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情産-17-情端-2 プリンターに関する調査報告書

■ エグゼクティブサマリ ■
1.プリンター市場動向

1.1 2016年の市場実績

 2016年のプリンター市場は,ワールドワイドトータルで1億179万台となった(対前年比96%)。方式別では,ドットインパクトプリンターは前年比プラス,インクジェットプリンター,電子写真プリンターは前年比マイナスとなった。
 2016年のドットインパクトプリンター分野の市場実績は308万台となった。(対前年比101%)
中国以外の地域では他へのテクノロジーへのシフトを主因とする減少傾向は継続しているものの,最大市場の中国は需要増加により,ドットインパクトプリンター市場全体としては対前年比プラスとなった。
 インクジェットプリンター分野の市場実績は6,520万台となった。(対前年比96%)
先進国地域,新興国地域ともに前年を下回る傾向が続いており,先進国地域は4,010万台(対前年比96%),新興国地域は2,510万台(対前年比96%)となった。
 電子写真プリンター分野の市場実績は3,352万台(対前年比95%)となった。
 中国市場では前年比プラスとなり,他の新興国地域でも減少率は鈍化したが,先進国地域を含む全体では,前年に引き続きマイナス成長となった。

1.2 2019年までの見通し

 2019年の全世界のドットインパクトプリンター市場は台数ベースで284万台と見通した。(2016−19年 年平均成長率 −2.7%)
 2019年の全世界のインクジェットプリンター市場は6,413万台(年平均成長率 −0.6%)と見通した。SFPの世界市場は669万台(同 −4.8%),一方MFPの世界市場は5,744万台(同0.0%)の規模になると見通した。
 2019年の全世界の電子写真プリンター市場は,3,196万台(年平均成長率 −1.6%)と見通した。
モノクロ/カラー別では,モノクロが2,466万台(年平均成長率 −2.7%),カラーが730万台(同+2.6%)となると見通した。カラー化率は徐々に上昇し2019年に23%になると考えた。

 上記の各カテゴリーの合計として,2019年のプリンター市場は,ワールドワイドトータルで9,893万台(年平均成長率 −0.9%)になると予測した。


2.プリンター技術動向調査

 電子写真プリンターの2016年の発売数(回答機種数)は,プリント・オン・デマンド(以降PODと略す)用途のプリンター※を含まない数として,SFP(Single Function Printer)が11社48機種,MFP(Multi Function Printer)が10社113機種である。一方PODは3社11機種(SFP:7機種,MFP:4機種)である。
※プリント・オン・デマンド(Print On Demand)用途のプリンターとは,「プロダクション市場向け」「オンデマンド・パブリッシングシステム」「企業内プリンティングから商業印刷まで対応」等を銘打ったプリンターを意味する。
 SFPは2006年の76機種から減少傾向が続いていたが2012年から30〜40機種の発売数で横這い傾向,2015年2016年は微増傾向である。(ただし,2006〜2009年まではPODを含んだ数値であるため,数字の見かけよりは減少幅は小さい。)MFPは113機種(POD除く)と2015年に引き続き100機種を超えており,2013年が2006年以降最大の発売数(123機種)であった反動で2014年が60機種と半減した後,持ち直した形になっている。MFPは年ごとの増減が大きいため一概には言えないが2015年2016年と増加傾向である。
 電子写真プリンターでは,2014年から集計を始めたクラウド印刷対応比率が2014年の45%から2015年は62%,2016年は65%に増加しており新たな業務用途への対応が進んでいると考えられる。
 インクジェットプリンターの2016年の国内発売数は,SFPが5社9機種,MFPが4社26機種,LFP(Large Format Printer)が7社43機種である。
 SFPは電子写真プリンターに同じく2006年の32機種から2008年と続いていた減少傾向が2014年から横這い傾向へ転じたように見える。MFPは2010年をボトムに増加に転じているように見えたが,前年47機種と増加した影響か2015年は減少し,2016年は横這い傾向に見える。
 LFPは,2011年からの3年間はおよそ20機種の発売だったが,2014年34機種,2015年は39機種と増加後,2016年は6機種減少し33機種と2014年同等となっている。
 インクジェットプリンターでは,2014年から集計を始めたプリンターの訴求用途から,これまで主体だった家庭用に加えて事務用の発売が定着しており,事務用,高画質写真用,A3サイズ対応機,表裏同時読み込み可能等,使用用途に応じて特徴を訴求した製品が継続して発売されている。また事務用は家庭用に比べて印刷速度が高速側に分布している傾向がある。
 感熱・熱転写プリンターの国内発売数は,4社14機種である。2007年をピークに減少傾向が見られ,2013年には発売数が1機種にまで減少,2014年に8機種と増加し2015年3機種と再度減少,2016年は14機種と増加している。これは発売機種数の50%以上を占める業務用ラベルプリンターが2014年4機種,2015年3機種,2016年8機種と発売があったのに加え,家庭用プリンターの発売タイミングが隔年周期になっているためである。
 ドットインパクトプリンターの国内発売数はシリアルタイプが1社1機種である。ラインタイプは2012年以降発売がない状況が続いている。全体の発売数は少ないものの,複写伝票の作成や埃,塵などの多い作業環境での印刷需要など,古くからの業務形態を継続している市場で一定のポジションを堅持していると見ている。







プリンターの呼称について(解説)

本年度の報告書では,プリンターの呼称について下記のように用語の統一を図った。
プリンターの用語表記については,「JEITA IS-15-情端-7プリンターカタログ用語集」(http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/page/detail.cgi?n=873&ca=1)を参照されたい。

・電子写真プリンター
定義:感光体面に静電潜像を発生させ,トナー等により現像後,普通紙等に転写,定着させる方式を用いたプリンター

(注釈1)
「ページプリンター」を電子写真プリンターとして使用する場合があったが,「ページプリンター」は「シリアルプリンター」や「ラインプリンター」と並んで印刷動作を示す用語に位置づけられているため,印刷方式としては「電子写真プリンター」の用語を使用することとした。

・インクジェットプリンター
定義:インク粒子や小滴を用紙に噴射させて文字や画像等を形成する方式を用いたプリンター

・ドットインパクトプリンター
定義:文字や画像を複数の点(ドット)で表現し,それぞれの点に対応する印刷ヘッド内の金属製のワイヤーを,インクリボンの上から媒体に対して打撃することで印字する方式を用いたプリンター

・感熱・熱転写プリンター
定義:記録用紙の感熱媒体に熱を与えることにより化学反応を与えて可視像を形成する方式,または記録用紙に接触させたインクリボンあるいはインクシートに熱を与えることによりインクを用紙に転写する方式を用いたプリンター

(注釈2)
「プリンター」は,出力機器という意味と,複合機あるいは「MFP(Multi Function Printer)」に対する単機能機の意味で使用される場合がある。本書では,特に断りがない場合は「出力機器」という意味で使用する。特に,単機能機に限定する場合は,「単機能機」あるいは「SFP(Single Function Printer)」と呼称する。



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