トップページ >
IS-11-情端-5 端末装置に関する調査報告書
■ エグゼクティブサマリ ■第1部 金融端末装置に関する調査報告
金融端末装置の出荷統計は,1978年度より実施され,本年度で33年目になる。自主統計参加11社により,基幹系業務端末7機種について四半期毎に出荷台数,出荷額の統計を採り,これらの統計データと市場動向を基にした製品分野毎の分析や今後の出荷見通し調査を行っている。
ソフトウェア,ソリューションサービスの比重の高まりから,1997年度より,自主統計参加9社により専用端末系/業務系計8種のソフトウェアについて半期毎の出荷額の統計を採り,上記装置出荷統計と併せて製品分野毎の分析や今後の出荷見通し調査を実施するなど充実を図ってきた。
尚,3月に発生した東日本大震災では,被災地域にある金融機関も多数被害を受けており,ベンダ各社も優先的に被災地対応の生産を進めているが,サプライチェーンの分断により生産供給能力に影響がでていることより,2011年度以降の出荷への影響は懸念されるが,現時点での変動予測は困難な状況にある。本報告は,東日本大震災発生以前に取り纏めを行っており,影響については考慮されていない。
2010年度の金融端末装置全体の出荷実績は,国内では,ハードウェア,ソフトウェア合計で約1,352億円(前年度比140%)であった。そのうちハードウェアが台数で約57,000台(前年度比152%),金額で約1,006億円(前年度比148%),ソフトウェアが約346億円(前年度比121%)であった。
ハードウェアについては, 2008年度にリーマンショックの影響を受け減少に転じ,2009年度はさらに大幅な減少となったが,2010年度は出荷台数・金額とも大幅増となった。出荷金額の規模は,まだリーマンショック以前の状態にまでは回復していないが,今後増加傾向を維持し回復していくものと見ている。
ソフトウェアについても,ハードウェアに同調して堅調に伸びを見せている。全体に占めるソフトウェア比率は26%であった。
2011年度以降の出荷見通しは,店舗数の増加が見込めず大きな伸びは期待できないが,2010年度の回復基調を維持しつつ,ATM新札対応機のリプレース需要がピークを迎える2013年度まで緩やかに増加するものと予想している。
さらに今回は,近年電子マネーの急激な普及により様々な場面で現金が電子化され,流通する絶対量にも影響を及ぼしている状況を踏まえ,顧客への利便性向上を図るにはATMがどうあるべきかを検討する一助とすべく,ATM使用状況の現状と予測を金融機関にアンケート調査を行った。
今後の課題として,ソフトウェア統計の充実,ソリューションサービス統計の具体化を図り,市場調査カバレッジを拡大することがあげられる。ここ数年,他業界と協業しての製品や店舗展開が進んできたことによって,金融機関の専用端末というよりは,複合化された製品になってきたものもある。
このような製品をどう位置付けて統計に反映させていくかも今後の課題である。
このように多様化するサービス・製品及び社会・経済環境に対して金融端末専門委員会としても柔軟な体制で臨み,他委員会との交流も含め,更なる市場調査の拡充を行う必要が出てくるであろう。
そして,これらの調査の結果が今後の金融端末の方向性を示唆するとともに,金融並びに提携業界の連携を推進する一助となるものと確信する。
第2部 流通POS端末装置に関する調査報告
流通POS端末専門委員会では,流通業界を取巻く経済・社会状況を把握する中,流通POS及び周辺機器の技術動向の調査とともに,店舗におけるPOSの運用やソフトウェア動向,社会システム動向等の調査・研究を行っている。
米国を発端とした世界的な経済危機となる以前から,POSシステムは,ネットワークやサーバなど基幹系と投資タイミングを分散させる傾向が見られ,リプレースサイクルの長期化が顕著になってきている。POSシステム市場そのものが成熟してきていることもあり,運用を継続できないレベルまで老朽化がすすまない限りはリプレースしないといった風潮があることは否めない。
2010年度のPOS端末の国内出荷台数は前年度比80%の11万台,出荷金額は前年度比69%の364億7千万円となり,出荷台数,出荷金額ともに過去10年間で最低の実績となった。この要因としては,過去数年間システム更新検討を先送りしてきたことによる受注減の影響が現在になって現れてきたこと,
また,3月に東北地方で発生した未曾有の大震災により例年行われる年度末の駆け込み需要の減少と,部品調達の悪化により3月に出荷できなかったことなどが考えられる。
出荷台数に占めるPC-POSの割合は1996年度から順調にその構成比を伸ばしてきており,2010年度も全体の9割に近い結果となった。
POS端末の2015年度までの5ヵ年出荷台数見通し調査では,出荷台数はリプレース需要が2012年度から2014年度の間にあるとの見通しを示し,その後は落ち着きを示し微増していく見通しとなっている。
PC-POSのPOS端末に占める割合は2011年度以降も9割を超えて飽和した状態が続くと見通している。また,PC-POSの中で主流となっているWindows搭載POSの割合は,2012年度から94%で横ばいすると見通されている。
2010年度のカード決済端末の国内出荷台数は前年度比108%の10万6千台,出荷金額も前年度比109%の58億円と微増となった。クレジットカードのICカード化に伴い2004年度から増加傾向に入り,2006年度に一挙に加速したリプレース需要が一段落したものと見られる。ただし,携帯型に限っては,出荷台数の前年度比で156%と大幅な伸びとなっており,2008年度に特定の企業において大幅な投資が行われた影響と思われる出荷の反動で2009年は落ち込んだが,DoPaサービス終了を前にその入れ替え需要が伸びた可能性も窺える。2015年度までの5ヵ年出荷見通し調査における平均伸長率は据置型で101%でほぼ横ばい,携帯型では2011年度が109%と増加し2013年度の98%を谷に2015年度には103%と回復すると見通されている。
POS端末装置の2010年度の保守調査結果は,前回調査である2008年度と同様の結果が見られたが,一部に変化の兆しも見ることができる。2008年度では,出張修理方法に関して修理時間の効率向上を目指して「部品交換」から「ユニット交換」へシフトする傾向が見られることを報告したが,今回の調査ではその逆も見て取れる。また,部品/ユニットの交換時期について具体的目安を設ける傾向も表れている。サービスレベルの向上,コスト削減,保守部品ライフサイクルの短期化など,POS端末装置の保守の難しさも浮き彫りになっている。
PC-POSにおけるアプリケーション動向調査は隔年で今年度の調査はないが,POSシステムにおけるアプリケーションソフトウェアの重要性の観点から調査を継続している。
委員会としては,今後も引き続きPOS端末装置だけではなく,POS周辺機器,及びそれらをとりまくアプリケーションや決済等の社会システムなど全てを包含した議論を重ねる中,今後予想される社会システムの電子化やIT技術進展による店舗形態の在り方についても討議を深め,的確な情報発信に努めていく所存である。
流通業界を取巻く環境は依然として厳しい状況ではあるが,本報告書の内容は流通POS開発に関わる委員会内外の方々,および流通業界の方々の参考になるものと確信している。
第3部 ハンディターミナルに関する調査報告
ハンディターミナルは携帯型の特長を活かし,データの発生時点での収集並びに処理ができることから流通,運輸,製造等のあらゆる業種で活用され,業務の省力化・効率化の促進に貢献してきた。
装置の機能に関しては利用者側から各業務に最適な機器の要求があり,装置開発メーカも利用者の要求を満たすべく携帯性を追求する中で耐環境仕様の強化,並びに大画面表示化,メモリ大容量化,無線化等の高機能化,更には低価格化に取り組んでいる。
ハンディターミナルは,流通,運輸,製造等の業種で情報収集・管理等の情報処理を担う装置として活用されており,その適用分野も年々拡大する傾向にある。しかしながら,近年ではスマートフォン,タブレット端末等の参入により携帯端末の応用分野が広がっており,ハンディターミナルの位置付けが曖昧になっているのも事実である。
2010年度(平成22年度)のハンディターミナルの出荷実績は,世界的な経済環境の悪化の影響を受けた一昨年,昨年度と同等のレベルで推移し,2009年度(平成21年度)と比較して,国内では台数で2%減少し,金額でも3%減少した。また,輸出は台数で6%増加したが,金額では4%減少した。
各カテゴリ別にみると,スキャナ一体型では国内出荷が台数で2%減少し,金額で±0%,輸出は台数で10%増加し,金額で3%増加した。
標準型の国内出荷台数は,若干台数が増加した昨年度と比較して,台数で14%減少し,金額で26%減少した。また,輸出では台数で30%減少し,金額で32%減少した。
ノートパッド型の出荷台数は,大きく減少した昨年度と比較して,59%増加し,出荷金額においても55%増加した。
4カ年の出荷見通しでは,2011年3月に東北地方で発生した地震による影響により,2011年度は一時的な落ち込みが考えられているものの,スキャナ一体型の国内は,無線化,二次元シンボル対応といった高付加価値化の進展及び商品のトレーサビリティの向上を目的としたRFIDの普及と共に新たなマーケットが広がる可能性があると見ている。
標準型の国内出荷は,リプレースを主体に2010年以降ゆるやかに減少し,2014年度までは,市場規模3万台程度で推移すると見通した。
ノートパッド型は大手顧客のリプレース時期により出荷台数/金額が大きく変動するため定性的な予測は難しい。
調査活動を通じてわかったハンディターミナルを取り巻く問題点をまとめると下記の通りである。
・2011年度以降,市場は堅調に伸びるが,飛躍的な伸びがない。また,平均出荷単価も長期的にはゆるやかな低下が進む。
・スマートフォンやタブレット端末等の他の携帯型機器との差異が曖昧になってきている。
・各社のハンディターミナルの特性値の測定条件や用語に差異があり,ユーザが一律に比較できない。
以上のような問題点を解決していくため,今後の委員会活動において,下記の点に着眼し,調査・検討活動を実施していく所存である。
・関連分野の専門家によるヒアリングの実施及び他の携帯機器分野との情報交換会を積極的に実施し,市場動向,技術動向を調査することにより,ハンディターミナル業界としてのレベルアップを図る。
・ハンディターミナルの特長や適用事例をまとめることで,他の携帯型機器との差別化を図り,市場啓蒙を推進する。
・ユーザの利便性を考えて,ハンディターミナルの主な用語,測定条件の標準化を推進する。
今後とも本委員会ではハンディターミナルの普及活動を行なうため,調査した内容を委員会の中で検討を行い,各委員,ならびに関連方面への提言を行っていく方針である。
・自主統計を前年に引き続いて行い,データの信頼性向上に努め,本年度および来年度の市場動向について調査する。
・ハンディターミナルの技術動向を調査する。
・カタログ用語集を商品の技術進化,利用者の機種選定ニーズにあわせて改訂を進める。
・出荷数量の停滞,平均出荷単価の低下の原因を分析して,対応策を考察する。
第4部 KIOSK端末装置に関する調査報告
1.調査の概要
本年度は,KIOSK端末専門委員会発足の三年目であり,初年度で確立したKIOSK端末の自主統計調査をベースに業界動向,海外動向などの定性調査を行なった。特に,海外調査については,成長著しい中国のKIOSK展示会にて中国におけるKIOSK動向を調査するとともに,KIOSK端末のグローバルでの概況を把握する試みを実施した。
定義付けされたカテゴリーに沿って業界全体の動向を可視化することを目的に,自主統計調査を基本継続だが,二年目に続き上半期・下半期に分けて統計を実施した。
2 調査の背景
当専門委員会の目的は,KIOSK端末に関与する業界の発展に寄与することにあり,市場実態の把握,標準化の推進,共通的な情報発信や業界課題への対応を目的としている。国内市場における自主統計調査がある程度軌道にのってきたとの認識のもと,昨今のグローバル化の流れに着眼しグローバルでの位置付けに関して把握する試みを開始した。グローバルの中では,特に昨今急速な成長を遂げている中国市場にフォーカスした。市場実態を可視化することを通じて業界の発展に寄与することを目標に,自主統計調査を継続した。継続にあたっては前年度の方式を継承し,上半期,下半期に分けて実施した。
3 調査のまとめと考察
前述の調査目的,方法により実施した調査について下記に概要を述べる。詳細データ及び考察については,本稿の第3章以降で記述することとする。今回3回目の統計調査では,平成22年度の台数・金額を調査対象とし,調査した。調査内容は前年同様スタンドアローンタイプとデスクトップタイプ(机上設置)を分けることを基本とした。
回答いただいた結果を集約すると,平成22年度のKIOSK端末装置全体の出荷実績は,台数が38,544台(対前年度比131%),金額で70.95億円(対前年度比74%)であった。そのうち汎用KIOSK端末は台数で22,453台(対前年度比157%),金額で48.02億円(対前年度比121%),専用KIOSK端末は台数で16,091台(対前年度比106%),金額で22.93億円(対前年度比41%)であった。
台数は,順調に回復の傾向が見られたものの,金額的には厳しい統計結果であったと言える。08年度の金融危機の影響を受けて抑制されたIT投資が戻りつつあるものの低価格帯の伸びが多いものと推察できる。結果的に全体統計として金額面では厳しくなってきている。