鉛フリーはんだの接合信頼性への取り組み

(社)電子情報技術産業協会 実装技術標準化専門委員会


 JEITAにおける鉛フリーはんだに対する取り組みについて、誤解なく正しく普及活動を牽引することを目的とし、電子工業界を始めとする鉛フリーはんだの採用を必要とする全ての業界、企業、個人を対象に、鉛フリーはんだ接合信頼性の検討経緯をここに公表する。

 鉛フリーはんだ規格化のための研究開発(NEDO委託事業)

 1999年1月から2000年3月にかけて“鉛フリーはんだ規格化のための研究開発”が行われた。特にフローはんだ付け評価では、いずれの鉛フリーはんだ材料も通常のはんだ付け品質は従来のSn-Pb共晶はんだと同等の結果を示している。また、クリープ強度(125℃に加熱し、1kgの重りによりジャンパー線に引っ張り荷重を継続的にかける試験)、リード引き抜き強度(−40℃/30分〜常温〜125℃/30分の温度サイクルを規定数かけた後に引き抜き強度を測定する試験)においては、Sn-3.5Ag-0.7Cu及びSn-0.7Cu-0.3Agの鉛フリーはんだは従来のSn-Pb共晶はんだと同等以上の性能を示している。勿論リフトオフや部品耐熱の改善、設計による温度差の対策等が条件とされているが、平成12年7月に(社)日本電子工業振興協会発行の“鉛フリーはんだに関する調査研究成果報告書”により、全て詳細が報告されている。報告書の最後には、セットメーカにおける導入検討状況が記載されているが、各社設計や装置の改善により導入を前提とした活動が行われており、その後はんだ組成による接合信頼性の不具合発生についての報告はない。

図 1 . JEIDA/JEITA鉛フリーはんだ活動の経緯

  高密度実装における新接合技術の信頼性評価方法の標準化(基準認証研究開発事業)

 この活動は、2001年4月から2004年3月の3ヵ年に亘り、鉛フリーはんだを用いた実装において問題となり得る現象及びその評価方法についての研究開発を行い、その成果として電子デバイスの鉛フリーはんだを用いた実装信頼性評価方法の標準化を図ることを目的に行われ、更に1年間で国際標準化のためにフォローアップ活動を行った。内容的には大きく“電子デバイスのはんだ付け性試験方法の標準化”“電子デバイスの接合耐久性試験方法の標準化”“電子デバイスのウィスカ試験方法の標準化”“電子デバイスのマイグレーション試験方法の標準化”の4項目であるが、“電子デバイスの接合耐久性試験方法の標準化”においては、リード引き剥がし強度試験やせん断強度試験等6つの試験方法の標準化に取り組んでいる。
 図2は、引き剥がし強度試験の標準化を検討する際に、はんだ組成毎に比較したデータであるが、左端のSn-3Ag-0.5Cuの引き剥がし強度は、右から2番目のSn-Pb共晶の引き剥がし強度と比較し、全ての引っ張り速度においても優れていることが報告されている。
 図3は、コネクタにおける横押し強度とトルク強度をSn-3Ag-0.5CuとSn-Pb共晶の両組成で比較したデータであるが、いずれの強度もSn-3Ag-0.5Cuの方がSn-Pb共晶よりも優れていることが報告されている。
 以上のように、高密度実装における新接合技術の信頼性評価方法の標準化活動においても、Sn-3Ag-0.5Cu組成がSn-Pb共晶と比較し、接合信頼性が同等かそれ以上の結果であり、決して劣る報告はない。

図 2 . 引き剥がし強度試験結果

図 3 . 横押し強度とトルク強度比較

3  低温鉛フリーはんだ実装のための基盤技術確立と標準化(基準認証研究開発事業)

   この活動は2004年4月から2006年3月の3ヵ年に亘り、科学的見地に基づいた低温鉛フリーはんだ実装におけるリフローを中心とするプロセス条件の開発、高温高湿や腐食試験などの各種信頼性評価法の確立、及びボイドや微小接続部の力学的特性評価技術の開発の3つの観点で技術開発に取り組み、更に1年間で国際標準化のためにフォローアップ活動を行った。内容的には大きく“低温鉛フリーはんだ特有の接合信頼性試験方法”“低温鉛フリーはんだに対応した電子デバイスのはんだ付け試験方法”“低温鉛フリーはんだ実装標準プロセス”“はんだ接合部の信頼性に対するボイド許容基準”“はんだ微細接合部の力学的信頼性評価方法”の5項目である。
 図4は、85℃85%の高温高湿環境下におけるQFPのはんだ接合強度の推移を(左側:プリフラックス・未洗浄、右側:Ni/Auフラッシュ・未洗浄)表したものである。リード母材やめっきの違いに対し、各はんだ組成毎に比較しているが、Sn-3Ag-0.5Cuの方がSn-Pb共晶よりも優れているか若しくは同等のレベルである。
 図5は、85℃85%環境下における1,000hr後の1608Rのはんだ接合強度を比較したものである。(左側:プリフラックス、右側:Ni/Auフラッシュ)いずれの条件においてもSn-3Ag-0.5Cuの方がSn-Pb共晶よりも優れていることが報告されている。

図 4 . 85℃85%の高温高湿環境下におけるQFPのはんだ接合強度

図 5 . 85℃85%環境下におけるはんだ接合強度の比較

4  第2世代フロー用はんだ標準化検討

 「第2世代フロー用はんだ標準化プロジェクト」は、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)の実装技術標準化委員会下に設置された専門PGで、2005年6月のプロジェクト準備会を経て、2005年7月より、2007年2月まで活動された。本プロジェクトでは、最終商品の信頼性要求の確認ができて、かつ製造条件の追い込みによって実用化できる安価な合金の見極めを目的とし、広くはんだメーカとはんだユーザ各社に参加を呼びかけて、評価試験計画を立案実行し、実データの議論をもってフロー用はんだ合金の標準化を進めた。
 図6は、本プロジェクトで評価した静特性試験項目を示しており、フローはんだ付けに必要な特性を代替特性で評価できることを目指して計画した。表1は、各組成毎に−40℃(30分)⇔90℃(30分)を1サイクルとするヒートサイクルを行い、故障率1%時のヒートサイクル数を示している。また図7は、それをグラフにしたものである。これをみると、はんだ組成No.1のSn-3Ag-0.5Cuとはんだ組成No.5のSn-1Ag-0.7Cuは400サイクル以上であるが、はんだ組成No.3のSn-0.3Ag-0.7Cuやはんだ組成No.11のSn-0.7Cu-0.05Niは320サイクルと故障率が1%に達するヒートサイクル数が少なくなることがわかった。
 クリープ試験による破断寿命をはんだ組成毎にまとめたものが表2及び図8である。
 1%のBiを添加することで破断寿命を格段に長くすることができるが、Sn-3Ag-0.5Cuに勝る組成はないことがわかった。

図 6 . はんだ合金評価項目

表 1 . 故障率1%時のヒートサイクル数

 

図 7 . 故障率1%時のヒートサイクル数

図 8 . クリープ試験による破断寿命

表 2 . クリープ試験による破断寿命

 以上のように、JEITAでは永年の国家予算による公的な委託事業やJEITAの委員会活動を通し、さまざまな角度から鉛フリーはんだの接合信頼性を検証してきた。(1)〜(3)の国家プロジェクトについては各年度の事業報告書に、また(4)の「第2世代フロー用はんだ標準化プロジェクト」については、JEITAの技術レポートである“JEITA ETR-7023”で詳細が報告されている。基礎実験ではあるが、Sn-3Ag-0.5Cuについての接合信頼性の確認を中心とした採用の妥当性の検証や、採用にあたって必要な、設計改善、部品改善、プロセス改善などを同時に進めることで、世界的に鉛フリーはんだ技術の牽引的役割を日本が担っている。
 それぞれの企業で実際に導入するはんだ組成については、商品カテゴリーや仕向地が異なることにより使用環境も異なり、使用環境から要求される接合信頼性を確保する必要がある。このため各企業では、自社の商品に対し十分な信頼性の確保が可能か否かの検証を行い、採用するはんだ組成を決めているのが現状である。
 このような、業界全体の取り組みにより、鉛フリーはんだの導入からはや8年近く経過したが、Sn-3Ag-0.5Cuを代表とする鉛フリーはんだでの接合信頼性においては、大きな不具合の報告はない。

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図 1 . JEIDA/JEITA鉛フリーはんだ活動の経緯
図 2 . 引き剥がし強度試験結果
図 3 . 横押し強度とトルク強度比較
図 4 . 85℃85%の高温高湿環境下におけるQFPのはんだ接合強度
図 5 . 85℃85%環境下におけるはんだ接合強度の比較
図 6 . はんだ合金評価項目
表 1 . 故障率1%時のヒートサイクル数
図 7 . 故障率1%時のヒートサイクル数
図 8 . クリープ試験による破断寿命
表 2 . クリープ試験による破断寿命