだけでなく、家電やAV機器等日常生活で利用する電子機器・製品においても、 ソフトウェアの重要性が飛躍的に高まっている。
 一方で、日本のソフトウェア産業に対しては様々な課題が指摘されているが、 この産業が魅力をもって発展するためには、より構造的、戦略的な課題にも目を向けて、 産業界自体が変革していこうという意思が必要となる。
 また、ソフトウェア技術は、様々な産業・分野で使われており、 分野ごとにモデル化を行い、それぞれの産業の今までの経緯、ならびに、抱えている構造的課題を分析した上で、 日本のソフトウェア産業の未来像を検討すべきと考えられる。


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