「医療機器用電子部品の信頼性ガイド」概要

「医療機器用電子部品の信頼性ガイド」概要

電子部品部会傘下の技術・標準戦略委員会 部品安全専門委員会内に設置している信頼性技術強化WGでは、電子部品の信頼性維持・強化に関する、複数の活動を進めています（図1参照）。
本資料では、FMEAガイドと同様、“高信頼性が必要となる市場へのアプローチ”をテーマとして進めてきた、医療機器用電子部品の信頼性に関する活動の成果物について紹介いたします。

図1：電子部品部会・信頼性技術強化WGの活動

　ご存じの通り、高齢化社会の到来や健康に対する意識の向上により、医療機器、ヘルスケア機器産業は大きく成長することが期待されています。それらは高度に電子化された機器としても発展していることから、電子部品メーカとしても、これらの機器に先進的かつ高信頼性を有する電子部品を安定供給していくことが社会的使命であると考えています。
　この認識に基づき、信頼性技術強化WGでは、医療機器とそこに搭載される電子部品の使われ方への理解を深めたうえで、医療機器用電子部品の信頼性を維持・向上させるための注意点と試験法に関する検討を進め、「医療機器用電子部品の信頼性ガイド（以降、信頼性ガイド）」の取りまとめを行いました。
信頼性ガイド本体では、医療機器自体についても取り上げていますが（本資料最後尾の刊行物案内・目次を参照）、ここでは電子部品が主体的に扱われているトピックスを紹介していきます。

電子部品に対する医療機器メーカの期待

信頼性ガイドを現実に沿った内容とするために、文献調査を行うとともに、医療機器メーカとの意見交換を実施し、そこで得られた知見を各所に反映するようにしました。ガイド本体の4章では、医療機器メーカの電子部品メーカに対する要求項目と関心事項をキーワードごとに整理し、電子部品供給側の対応像等について具体的な説明を行っています。
　ここでは、スペースの都合上、これらと製品の各フェーズの関連性を図2に示すに止めますが、いずれのキーワードも医療機器に電子部品が使われる上で重要なものとなりますので、それぞれの項目について理解を深め対処していく必要があります。
　医療機器産業はニッチ市場の集合体であり、医薬品医療機器等法における一般的名称4000種類以上、品目数30万品目以上となっています。ニーズが非常に多岐にわたりますので、医療機器メーカのニーズをきちんと把握し、自社の強みとうまく結びつけることが重要となります。ニーズを得るには、医療機器メーカから直接得る以外に、マッチングサイトや支援機関に行く、ニーズデータベースの活用、各地支援機関のイベント参加、学会展示などを利用することも有効となります。

図2：製品の各フェーズとキーワード（医療機器メーカの要求項目と関心事項）との関連性

医療機器の非臨床試験における電子部品の着目ポイント

医療の世界では、実際に人を対象に行う試験を“臨床試験”、人を対象としないで有効性・安全性を確認することを“非臨床試験”と表現しています。“医療機器の非臨床試験”は、医療関係以外の機器メーカ・部品メーカにおいて、試験室又は実験室内で行う安全性試験或いは信頼性試験に相当するものです。
　医療機器での非臨床試験の目的は、機器の有効性・機能及び精度維持の担保に加えて、機器を使用する操作者及び患者に対する安全性の担保に重きを置いています。信頼性ガイドでは、医療機器の安全性確認を目的とした非臨床試験の例を9件取り上げ、通則であるJIS T 0601-1（医用電気機器−第1部：基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項）をふまえて、各事例の説明をするとともに、それぞれについて「電子部品の着目ポイント」として詳細な解説を加えています。

おわりに

この信頼性ガイドの作成にあたっては、ヘルスケアインダストリ事業委員会／ME標準化・技術専門委員会の各位をはじめ、多くの方々から、ご指導、ご協力をいただきました。改めて感謝と御礼を申し上げる次第です。
【刊行物のご案内】
「医療機器用電子部品の信頼性ガイド」
体　裁： A4版　33頁（2016年11月発行）
頒　布： 当会の電子部品部会サイト中、「電子部品の信頼性技術」のページにて無償で提供しています。
目　次：
1. 序文
2. 医療機器とは
（医療機器の定義／医療機器 分類）
3. 医療機器用電子部品の信頼性向上のためのアプローチ
（医療機器を取り巻く環境／医療機器の使われ 方）
4. 医療機器メーカの期待
（高信頼性部品／電子部品の耐用年数／故障率／電子部品の供給リスク／電子部品の変更管理／ユーザビリティ／製品設計における信頼性のリスクマネジメント／出荷検査と測定データの信頼性／信頼性保証／リコール／必要な国際規格の取得と部品認証の取得／電子部品の模倣品対策）
5. 医療機器の信頼性保証
5.1医療機器の安全規格
5.2電子部品の信頼性試験
5.3医療機器の非臨床試験
（機械的安全性／電気的安全性／電磁両立性／放射線に関する安全性／過度の温度に対する安全性／火事や爆発に対する安全／防滴（防水）性および防塵（耐塵）性／消毒、滅菌に対する耐性／生物学的安全性／その他の非臨床試験／関連規格一覧）
6. おわりに
7. 引用、参考文献