デバイス・ハードウェアセキュリティ
技術分科会
背景と調査の重要性
Cyber Physical System (CPS) やInternet of Things(IoT)といった新しい情報通信の形態は、新たな価値を創出し、豊かな社会をもたらすことが期待されている。一方で、データ詐称によるアプリケーションの無価値化や工場の重要制御情報の改竄といった、想定される新たな脅威は枚挙にいとまがない。特に、自律制御や自動運転、医療機器、社会インフラなどへのICT応用においては,攻撃に由来する誤動作や停止は、人命・身体・社会システムの深刻な危険にもつながる大きな脅威となる。これまでの情報セキュリティ技術では、主にネットワーク越しの攻撃を対象として、そのための対策技術が開発・実装されてきた
。しかし、こうした新しいICTの利用形態においては、いわゆるサイバーセキュリティに加えて、実世界との接点となるハードウェア・デバイスにおけるセキュリティ(ハードウェアセキュリティ・デバイスセキュリティ)も含めたセキュリティ設計が必要となる。現在、システムの秘匿通信や認証は主に暗号技術によって実現されているが、ハードウェアへの直接的な攻撃はそうした暗号技術をも無効化し得る。ハードウェアへの攻撃は、従来のネットワーク・ソフトウェアセキュリティ技術の想定範囲外のため防ぐことが困難とされている。以上の背景から、近年、こうしたデバイス・ハードウェアも含めた情報セキュリティ技術の重要性が高まっている。
特に,ハードウェアセキュリティ技術は二つに大別される。一つはセキュリティ機能を実現するハードウェア(セキュリティハードウェア)の技術である。これには、暗号技術等のセキュリティ機能を適切に実現するための設計・検証・評価・テスト、さらに実際のアプリケーションに特化した実装技術が含まれる。もう一つは攻撃に対してハードウェアの耐性を高める技術である。これには、ハードウェアもしくはハードウェア上で動作するソフトウェアを守る技術全般、例えば各種ハードウェアの耐タンパー化技術やハードウェアの偽造・改ざん防止技術、ハードウェア難読化技術、悪意のあるハードウェア(ハードウェ
アトロイ)の検出技術などが含まれる。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が作成・公開する情報セキュリティ研究開発戦略(改訂版2014年7月)においても、高度なセキュリティ機能の搭載したデバイスおよび半導体を含む製品全体の偽造防止技術等に資する高度なセキュリティデバイス技術が重要分野として位置づけられている。さらに、上記の研究開発は、他の情報セキュリティ技術と同様に常に先端的な攻撃技術と表裏一体の関係にあり、現実的な攻撃に先回りした攻撃技術の発見・探求も重要な研究開発課題となる。
以上のようなデバイス・ハードウェアセキュリティ技術の重要性は現在広く認知されつつあるが、その技術分野は多岐にわたっており、対策や安全性評価手法の標準化が進む分野から研究開発段階の萌芽的な分野まで、その技術的進度は様々である。それらを体系的に調査・整理するとともに、ハードウェアセキュリティが有望とされる応用分野の現状を精査し,将来を展望することは、今後の我が国の電子材料デバイスの研究開発の方向付けに資する。
調査項目
デバイス・ハードウェアセキュリティ技術の研究開発動向および今後同技術の重要性が高まると予想される応用分野を調査する。また、ハードウェアセキュリティの標準化動向や関連技術についても調査していく。主な調査候補項目は以下の通りである。
- 1) セキュリティハードウェア技術
- ・次世代暗号技術
- ・次世代セキュリティシステム技術
- 2) ハードウェアの偽造防止・認証技術
- ・認証プロトコル
- ・物理的複製困難ハードウェア
- ・ハードウェア難読化
- 3) ハードウェアの耐タンパー化技術
- ・物理攻撃とその対策
- ・レイヤー縦断型攻撃とその対策
- ・実デバイスへの攻撃事例
- 4) ハードウェアトロイとその検知技術
- 5)ハードウェアセキュリティの計測・評価技術
- ・電気計測
- ・ソフトウェア無線
- ・EMC
- ・リバースエンジニアリング
- 6) デバイスセキュリティ技術
- 7) ハードウェアセキュリティの応用分野
- ・IoTシステム・人工知能システム
- ・スマートシティ(各種インフラ)
- ・移動体システム(自動車、航空機など)
- ・医療・ヘルスケア
- ・流通
- ・防犯
- ・フィンテック
- ・公共サービス
- 8)ハードウェアセキュリティの標準化動向
委員会参加MEMBER
- ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)
- 日本電気(株)
- 富士通(株)
- 三菱電機(株)
- (株)村田製作所