スマートセンシングと
その社会実装技術分科会
背景と調査の重要性
工業・農業・医療・防災などの分野では、センサデバイス・IoT技術により取得した環境・生体情報をエッジ端末やサイバー空間で処理・分析して、遠隔診断操作により見守り・診断・監視・操作・管理を効率的に行う事が必要とされている。この方法はSociety 5.0実現の有力な手段としてとして期待されており、遠隔操作の対象は産業機器のみならず、スマート家電・次世代ロボットやドローンなども含まれ、新しい生産手法や生活スタイルの確立に不可欠な技術である。また、SDGs(Sustainable Development Goals)などで掲げられている様々な社会問題解決や気象変動・資源の枯渇に向けて、消費活動の効率化と省エネ・安全を促進する新しい社会の実現が期待されている。
材料技術と微細加工ならびに高性能集積回路の融合技術により、様々なスマートセンサが研究・製品化されており、センサはマイコンとLPWA (Low Power Wide Area) IoT無線の融合により、インターネット上のクラウドシステムにつながり可視化、統計、時系列解析、機会学習技術を行い、得られたセンサデータの解析によって予測や判定・遠隔操作を行う統合システムへ進化している。産業界では実空間(フィジカル空間)に埋め込まれた様々なセンサとセンサネットワークから送信される大量のビッグデータの解析により、生産性の向上や災害リスク低減などの課題解決に役立てている。
IT機器、ロボット・車などへの情報入力装置として多数のセンサデバイスが搭載され、製造メーカとして欧米・アジア圏の企業の台頭が顕著な一方で日本企業の停滞感が目立っている。一方、地政学リスクに伴う半導体製造拠点として日本が再注目され、さらにパワーエレクトロニクス、光電子融合技術など日本の強みを再構築する動きも出ている。今後、センサデバイス・IoT・パワーエレクトロニクス、光電子融合技術を融合して医療・ヘルスケア、農業・環境、インフラ(橋梁、道路、トンネル等)など信頼性が重要な分野に展開していくことが日本企業に期待されている。この実現には、信頼性のあるセンサの取得データを蓄積して機械学習技術を取り込んだセンサ・フュージョン的な解析により価値のあるサービスを構築する事が重要である。開発の基準をより明確にして、各種センサを用途ごとに適切に使い分け、様々な分野の知見を融合してそれぞれのターゲットに会わせた社会実装システムの設計と製作・用途開拓などを進める事が必要とされている。そのために、本技術分科会ではこのようスマートセンシングとその社会実装実現に向けたデバイス技術、集積化技術、端末・プラットフォームとの連携技術の調査を行っていく。本調査では、以下の事項について幅広く調査し議論する。
調査項目
- (a) スマートセンシングを実現するアルゴリズム・ビジネスモデルの調査
- (b) センサ・遠隔操作デバイスの機能進化の調査
- (c) IoTデバイスの社会実装と産業応用の調査
- (d) センシング技術と遠隔操作機器の連携技術の調査
- (e) 新しい原理・技術のセンサ・アクチュエータデバイスの調査