<組込み系ソフトウェア・ワークショップ2009:資料室>
組込み系ソフトウェア開発をスピードアップ!
〜 組込み系ソフトウェア開発のキモは何か? 組込み開発に影響を及ぼす多様な特性とは? 〜
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■ 講演の概要 ■
会場の様子
講演
- 開会の挨拶: ソフトウェア事業基盤専門委員会の活動について、
ワークショップ2009の狙いと課題認識
- 基調講演: 組込みソフトウェアと国際競争力
- 事例講演1: 三菱電機における組込みソフトウェア開発力強化活動
- 事例講演2: 日立グループにおける組込みソフトウェア開発力強化の取組み
- 事例講演3: パナソニックにおける組込みソフトウェア開発力強化の取組み
1. 開会の挨拶:ソフトウェア事業基盤専門委員会の活動について、
ワークショップ2009の狙いと課題認識
【ソフトウェア事業基盤専門委員会の活動について】
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ソフトウェア事業基盤専門員会の活動の出発点となった課題認識は、『擦り合わせなるものが日本の開発力の強みと言われているが、急激に増大している開発規模や短納期化の中で、「擦り合わせ」が強みになっているのであろうか。何を強くすれば、我が国の組込み系ソフトウェア開発力の国際競争力を強化し、真に我が国の強みの源泉たりうるものにできるのであろうか』であった。
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この課題認識に基づいた2005年度からの活動を総括して、2008年度までの活動内容の要点と今年度(2009年度)の活動の狙いについて、同専門委員会委員長 五味氏より紹介された。
JEITAソフトウェア事業基盤専門委員会委員長 五味氏
【ワークショップ2009の狙いと課題認識】
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2008年度のアンケート調査では、要求定義・アーキテクチャ設計に関して、一見当たり前のことができていないという結果が得られた。
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しかしながらこれは、組込み系ソフトウェアに特有の特性/課題があり、既存手法の適応等が難しいためではないのか、という課題認識から、本ワークショップにおいて、開発者視点に立脚して、組込み系ソフトウェア開発の多様な特性/課題を、参加された方々との議論の中から明らかにしたい旨が同専門委員会副委員長 春名氏より紹介された。
JEITAソフトウェア事業基盤専門委員会副委員長 春名氏
基調講演:組込みソフトウェアと国際競争力
- 組込みソフトウェアは日本産業の国際競争力を下支えしている基盤産業であるにもかかわらず、過度の複雑性、アーキテクチャの欠如、非効率的な分業構造、クリティカルな技術の欠如、産業政策不在という問題を抱えている。兵庫県立大学 立本准教授による基調講演では、マクロ的・多角的な視点からこれらの問題について問題提起・考察が行われた。
- 組み込みソフトウェア(産業)の国際競争力の視点:組込みソフトウェア自身の開発生産性/品質、組込みソフトウェアを含んだ完成品や部品/装置の国際競争力、組込みソフトウェアを支える開発環境、ツール産業
- 競争力の多層的理解:「まず現場」か「まず利益発」か
- 表の競争力と深層の競争力
- 品質と擦り合わせ
- 今後さらに必要だと思われる分野:
- プロダクト・イノベーション
- 複雑性に対処するためのコア技術モデル開発、形式手法
- 標準化(二重投資の防止)
- 支援産業の問題:ツール・チェーン
兵庫県立大学 立本准教授
【Q&A】
- 国内に強力なツールチェーンが育ってこなかった理由は?
- ここで言っているツールチェーンは、バリデーションや形式手法といったものも含んでいる。理由としては、個人としての意見だが、欧州と比べて圧倒的に日本政府由来の目的基礎研究の額が圧倒的に少な過ぎる。そういうところは簡単にビジネスにならないので、基礎研究に対する支援をしてこなかった。それから、モデルベース開発のようにスタンダードを作っていかないと市場ができない、そういうことにも取組んでこなかった。つまり、簡単に収益化できない技術に対して政府が支援してこなかったことと、マーケットを作るという面に関しても積極的に行動してこなかった。この二つが関係していると考えている。
- ツールだけでなくソフトウェアエンジニアリングの方法論は大半が輸入であって、且つ、殆ど取り込めないで来ているところもあると思うが?
- その通りで、ちゃんと取り込めるエンジニアを育ててこなかったのも問題である。
3. 三菱電機における組込みソフトウェア開発力強化活動
- 三菱電機における組込みソフトウェア開発力強化のための全社的な取り組みについて、三菱電機 (株) 真野氏より紹介された。
- 個々の開発プロジェクトから全社までの各階層で改善を継続するために、PDCAサイクルを回し、プロセス・技術・人の各視点に対して施策を実施している状況が具体例と共に紹介された。
- プロセスについては、同社の各製作所レベルの経営層を巻き込んでの統合プロジェクト管理や改善推進サイクル、技術については、設計フロントローディング化と組込みソフトウェア向けの開発ガイド、人については各層技術者に対する技術者育成の取り組みが紹介された。
三菱電機(株) 真野氏
【Q&A】
- 各現場は製品や工程のやり方に違いがあって独自の文化を持っていると思うが、そうした現場に対して活動を推進する共通部隊は推進する上でどのくらい権限があるのか、どのくらい現場を指導できるのか、また現場は推進活動に対してどのくらい変更することができるのか?
- 製品に対する責任は現場が持っているので、権限は全て現場にある。改善部門は指導する立場で、半年に1回くらい監査し改善の指摘をする。それに対して指摘に対して実行するかどうかは現場が決定する。
- 全体の開発に対して、改善活動はどのくらい浸透しているか?
- 格差があるのは事実、マネージャーレベルの意識によって異なる。ボディブローのようにじわじわと改善を進めている。
- 2ndフェーズのDRによる不具合の早期検出のなかでのリスク管理の強化は具体的に何をやっているのか?
- 相手がやることは自分には関係ないと思っていてリスクとしていない。相手があるということはリスクがあるということ。リスクには色んなリスクがあって、その事例を紹介して進めている。組み合わせ試験でインターフェースがとれずに不具合が多く出ていたが、リスク管理の強化で減ってきている。
- 社外も含めた横断的な活動はしているのか? 活動を始める前はどうだったのか?
- 改善活動をしているところもあればしていないところもあって、ソフトの子会社では進んでいるところもあった。
4. 日立グループにおける組込みソフトウェア開発力強化の取組み
- 複雑化、大規模化、短納期化の課題に対応する日立グループ全体での取り組みである組込みシステム改革活動について、(株)日立製作所 鍵政氏より紹介された。
- 同活動では、開発プロセス(P)、アーキテクチャ(A)、設計・開発技法(D)、技術者教育(E)の4つの視点で組込みソフトウェア開発力を強化していることが示され、このうち前三者を順に適用することによって改革を進める改革スパイラルモデルが紹介された。
- 具体的な施策として、モデルベース開発と、リファクタリング、ソフトウェアプロダクトラインによる再利用型開発についての適用事例が紹介された。
(株)日立製作所 鍵政氏
【Q&A】
- 従来のやり方で開発していた人が、モデルベース開発に移行する際には、どう対応したのか? 工夫したことは何か?
- 全てをモデルベース開発しているわけではない。制御アルゴリズム設計者とプログラマの構成が変わるわけで、時間軸の中で変えていくことは課題であり、苦労していることである。移行には時間をかけており、先行する事業部のノウハウを横展開し、次は速く進められるようにしている。
5. パナソニックにおける組込みソフトウェア開発力強化の取組み
- この10年間での市場環境の変化から、デジタル家電における組込みソフトウェアを取り巻く環境が激変し、ソフトウェア開発の重要性が増大していることを述べられた後、同社がプロセス、開発手法、教育の3点からソフトウェア開発力強化に取組んでいることがパナソニック(株)中川氏より紹介された。
- 各活動の具体例として、CMM/CMMI等を用いたプロセス改善、統合プラットフォームを用いた開発、同社の技術研修について紹介された。
- これからの技術者に求められる視点として、利益・コスト、時間、品質、環境の4点が示され、これらの視点から技術と経営を結ぶことが技術リーダに求められることが語られた。
パナソニック(株) 中川氏
【Q&A】
- コードを自動生成することはある程度ツールを信頼していることと考える。実際、不具合が出たときに自動コード生成によってでてしまう不具合もあると思うが、その辺りをどう見つけるのか?工夫されていることは?
- システムテスト/結合テストは従来通りのプロセスで不具合検出している。実際の商品開発に適用する前に、テスト的にツールを使ってみて問題のない信頼性にあることを確認している。アセンブラからCコンパイラに移ったときに、いろいろ問題がでて信用できないという状況にあったが、今は問題がなくなっている。自動コード生成ツールも今のCコンパイラのレベルには達していて、使いにくいところはあるが、基幹的なところについては問題ないと考えている。
©JEITA,2009
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