
【 2003年8月号 】
〜 仏における廃電気電子機器リサイクル等政策の動向 〜
JEITAパリ駐在 福 田 賢 一
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T.仏における廃電子電子機器リサイクル等政策の動向
1.はじめに
欧州議会は2002年12月18日、廃電気電子機器(WEEE)指令及び電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限(RoHS)指令を採択した。
WEEE指令はほとんどの電気電子機器(EEE)を対象としており、EEEの生産者は、WEEEのリサイクル処理システムの構築、再生率及び再使用・リサイクル率の目標達成、回収拠点以降の処理等費用の負担等の義務を負うこととなる。RoHS指令はWEEE指令が対象としているEEEの多くを対象としており、2006年7月1日以降にEU域内で上市される対象製品は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニール)、PBDE (ポリ臭化ジフェニルエーテル)の6物質を含んではならないこととなる。
さて、EU加盟各国は、これらの指令を2004年8月13日までにそれぞれの国内法に適用しなければならないこととされており、各国で国内法制化の作業が進められている。
今般、仏政府における国内法制化の状況を伺うべく、在欧日系電気電子企業14社の御参加を賜り、仏経済・財政・産業省の産業・通信技術・郵政総局(以下、仏産業省)と意見交換を行う機会を設けた。当日(7月8日)はファルク・ピエロタン同総局次長をはじめとする総局の4名と活発な議論が行われた。
当日は仏産業省に事前に送付した質問をベースにQ&A形式で議論が行われたが、その概要について仏産業省からの回答を中心に簡単に御紹介する。
なお、仏政府では本件について現在検討途上の段階であり、以下に記した仏産業省の回答については、公式見解ではないことを予めお断りしておく。
2.スケジュール・検討体制
WEEE及びRoHS指令の仏国内法への適用に関するスケジュール及び検討体制等について、仏産業省から以下のとおり説明があった。
・WEEE及びRoHS指令の仏国内法への適用は、両指令に示されているとおり2004年7月までに行われ、発効は2005年1月1日。
・各省の参加による作業グループと、企業や消費者、環境団体等も含めた大きな作業グループが本年12月まで検討を行う。本年12月に政令の素案を提示する予定。
・仏国内法への適用に際して、以下の4つの優先事項がある。
- EU指令を尊重すること
- 経済的に効力を持つこと
- グローバルコストを考えた上で、環境を守るものであること
- 貿易を阻害するものとならないこと
・作業グループの検討の中で、7つの主要課題に気がついた。
- 装備品(アクセサリー)について、どこまでEU指令を適用するか
- 消費者からの費用回収をどうするか
- 費用をどのように分担していくか、そのための組織をどうするか
- ビジブル・フィーの扱い
- EEEを上市する製造業者及び販売業者の保証金
- 市場を監督する組織をどのように作り、どう監視するか
- 有害物質をどのように制限していくか
・作業が未だ終わっていないため、仏政府としての公式見解は存在しない。
・作業グループからの情報については、FIEF(電気電子製品関係業界団体)か、FICIM(輸入業者団体)に聞いて欲しい
3.生産者の定義
WEEE及びRoHS指令では、廃棄物の処理について、生産者責任の原則をとっている。このため、生産者が誰となるのかは、大きな問題を生じうる。生産者の定義の扱いについて、仏産業省から以下のとおり説明があった。
・生産者とは、市場に製品を投入する者という意味であり、製造業者、輸入業者、販売業者のいずれであってもよい。
・仏産業省が「生産者リスト」を作ることとなっている。
・EU加盟他国の企業Aから、在仏流通業者Bを通じて販売する場合、A社が自身を生産者リストに登録するか、B社を登録させるかは、自分で決めればよい。仮にA社を登録した場合、フランス法が他国に存在するA社に適用されることになると思う。
・仏政府としてやりたいと思っていることは、誰かが販売を行う際に、それを製造した者が生産者リストに登録されていることを証明する義務を負わせることである。もし製造した者が証明しないのであれば、販売を行う者が自身を製造者リストに登録するのがシンプルな方法だと思う。
4.保証金
WEEE指令では、製品上市の際、生産者は保証金を提供しなければならないこととしている。企業側として具体的な金額や提供方法が問題となるが、仏産業省から以下のとおり説明があった。
・保証金の問題を細かく分析したところ、企業に大きなコストを伴うこと、また場合によっては二重に払わなければならないことが分かってきた。
・仏政府は、以下の4つのガイドラインを基に、保証金の制限や上限額を検討してきた。また、共同保証金システムや他の方策も検討している。
- 複数の対策を用意すること
- 企業にとって大きなコストのかからないものとすること
- 競争関係をゆがめず、中小企業でも保証金システムに参加できるものとすること
- 誰も回収責任を持たない孤児廃棄品の増大を防ぐこと
・保証金の金額については、以下の3つの不確定要素が関連している。
- 製品の平均寿命
- 回収する製品がどのくらいの割合になるか
- 将来、どれくらいの処理コストになるか。将来的には新しい処理技術ができるかもしれない
・仏政府としても、保証金に上限を設けなければならない。時間的にも無制限、金額的にも無制限という保証金は、合理的ではない。
・保証金から逃げようとする企業への対策としては、監督組織を非常に大きくかつ複雑なものとすることが一番の対策だが、経済的に高くつかないものにしたいと思う。
5.ヒストリカル・ウェイスト
WEEE指令では、2005年8月13日以前に上市された製品のWEEE(ヒストリカル・ウェイスト)については、処理費用は生産者が、例えば市場シェア等により、比例負担することとされている。この市場シェアをどのように計るか、また既に市場から撤退した企業の製品に係る費用負担をどうするかといった点が問題であるが、仏産業省から以下のとおり説明があった。
・今回定める政令の中では言及されず、その下のレベルで処理されることになるであろう。
・ヒストリカル・ウェイストに対してビジブル・フィーをとる予定についてはあるともないとも言えないが、強いて言えば、恐らくそうするのではないかと思う。
・ビジブル・フィーの導入方法には、いろいろなやり方があると思う。
・ヒストリカル・ウェイストの処理費用に係る引当金のインパクトについては、仏政府としてはこれが小さくなるような方向を考えている。
6.対象製品
WEEE及びRoHS指令が対象とする製品については、それぞれの付属文書に記述がある。付属品や消耗品がどこまで含まれるのか、またWEEE指令とRoHS指令の間で対象製品が同一になるか否かが問題であるが、仏産業省から以下のとおり説明があった。
・電池のように、消耗品には既に環境法規制に含まれているものがある。電池は両指令とは関係していない。
・しかし、政令ではWEEE指令と電池の間に関連を付けるつもりである。つまり、WEEEに含まれている電池は、製品から取り出して、電池としての回収経路に持っていかなければならないということである。
・他の消耗品については、検討中。例えばCD-ROMは政令の対象にならないと思う。
・対象製品リストに入るか否かのクライテリアを、ヨーロッパで統一していきたいと思う。
・非常にたくさんの関連製品があり、技術進歩によりさらに増えることも予想されることから、プラグマティックなアプローチが必要であると思っている。
7.回収・再生業者
・非常に大きな問題であるが、未だあまり議論されていない。
・回収能力、処理能力が数年で10倍くらい必要になることが確実に見込まれているので、組織だった、かつ競争的な(回収・再生業者の)オファーが必要である。
・環境ダンピングが起こらないよう、環境に優しいプロセスであることの評価等、処理に関する最低限のルールを決めようとしている。
・処理業者の数が少ないことはリスクだが、処理業者を公的企業として作るつもりはない。民間の中小企業がこの分野に参入するよう、地方での取り組みを進めているところ。
8.その他
・RoHS指令は2006年7月1日以降に上市したものを対象としているが、この「上市」がEU内への持ち込みを意味するのか、販売を意味するのかについては、仏政府内ではそこまでの議論は進んでいない。
・RoHS指令のインプリメントに際し、同指令から派生する新たな技術的適応性をサプライヤレベルで見いだすべく、仏企業に対してアクションを起こしている。ただし、外国企業に対して同様のアクションを起こす予定はない。
・仏産業省は、両指令の仏国内法への適用に際して、プラグマティックであろうとしている。指令の条文で書かれてしまったことはプラグマティックにしようがないが、それ以外については可能な限りの努力をする。
U.政策動向
<EU:スパムメール防止への取り組みを強化>
欧州委員会は7月15日、スパムメール防止への取り組みを強化することを明らかにした。EUでは2002年7月31日に「電気通信分野における個人情報の処理とプライバシー保護に関する指令」(2002/58/EC)が発効しており、同指令第13条では、ダイレクト・マーケッティングの電子メールの送信に際しては受信者の事前の同意が必要(オプト・イン)とされている。また、加盟各国は同指令を2003年10月31日までに国内法に適用することとされている。欧州委員会の発表によれば、EU企業はスパムメールのために25億ユーロ(2002年)の生産性を失っている。
欧州委員会のリーカネン委員(企業・情報社会担当)は、スパムメールへの取り組みに関して、まず同指令の国内法への適用が重要だとした上で、2番目にソフトウェア会社及びISPが重要な重要な役割を果たすと述べた。3番目に消費者の自覚と教育、とりわけスパムメールに関する基本的なルールや、スパムメールを防ぐ方法、スパムメールを受け取った際にどこに通報すればよいかといった点が重要であるとした。4番目に国際的な協調が重要であるとし、OECDに対して2004年1月にブラッセルでスパムメールに関するセミナーを開催するよう提案したほか、2003年12月10〜12日にジュネーブで開催される世界情報社会サミットにおいてスパムメール防止に関する国際的な協調が行動計画に盛り込まれるように求めていると述べた。
同委員は、また、「スパムメールは悩ましい数に達しており、最近の伸びは更に悩ましい状況であることは言うまでもない」とした上で、スパムメールに関する以下の数字を挙げている。
・欧州委員会では、外部から来るメールの30%がスパムであると見られる
・この夏が終わるまでに、電子メール全体の50%以上がスパムとなると見込まれる
・スパムメールの大半は商品広告であり、約24%がアダルト・コンテンツ、約6%が詐欺的なものである
<EU:仏ワナドゥーの支配的地位の濫用に罰金>
欧州委員会は7月16日、仏ワナドゥー(仏フランス・テレコムのISP子会社)が仏ADSL市場における支配的地位を濫用したとして、1035万ユーロの罰金を課すと発表した。発表によると、ワナドゥーは1999年末から2002年10月まで平均費用を下回る価格でサービスを提供しており、かつ同社は損失の程度や法的リスクについてもよく認識していたとされる。また、2001年1月から2002年9月までの間に、仏ADSL市場は5倍以上に成長したが、この期間に同社はシェアを46%から72%に拡大し、競合相手で10%以上のシェアを有する企業はなくなったとしている。
なお、欧州委員会は2002年10月のフランス・テレコムによる回線卸売り価格の30%以上の引き下げ以降、フランスのブロードバンドアクセス市場はより急速に、かつ多くの競合事業者の参画によりバランスの取れた形で成長している、としている。
<EU:家庭用冷蔵庫のエネルギーラベルに新分類>
欧州委員会は7月3日、家庭用冷蔵庫のエネルギーラベルに新たにA++及びA+を追加すると発表した。これはEU指令94/2/ECを改正する2003/66/EC指令によるもので、7月29日に同指令が発効、遅くとも2004年7月1日までには新しいラベルが導入される。EU指令94/2/ECに基づくエネルギーラベルは、消費者がエネルギー効率の高い冷蔵庫を選定できるようにするため、表示が義務づけられているものである。
2003/66/EC指令では、冷蔵庫の型式等から決まる標準年間電力消費量と比較して30%未満の消費電力のものをA++、30%以上42%未満のものをA+として新たに設け、42%以上のものについては、従前の分類A(最も効率が高い)からG(最も効率が低い)までを引き続き用いることとしている。2000年に販売された冷蔵庫の約2割、市場によっては5割以上が分類Aに属するものであることから、さらに効率の高い分類を設けたものである。
<仏:電子情報産業に関する政策提言>
電子情報産業関係の主要6団体は7月11日、フォンテーヌ仏産業担当相に白書の形で10項目の同産業振興のための政策を提言した。
この提言10項目を簡潔にまとめると、以下のとおりとなる。
1. 政府主導による大型プロジェクトの再開
2. 高速ネットワーク及び無線ネットワークの重点的な整備
3. 新たな市場の担い手の育成
4. 社会的制約の緩和
5. ハイテク分野における規制の適正化
6. 契約関係の浄化と公正な競争
7. 危機を切り抜けるための企業への支援
8. 研究開発及びイノベーションに対する半額補助による支援
9. 中小企業の競争力支援のための基金の設立
10. 研究開発優遇税制の拡大
© JEITA,2003
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