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紛争鉱物対応に関する調査結果概要(2017)

2017年12月21日
一般社団法人 電子情報技術産業協会
責任ある鉱物調達検討会

目  的
JEITA「責任ある鉱物調達検討会」メンバー企業の紛争鉱物対応における課題を把握し、今後の取り組みに反映する。
調査期間
2017年8月23日~9月25日
調査対象
JEITA責任ある鉱物調達検討会 メンバー企業 44社(うち34社が回答)
JEITA紛争鉱物調査 説明会参加者 272者が回答(一部項目のみ)

調査結果サマリー

責任ある鉱物調達検討会では、2015年に続き、今年2度目の調査を実施した。また、今回初めてJEITAが毎年開催している紛争鉱物調査説明会の参加者に対して調査を行い業界の状況把握に努めた(一部設問のみ)。本サマリーでは、前回調査からの変化点を中心に報告する。

1.紛争鉱物調査へのサプライチェーン全体の理解度が向上

質問2では顧客企業からの要請内容を質問している。「具体的な期限を指定して製錬所/精製所を100%特定すること」「具体的な期限を指定してCFS認証の製錬所/精製所からすべての物品を調達すること」「コンフリクト・フリーを保証する書面(コンフリクト・フリー条項を含む契約書、宣言書への署名を含む)を提出すること」のポイントが高かったが、前回2015年調査と比較するといずれも10ポイント程度減少傾向にあり、顧客企業から達成困難な要求は総じて減少していることが分かる。質問6の鉱物別データを見ると、「製錬/精錬所を開示しないサプライヤーがある」のポイントが2015年前回調査に比べ減少(59%→46~50%)している。顧客の積極的な関与だけではなく、サプライヤー自身が積極的に紛争鉱物調査に取り組んでいることが読み取れる。

2.紛争鉱物調査の課題

前述のとおり、サプライヤーの協力が増していることが分かったが、同じ質問6で製錬/精錬所を特定することが「可能ではない」と答えた理由として「サプライヤーが全ての製錬/精錬所を特定するのは困難」(26%→91~96%)、「回答の信頼性を検証する手段が限られる」(11%→46%~50%)のポイントは大幅に増加した。
つまり、顧客、サプライヤー双方が積極的に紛争鉱物調査に取り組んでいるにも関わらず、多くの企業は調査方法の難しさ、信頼性、効果に課題を持っていることが分かった。

(1)製錬所特定の困難性

Dodd-Frank法に基づく紛争鉱物調査は今年5年目に入るが、質問5で製錬所を100%特定した割合は、JEITAメンバーが6~12%、説明会参加者が22~28%と非常に少ないことが分かる。
加えて、質問6の今後「紛争鉱物調査によって全ての製錬/精錬所を特定することが可能か」との問いに対し「すでに100%特定した又は可能」と回答した割合はわずか15~22%で、今後とも全ての製錬所を特定することが困難だと考えている企業が多い。

(2)3TGすべてをCFSから調達することの困難性

質問8ですべての物品をCFS(紛争フリーの製錬所)から調達することが「可能ではない」と回答する割合は65%~68%に上る。また、「可能」と回答した割合が前回2015年調査からタンタル、タングステン、金で減少し、特にタンタル24%→13%と金23→12%は減少幅が大きい。企業は、3TGすべてをCFSから調達するのは困難だと考えている。

(3)紛争鉱物調査の限界

質問9を見ると、紛争鉱物調査で武装勢力と関わりをもつ製錬所を特定できた例はゼロだった。質問11では、特定の製錬所の調達回避を判断する根拠を尋ねており、「顧客企業・川下企業による調査情報(83%)」、「NGOやメディアの情報(33%)」という回答が多数を占めた。紛争鉱物調査では紛争との関わりを特定することはできず、調査方法に限界があることを示している。

3.まとめ

米国Dodd-Frank 法に基づき、2013年より世界中の多くの企業が紛争鉱物調査を真摯に実施している。今回の調査でも分かる通り、前回2015年調査から、サプライヤーの協力が増えサプライチェーンの可視化が進んでおり、サプライチェーン全体の意識が向上している良い傾向と言える。

一方で、調査5年目に入った現在も、全ての製錬/精錬所を特定可能と考える企業や、3TG全てをCFSから調達することが可能と考える企業は少ないままである。これは、多くの企業が鉱物調達のサプライチェーンの複雑さをより深く理解したことの現われかもしれない。

人道的見地から、多くの企業が紛争鉱物問題の真の解決を期待している。現在実施されている紛争鉱物調査の課題を踏まえ、ビジネスの実態に沿った、より効果的、効率的な解決方法が模索されるべきである。JEITAとしてもその実現に尽力していく。

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